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プロジェクター

年末、クリスマス近い日のことだった。次女が、荷物が届くのを、心待ちにしていて。確かめに玄関を開けるなり、歓声を上げた。

最初は、実は、怒った声だった。

最近は、ネット購入の宅配サービスの中でも、Amazonは、置き配を、私は、選定している。

置き配とは、読んで字の如く、玄関先に置いて行くのである。ベルを鳴らすこともなく、宅配ボックスの通知音に悩まされることもなく、簡単と言えば、簡単なのである。

次女がなぜ怒っていたかと言えば、箱に書いてあるメモが気に入らないというのである。

確かに、ブすと、書いてある

誰が、ブスなんだよ!

次女は、プンプンしている。


心の中の、リトルkojuroが、笑いながら、つぶやいた。

配達を効率的に行うためのメモ書きだろう。別に気にする必要は無い。

悪口なんか、誰も書かないよ。


箱をすぐに開封し。次女は、今度こそ、歓声を上げた。


これ、誕プレでもらったんだよ。


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

そう言えば、誕生日のプレゼントは、ここ何年も、あげていないね。


小さな、プロジェクターだった。

これで、30,000円。クラブの同期たち4人が買ってくれたらしい


開封すると、こんな感じだ。

高さ15センチくらいで、コンパクトだ
底には、三脚の取り付け金具がついている


次女は、部屋に飛び込んで、どうも、設定をしているらしかった。

ところが。ほどなく、部屋から出てきて。私に、こう、言った。


あのさあ、今日は、エージェント・コジは、営業中?


心の中の、リトルkojuroが、あわてたように、つぶやいた。

出た、ミッション、発動!!



私の目の前には、いつもの、マイクロテープ(注1)が置かれている。

お疲れ様。コジくん。

今回のミッションは、第二王女日のプロジェクターを設定することだ。第二王女は、今から、クラブの同期のみんなとクリマスパーティーに出かける。それに、この、プロジェクターを持って行きたいというご希望だ。きちんと設定を完了し、正常に動作をするようにして欲しい。

分かっているとは思うが、設定が面倒だと途中で挫折したりというような、エージェントにあるまじき行為だけは、決してしないように。

例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。


プシュ〜。

マイクロテープは、消滅した。


何が大変だと言って、最近のメードイン・チャイナは、取説が本当に簡単すぎる。しかも、英語だ。

14億の民の国は、1.2億の民のような気遣いは、していられないようである。

四苦八苦して。特に、AmazonプライムのIDとPWのログインと認証、2段階認証に、とてもとても骨が折れた。

同時に、私は、感心も、した。

どんな小さな機器にも、OSとアプリケーションが入っていて。ネットワークに繋がる。まさに、IoT(注2)の世界である。


次女は、歓喜の声を上げた。

さすが、エージェント・コジ!!

設定という名の、クリスマスプレゼント、ありがとう!!!


次女は、じゃあねという言葉を置いて、瞬時に出かける準備をして、玄関から飛び出していった。

もちろん、プロジェクターを抱えて。


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

疾風怒濤しっぷうどとうとは、あの子のことだな。


隣を見ると、家内が、足を指差して、にこりと笑っていた。

クリスマスイブの夜は、明るく平和に暮れていった。


マッサージをすると、家内は上機嫌になる。

家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。


だから。


これで、いいのだ。



(注1)私は、我が家で便利屋、いやいや、エージェントとしての役目を負っている。エージェント・コジと称される所以である。ミッションが発動されると、目前にマイクロテープが突如現れ、ミッションが伝えられる。映画のミッション・インポッシブル(昔のスパイ大作戦)の世界と、007の世界が混在しているのだが、その世界観は、女王陛下(家内)と王子と2人の王女が演出してくれている。

(注2)IoTとは、Internt of Thingsの略である。あらゆるモノをインターネットに繋ぐことで。または、インターネットに繋がるモノをも表現する。インターネットに繋がると、その機器がリモートコントロールできたり、インターネット上のいろいろなサービスに直接繋がり、その恩恵を受けることができる。つまり、映画もライブ配信も、スポーツや音楽番組も、この小さなプロジェクターさえ持っていれば、リモコンひとつで無尽蔵に、永遠に見続けることができる。テレビ画面やアンテナや、受信料なんて必要ないのである。


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