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栄冠

感動的なシーンで泣く、ということは、誰しもあるのだと思う。それも、歳を重ねるごとに、涙腺がゆるくなるというのは、私と同年代の人たちには、身に覚えのあることなのだと思うのである。

私は毎週、土曜日の朝、決まって、ほぼリアルタイムで見るテレビ番組のコーナーがある。

それは、毎日放送系列の「サトデープラス」という番組の中の、「増田明美のスポーツ映像ココ見てランキング」のコーナーである。

ここで紹介される映像で、私は、土曜日の朝、涙腺を緩めてしまい、家内に笑われてしまうのである。

そしてときには、マッサージをしながら、泣いていて、家内にからかわれる。

そんなに、マッサージするのが、幸せ?


心の中の、リトルkojuroが、不満げに呟く。

罰ゲームが悲しいだけだよ.....。


私は、ときに、帰宅時の電車の中で、その状態に陥ってしまうことがある。


最近の感涙といえば、なんと言っても、松山英樹選手の、悲願のマスターズ優勝であろう。

これは、生では見られなかった。早朝からテレビは、やっていて。出社していた私は、今日は更に人が少ないなと思っていたら、よくよく考えたら、この瞬間を見ていた人が多かったのではないかと思い至った。

東北福祉大学で震災を経験し、大学2年生でアマチュア最高順位でデビューし、それから10年後に、85年の歴史の中で初めて、日本人として名を残した。

4年前の全米オープンの最終日に、手中にしかけた優勝を逃した。終了後のインタビューで悔し泣きした姿を、私は、見ていた。それからかなり苦しんでいた時期があっただけに、私のような見るだけの者にも、感じるものがあった。

ちょっと涙にうるませた目で、電車の中で見ていた。恥ずかしさに、なんとか誤魔化した。


翌日も、帰宅の電車の中で、YouTubeの画像を見ていた。

いくつも、感動のシーンを見て、涙に目を潤ませ、我慢して誤魔化しを繰り返していたが、これを見て、もう、どうにも、涙が止まらなくなった。

やがて嗚咽が、止まらなくなり、タオルで目と口を覆うことになった。


心動かされるというのは、こういうことなんだろうと、改めて思った。


日常が奪われて久しい。

もう、かつての日常は、戻ってこないのだという人もいる。

だが、信じたいと思う。

いつの日か、かつての、日常が。熱狂が。雄叫びが、感動が、また、戻る日を。


そう、思いながら、私は、真っ赤な目で、ゆっくりと、電車を降りた。


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