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絆
正月には、必ず見るスポーツが、いくつか、ある。その中でも、絶対に見逃さないものが、箱根駅伝である。
元旦に、たまたま、翌日に向けて準備中の、平塚中継所のすぐ側を通った。
ここで、往路は、3区から4区への襷が繋がる。
櫓の上からも、カメラが戦況を追う。元旦も、風が、かなり強かった。
当然、レース中は、一時通行止めになるのだが、このご時世、「沿道での観戦はお控えください」ということに、なっている。
箱根駅伝は、正式名称を「東京箱根間往復大学駅伝競走」という。今年で97回目になる。
駅伝は、どうして、私の心を踊らせるのであろうか。
それは、襷が繋げられていく、最後の最後まで見逃せない、魂のドラマだからである。
バトンを繋ぐ、リレーも、もちろん、心躍る。そして、大好きだ。だが、極限状態を続ける中で凌ぎを削る、トラブルリスクの高い長距離走であるところに、その、奥深さと面白さがあると思うのである。
今年の箱根駅伝にも、ドラマがあった。
ディフェンディングチャンピオンの青山学院、全日本駅伝を制した東海大学、3強の一角、駒沢大学。
結果は、往路は、創価大学が初優勝を飾った。往路で12位に沈んだ青山学院大学は、挽回し、復路優勝で来年に繋げた。だが、総合では、13年ぶりに、名門、駒沢大学が、見事な10区最終区での逆転優勝を飾った。
最後の大逆転の快走を見せた駒沢大学の石川選手は、立派だった。同時に、最後に先頭を譲ってはしまったが、創価大学の小野寺選手も、大きなプレッシャーもかかる苦しい中、走り切ったのは、本当に立派だった。両選手共に3年生なので、また来年の優勝争いが楽しみである。
だが、私が、今回の駅伝で感動を覚えたのは、往路5区を走った、青山学院大学の竹石選手である。
彼は、昨年、走れなかった。もう一度走るために、1年間留年をし、5年目で坂路5区を任された。優勝候補筆頭の青山学院大学は、神林主将の怪我での欠場もあり、往路、振るわなかった。その挽回を背負い、往路最後の勝負所で走ることになった。
ところが、中盤からスピードが上がらない。トラブルだ。足が攣り、走れなくなったのである。
事実、終盤、何度も止まり、しゃがんで、足をストレッチしつつ、顔を苦痛に歪めながら走った。恐らく、普通に考えたら、もう、走れない状況だったのだと思う。
優勝候補筆頭としてのプレッシャー。1年間、この日にかけたことへの思い入れ。どんな重圧が、あっただろう。
10位以内が、来年へ向けての、シード権の絶対条件である。
そして、駅伝は、襷が繋がらなかった時点で、レースは、終わる。
私は、もう、襷は繋がらないのではないかと思った。
だが、彼は、順位を下げつつも、襷を、ギリギリのところで、繋ぎ抜いた。
出走選手だけでなく、控え選手も、主務やマネージャーといったサポートも、指導者も、チーム関係者、OG、OB、家族、サポーター。みんなの思いが、この、襷に宿っている。
その魂を繋いで、走る。
駅伝は、過酷であるがゆえに、深く、濃く、味わい深い。
この、襷が繋ぐ、絆のドラマを見るために、
また来年、私は、98回目の箱根駅伝を、見るだろう。
■追記■
まことに僭越であるが、駅伝の記事なら、こういう記事を読んで欲しいと思った記事がある。既に読まれている方もしらっしゃると思うが、もしも、読まれていない方がいらっしゃれば、お口(お耳?おめめ?)直しに、是非、読んで頂けたらと、思う。箱根駅伝で記事を書くならば、かくあるべし、という記事である。ヘッダーの写真が川中紀行さんの写真、テーマが箱根駅伝、そして、相互フォローの関係(ゼロさんのことは、私は勝手に、娘のように思っている)という、3つの共通点しか無い。これは、とても、心に沁みる記事である。