テレフォンコール
先日の水曜日の夜、家内のスマホに、1本の電話がかかってきた。
長女からだった。
長女は、会社で少しまとまった連休をとり、仕事の悩みを相談しようと、長男のところに泊まりがけで出かけていたのだ。
長女と会話していた家内は、ふんふんと、相槌を打ってはいたが、途中で、声色が変わった。
どうして!
どうして、あの子が、そこにいるの!
どうも、次女が、長男宅に、合流したというのだ。
次女は、普段通りに家を出た。
そしてその時、家内に、今日は、早く帰宅するからと、家を出たのだという。
家内の声が、ちょっと大きくなる。
うん、うん。
で?
え、そうなの?
うん、うん。
で、大丈夫なの?
何度か家内に、スピーカーホンにしてほしいと、ジェスチャーをまじえて伝えたが、家内は、話すのに必死で、私にかまっている場合ではなかったようだ。
話の内容がわからず、じれったい感じのまま、家内と長女の会話が進み、私は蚊帳の外のまま、電話が切られた。
家内が、通話を終わって、大きなため息をついた。
家内は、しばらくして、ようやく、話し始めた。
次女は、どうも、ボーイフレンドと別れを告げたらしい。
ボーイフレンドの下宿で言い合いになり、長女に相談したところ、長男のところに来るように、長女から提案を受けたという。
急な話だが、次女はその提案に乗り、チケットを購入して、新幹線で関西に移動。道すがら、今朝方家内が渡した、お昼のサンドイッチを頬張り、泣きながら長男宅に、夜、着いたという。
次女は、大学で、運動部に入っている。
毎日練習があるから、本来、遊んでいる暇など無いはずなのだが、まだ緊急事態宣言が出ている時期で、自主トレ期間があった。そこの合間で、部にはきちんと休暇願いを出し、3日間の休暇をとって、行動を起こしたのだという。
家内が言った。
次女は、私たちに、悪いと思っているという。
うちにも来たり、ご飯を一緒に食べに行ったりして、いろいろと、世話になったこと。
そして、特に、仲が良かった、コジが、寂しがるのではないかと、心配しているという。
心の中の、リトルkojuroが、ボソッと、つぶやいた。
コジ、心配されているぞ。
失意の娘が、自分のことの前に.....。
私は、ちょっと、言葉が無かった。
確かに、私は、寂しくなるのかもしれない。
もう、あの、ボーイフレンドは、我が家にやってくることは、無いであろうから。
翌日、翌々日と、長女たちから、写真が送られてきた。
長男のところで宿泊しているあいだに、BE KOBEのモニュメントを、すべて、まわってきたらしい。
それぞれの場所がかなり遠くて、かなり苦労をしたのだと、後で、長女に聞いた。
長男は、元気の無い長女、失意の次女の相談相手として、その日は、わざわざ年休をとってつきあったらしい。そして最後の一泊は、長男の奢りで、神戸元町の高級ホテル(注1)に宿泊したのだという。
週末、長女と次女は、関東への帰りは、飛行機で帰ってきた。家内によると、25歳以下は、格安の特別なチケットをとることができるらしい。もったいないから、それで帰宅するようにと指示が出たらしい。
小志朗(注2)で、空港に、迎えに行った。
そして、4人で、まずは、長女の自宅に行き、とってかえして、我が家に戻ってきた。
私は、車内で、あまり喋らなかった。
長女にも。次女にも。
長男に、ありがとう。世話になったなと、LINEを入れた。
我が家を経由して、駐車場に着いて、小志朗を振り返った時、小志朗も、なんだか、寂しそうに見えた。
(注1)我が家では、ビジネスホテル以外の、普通のホテルを、高級ホテルと呼んでいる。
(注1)我が家の車には、小志朗=こじろう、という名前がついている。