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【番外編】おすすめ心理学図書紹介

先日,心理学のおすすめ本を紹介する機会がありました。とっさの出来事であまり上手に紹介できませんでした。ですので,読書記録番外編として,これまで私が読んだ本の中から心理学のおすすめ本を3冊ほど紹介したいと思います。

なお,本マガジンの紹介は以下。

おすすめ1『心を名づけること』(カート・ダンジガー)

IQテストの「知能」とは何か? それは「理性」や「知性」とは違うのだろうか。心理学的言語の歴史をさかのぼり、その社会的・文化的な意味を明らかにする画期的な試み。心の科学のありようを徹底的に間い直す、理論心理学における古典的名著、待望の邦訳!(from 勁草書房)
本書では、心理学的なカテゴリーがどのように成立してきたのかを歴史的な視点から検討することによって、心理学の根本を問い直している。心理学・科学哲学・認知科学・精神医学など、心の科学に関心をもつすべての人に示唆を与える、理論心理学の新しい潮流を示す。(from 勁草書房)

上の内容説明からも明らかなように,本書は理論心理学の名著であり,「心」とは何なのかを問い直した画期的な本です。心理学で当たり前に使われている心理学的言語,あるいは心を表す概念(たとえば,パーソナリティなど)が,実は社会文化的な構成物なのだということを明らかにしていきます。

私が下手に説明するよりも,書評等を読んでいただいた方が良いかなと思いますので,2つほど紹介しておきます。

心理学者である渡邊芳之先生の書評です。心理学の書物としての本書の位置づけについて説明しています。

続いて,編集工学者である松岡正剛先生の書評です。直接的な本書の書評と言うよりも,本書を読んで考えたことをまとめたもの,と言えるかもしれません。

松岡正剛の千夜千冊

おすすめ2『21世紀を生きる社会心理学』(伊藤哲司)

21世紀を生きる私たちにとって必要な社会心理学について、いくつかのトピックスを取り上げながら社会心理学の視座でそれを捉えつつ、そこで常識とされている見方をずらし、別の見方を提示していく。(from 北樹出版)

私はある時期,社会心理学が嫌になっていました。「”社会”と名を冠しているのに,なぜこんなに視野が狭いのだろう(当時はそう見えていた)」と悲しい気持ちになっていました。そこで,社会学を参考にしながら,いわゆる社会心理学的方法(実験とか質問紙調査とか)に収まらない人間探求の方法を考えていたのですが,その時に出会ったのが本書です。

本書は,”社会”心理学ではなく,”社会心理”学という視点から物事を考えていくのだ,と宣言します。”社会心理”とは,「個人が社会をつくり,社会が私たちの立ち振る舞いを決めてくる,この相互作用全体」です。つまり,個人と社会を分けて考えず,個人と社会(ここでは便宜的にこう表現します)の双方を視野に入れて検討するのが社会心理学だと考えます。

そのような視点からだと物事をどのように捉えられるのか,そのような視点を持ったとき人間と社会をどのように探求できるのかを本書は説明していきます。

いわゆる社会心理学でもなく,社会学でもなく,新しい社会心理学の在り方を考えさせてもらえる良書であると思います。

著者が一般教養の教科書として使用するために元々は作成されているので,平易で読みやすい点もおすすめポイントです。

おすすめ3『デザインド・リアリティ』(有元典史・岡部大介)

(帯文章より)
[集合的達成=みんなだとできること]
「教え・学び・実践をデザインする全ての人への文化心理学」佐伯胖(青山学院大学名誉教授・東京大学名誉教授)
「そう確かに、有元さん岡部さんは、踊っていた!」近藤良平(舞踏家・振付家・コンドルズ主宰・横浜国立大学人間科学部非常勤講師)
(内容紹介)
私たちの生きる現実の世界はどのようにつくられ、そしてつくられつつあるのか。文化的につくられる世界を身近な切り口から柔軟に鮮やかに論じる。文化心理学の立場から世界とそのつながりを読み解いた好著。
(from 北樹出版)

何かと話題になっているセンター試験に登場した本書。文章自体は平易ですが,その意味するところを読み解くことは難しく,読み応えのある良書です。

意味するところを読み解くのが難しいとは,何を言っているかがわからないということではありません。何を言っているかはわかるのですが,「現実はデザインされている」という本書の主張を読むにつれ,はたして私は本当に本書(現実)を読み解けているのか?(自分なりにデザインしているだけではないか?)と考えさせられてしまうからです。

しかし,それとて,本書の主張の正しさを証明しているわけで,本書を読み解くとは,いつどこで誰と読むか,その時々によって刻々と変わるものだから,それを踏まえて本書を位置づけ直すこと,なのかもしれません。

手元に置いて,定期的に読むと,味わい深いものになる本かなと思います。

ちなみに書評もありました。

おわりに

おすすめ本を考えていて改めて自覚しましたが,心理学系の本に対する視線が厳しいなと思いました。といっても,最近は社会学系か思想系の本を読むことが多いので,最新の心理学の本を読めば新たな発見があるのかもしれません。

とりあえず心理学系の本は買っているのですが,手元に溜まっていくばかりなので,今年度は定期的に昇華していきたいと思っています。

以上がとりあえず3冊セレクトするならと考えて選出した本です。ご参考になりましたら幸いです。

PS. おすすめ本を考えていて気づきました。3冊中2冊が北樹出版さん。北樹ファンなのかもしれません。

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仲嶺真
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