正式名
実は、嘘をついていたのだ。あの、名前を。知っていたのに、使わなかった。そして、そのことが、ちょっと、気になりだしていた。
だから今日は、そのものに、敬意を表して、この記事を献上しようと思う。
それとは、正式名を、「ポテトング」という。まかり間違っても、「スナックスティック」では、なかった。
でも、スナッキーという言葉を前面に出したくて、知っていたにもかかわらず、名前を偽った。
私は、ものに、時々、名前をつける。
それは、特に気に入っていたり、毎日使うものに限られてはいるが、名前をつけて、その名前で呼ぶのである。
だが、これに、その正式名以外の名前をつけるのは、本来、筋が通らないのである。
確かに、このポテトングは、家内のものだ。私のものではない。
家内は、ほぼ、私には、このポテトングを使わせてはくれない。
そもそも、どうしてポテトングを購入したかというと、長男が、ポテトチップスが、大好きで、だが、手が汚れるのが嫌いで。いつも、お箸を使って食べていたのだ。
そして、私は、ある日、スーパーで、ポテトングの存在を知った。
そして、即座に3つ購入し、家に持ち帰って、長男と家内に、自慢げに、こう言った。
これからは、快適にポテトチップスが、食べられるぞ。これのお陰で。
そして、ポテトングを、家族の前に、出した。
すると、家内と長男が、口を合わせて、こう、言い放った。
なんと、無駄遣いを。
……。
心の中の、リトルkojuroが、寂しげに呟いた。
チーーーーン……。
長男が独立して、ほどなく、お箸置き場に、違和感があった。
無い。無いのだ。ポテトングが、ひとつ。
そして、長女が独立してほどなく、また、無い。無いのだ。もう、我が家には、最後の1つしか、無い。
長男と長女は、なんと、無駄遣いと言い放ったはずの、ポテトングをそれぞれひとつずつ、自宅に持ち去ったのだ。
そして、今、家内は、ポテトチップスに限らず、お菓子を食べるときに、この、ポテトングを使う。
心の中の、リトルkojuroが、静かに呟いた。
ポテトングの勝ちだな。
親切で購入したものをけなされ、そのうえで、その便利さを享受する受益者が、きちんと、礼を言わずに、それを我が物顔で、自宅に持ち帰り、日常使いをする。
家内に、時々、言うのである。
無駄遣いだって、言ったよね。あの時。
すると家内は、いつも、こう言う。
そんなこと、言ったっけ?
でもさあ、あるものは、積極的に、使わなきゃ。
家内は、正しい。
最初はその価値を見出されていなかったが、静かに長年存在し、便利な機能ゆえに、徐々に頭角を現し、我が家の頑固なスナッキー一族に、その存在価値を認めさせた優れものが、この世に、いる。
その名を、ポテトング、という。