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映画感想 「坡州」(パジュ) 変わりゆく辺境の街・男女の恋愛模様
「坡州」(パジュ)
韓国
2009年
監督:パク・チャノク
出演:イ・ソンギュン、ソ・ウ、シム・イヨン
普通のラブロマンスと思ったら、違和感アリアリ・モハメッド
本作のジャンルは韓流ラブ・ロマンス。
ラブとはいっても、ずいぶんと泥くさい。
主役イ・ソンギュンの持つ雰囲気が、とてつもなく作品に影響を与えている。
鑑賞前の印象と、中身はかなり異なるはず。
坡州という地域がキモらしい
舞台となる坡州は、韓国の北西部に位置する都市。
板門店のある軍事境界線(38度線)を隔てて北朝鮮と接する最前線とのこと。
ソウルから車で1時間程度の距離で、思ったより田舎というわけでもない。
地域名を映画のタイトルにしているくらいだから、このエリアの持つ特殊性や雰囲気がとても重要なはず。
作中では、閑散とした街並みながら、ナイトクラブが複数存在。
将来的な再開発を匂わせ、立ち退きに反対する団地も描写される。
姉の夫を愛してはいけませんか?
配給側のキャチコピーは、僕にとってミスリード。
勝手に想像していた作品のイメージは、クライマックスでその違いがはっきり認識できた。
本質が分かった時点で、なんでやねん!!とツッコミ入れたのは僕だけではないはずだ。
一種のどんでん返しなのだが、そんな素振りがあったか?
僕が見落としたのか?
それとも、僕が恋愛に鈍感だから?
とにもかくにも、最終的に主人公に対するある疑惑が急浮上する。
それは、主人公はダメ男かもしれないということだ。
辺境の街で営まれる人間模様
ジュンシク(イ・ソンギュン)は、坡州で牧師をしている先輩を訪ねる。
教会の仕事を手伝うことで、ジュンシクは坡州に定住することに。
ジュンシクには、ソウルに戻れない理由があった。
ジュンシクは教師としての職を得て、ウンスと出逢う。
ウンスには妹ウンモと二人ぐらし。
ウンモはジュンシクの生徒でもあった。
やがてジュンシクは、ウンスと結婚。
しかし、ジュンシクは夜の営みをせず、次第にウンスは不満を募らせていく。
とある一夜をきっかけに、関係が修復するふたり。
簡素なキッチンカーでカフェ営業を目指すことに。
しかし、ウンスは事故で亡くなってしまう。
ウンスの死で、途方にくれるジュンシク。
事故原因を知った彼は、妹ウンモに真相を語ることはなかった。
ジュンシクはしばらくウンモと暮らしたが、突然の逮捕で拘置所に。
彼が拘留中、ウンモは突然姿を消してしまう。
月日は流れ、ウンモは再びジュンシクの前に姿を現したが……。
ジュンシクについて考える
本作、おそらく様々な視点がある。
僕は、ジュンシクがどういう人間かを考えてみた。
学生活動家として指名手配。
坡州でも、立ち退きに反対する抗議運動に参加。
しかし、そこに堅固な信念があるわけでもない。
女性のへの愛情も、同様のように思える。
一方で先生を務め、他人に対する優しさをもっている。
本作では、これに性的な要素を取り入れた。
これによって、主人公が泥臭い、人間味の濃い性質を帯びることになった。
主役を演じたイ・ソンギュン。
彼の第一印象は、誠実そうなルックスと声にある。
ジュンシクという人間の本質を、巧みにコーティングできたのは彼本来の魅力だろう。
劇中のセリフにもあるが、愚かな主人公をなんとなく応援したい気分にさせる。
クライマックスでその気持ちは激減するものの、ジュンシクの印象が180度転換するまでには至らない。
鑑賞前の予想と、あまりにかけ離れた本質。
時系列の描写に工夫は必要か。
解りづらい点も多く、モヤモヤは必至。
でも、心には残る。