僕の育った街/柳ケ瀬裏通りの記憶
「僕の昭和スケッチ」20枚目
これは、ネオンがぼんやりと点り始めた時間帯の柳ケ瀬裏通りの記憶。ゴミが散らかり、すえた匂いがしていた。この界隈で生まれ育った僕にとって柳ケ瀬の街は日々の生活圏だったが、ある日ふと曲がった事のない角を曲がると、こんな裏通りに迷い込む事もあった。割れたビール瓶が散乱し、タバコの吸い殻が意地汚く地面に散らばっていた。夜の幄(とばり)がおりればネオンが瞬き、皆闇に隠れてしまうのだが…
「光が輝く裏には必ず陰がある…」
日本画を描いていた友人がずっと後になってそんな事を言っていた。これは、飲屋街に限った事ではないが…。
僕はこんな街で育った。けれど、僕はこの街が好きだった。この街が僕のふる里だ。