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『QED 式の密室』の衝撃:陰陽師の謎と現代の密室事件が交錯する

「式神による殺人だと?まさか…そんなことが…」

読者は、この言葉を心の中で繰り返しながら物語の深層へと引き込まれていく。高田崇史氏の『QED 式の密室』は、現代の科学と歴史的な呪術が絡み合うミステリーの名作です。

タイトルからは一見、ただの密室殺人を思い起こさせますが、そこに隠されたもう一つのテーマ「式神(しきがみ)」が物語を一層深みのあるものにしています。

『QED 式の密室』を通じて、読者は現代の殺人事件と、日本の歴史に刻まれた「陰陽師(おんみょうじ)」、そして「安倍晴明(あべのせいめい)」伝説を同時に解き明かすスリリングな体験をすることができる。


密室殺人と式神の謎:過去と現在が交錯するストーリー展開

物語は、陰陽師の末裔である弓削(ゆげ)家の当主、弓削清隆が密室で変死するところから始まりまる。事件は表向き自殺として片付けられましたが、30年の時を経て、孫の弓削和哉が「式神による殺人」との異例の説を唱えます。

ここで登場するのがシリーズの主人公、桑原崇(くわばら たかし)です。彼は和哉の相談を受け、事件解決に向けて動き出します。桑原は単なる探偵ではなく、歴史的な謎と現代の事件を同時に解き明かすという特殊な能力を持つ人物。この能力が、物語の鍵となるのです。

「呪いや怨念なんて、現代には関係ないって思っていたけど、何かが違う…」

桑原の推理は、科学的な分析にとどまらず、歴史的な背景や日本の古代から伝わる陰陽道(おんみょうどう)の知識にも基づいています。陰陽道とは、自然のリズムや陰陽五行説に基づく占術や魔術のことです。

特に「式神」とは、陰陽師が使役する霊的存在で、時に人々を守護し、時に呪いの道具として用いられる存在として描かれてきました。

歴史の影と式神の正体「人でない者」の怨念がもたらす恐怖

高田崇史氏の作品の魅力の一つは、歴史的事実を元にしたフィクションが展開される点です。この物語でも、式神という霊的存在の正体に迫る中で、安倍晴明伝説が深く掘り下げられています。

安倍晴明は、平安時代の実在の陰陽師であり、陰陽道の達人として数々の伝説が残されています。その中でも、式神を使って蛙を殺したという話や、一条戻橋の下に式神を隠していたという逸話は有名です。

しかし、物語の中で語られる式神の正体は、我々の想像を遥かに超えた驚きのものであり、読者はその真相に度肝を抜かれることでしょう。

「あの式神はただの霊ではない…、何かもっと恐ろしい存在だ」

式神の正体を明かすシーンでは、歴史的な背景だけでなく、現代においてもその影響が続いていることが描かれています。特に、歴史の敗者たちが残した「怨念」がテーマとなり、過去の陰陽師たちがどのようにして権力者に仕え、その力を使って自らの地位を守っていたかが浮き彫りになります。

高田崇史氏のこの視点は、歴史が単に勝者によって書かれるものであるという、現代の歴史認識への鋭い批評とも言えるでしょう。

シリーズファンにはたまらない「式神の正体」に注目!

『QED 式の密室』は、ミステリーを超えた作品であり、歴史的背景を知れば知るほど物語の奥深さに感銘を受けるでしょう。このシリーズの大きな魅力は、過去の歴史的事実と現代の事件が交錯し、両者が一体となって物語を進行させる点です。

今回は特に「式神の正体」という衝撃的なテーマが取り上げられていますが、それが歴史の深淵にどう結びついていくのかが読者の興味を強く引きつけます。

さらに、物語中には桑原崇が学生時代に出会った事件が回想され、過去と現在が交錯する中で、彼の成長や人物像が浮き彫りになります。特に棚旗や小松崎といった他の登場人物との掛け合いは、シリーズを通してのキャラクターの深まりを感じさせ、ファンにはたまらない瞬間でしょう。

「式神の正体がこんなにも現代に影響を与えるなんて…、全く予想もしていなかったよ」

『QED 式の密室』を読んでいると、ミステリー以上に、歴史の重みや、時代を超えて続く人々の思いや怨念に触れることができます。それはまるで、歴史の隙間に存在する「見えない力」が現代に影響を与え続けているかのような感覚を読者に与えます。

大河ドラマとのシンクロ―「光る君へ」と重なる時代背景

奇しくも、物語の舞台となる平安時代は、現在放送中のNHK大河ドラマ『光る君へ』の時代背景とも重なっています。これも一種のシンクロニシティ(意味のある偶然の一致)でしょうか。日本の古代史や陰陽道に興味がある人にとって、時代の空気感を感じながら作品を楽しむことができる絶好のタイミングと言えるでしょう。

『QED 式の密室』は、歴史と現代が交差する中で、人々の怨念や呪いがどのように現代に影響を及ぼしているのかを描きます。読者は、現代の密室殺人と式神という歴史的な謎を解き明かす過程で、過去と現在のつながりや、人々の感情の継続性に気づかされるでしょう。

まとめ:歴史とミステリーが織り成す一読の価値ある作品

高田崇史氏の『QED 式の密室』は、密室殺人というミステリーの枠を超え、歴史的事実や日本の古代の呪術が絡み合うスリリングな作品です。安倍晴明伝説や陰陽師の式神にまつわる謎が、現代の事件とどう結びついているのか、そしてその裏に潜む「人でない者たち」の怨念がどのように影響を与えているのか、読者はページをめくる手を止めることができません。

歴史に興味がある人も、ミステリー好きな人も、この作品は一読の価値があります。特に、式神の正体に迫るシーンは衝撃的であり、歴史の教科書では知り得ない日本の闇の部分を垣間見ることができるでしょう。

「歴史とは、勝者の記録であり、敗者の声なき声が、今も私たちを見つめている…」

『QED 式の密室』を楽しんでいただけましたか?

歴史と現代が絶妙に絡み合うミステリーは圧巻でしたね。では、次に『QED 竹取伝説』に挑戦してみませんか?

今度は日本最古の物語「竹取物語」を舞台に、またもや桑原崇が歴史の謎に挑みます。月の伝説と隠された秘密、そして殺人事件がどのように結びつくのか、驚きの展開があなたを待っています!

歴史の闇と謎解きの妙技がさらに深まるこの作品、ぜひお楽しみください。

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