【取材記事】子どもたちに伝えることは「個々の才能を発揮して協力しあい大きな目標を成し遂げることこそがSDGs」チームビルディング×SDGs=「体験型謎解きゲーム」で楽しく学ぶ
お話を伺った方
■浅草から始まった「謎解きチームビルディング」
mySDG編集部:「謎解きチームビルディング」のサービスのきっかけや経緯を教えてください。
山田さん:当社は2015年に東京・浅草に体験型の脱出ゲーム施設を作ってサービスを開始しました。当時、欧米を中心に「脱出ゲーム」をすることで、社員同士が仲良くなり、結束がより強く、より成果を出せるチームになれると話題になっていました。それを日本でも提供したいと考え、日本語と英語のバイリンガルサービスで、かつ、非言語型の謎を多く取り入れ、海外の方も日本の方も一緒に楽しめる脱出ゲーム施設にしました。日本には多くの外資系企業も進出しており、海外の方も多く働いています。国際会議などで多くの海外企業も東京に来ている時期でした。オープン1か月後にはGAFAMをはじめ多くの外資系企業が、「日本でも脱出ゲームでチームビルディングできるところがある。」と、ご利用下さるようになり、日本企業にもだんだん広がっていきました。
■SDGsの本質は地球規模のチームビルディングである点に共感
mySDG編集部:「スクール探偵」のサービスのきっかけや経緯を教えてください。
山田さん: 1年目は外資法人のご利用が中心だった「謎解きチームビルディング」は、次第に口コミで広がり、座間や横須賀の米軍基地の子どもたちが遊びにきてくれるようになり、続いて修学旅行や校外学習で地方の子どもたちが来てくれるようになりました。
そんな中、神奈川の県立高校から「SDGsを学びながら謎解きチームビルディングができないか」というご要望を頂き、コンテンツ開発をすることになりました。何事も原典にあたることが大切ですので「2030アジェンダ」を読んだところ、前文から子どもや人間の成長にとってもとても重要なことが書かれていると感じました。
当社は、1部署20名程度から、数百名から1200名までの大人数まで、様々な規模のチームビルディングを実施しています。参加者数十名の場合は室内の脱出ゲームで、一部屋あたり、5〜6人 × 6部屋のイメージです。大人数の場合は街や大規模会議場を周遊しながら謎解きを楽しむ形式です。学校単位での参加になると一度の参加人数が300人ほどになります。
大人数が一度に参加できる、法人向けの謎解きゲームが当時すでにありました。内容としては、「街に出て、街にあるものを使い、街を歩きながら謎解きをする」という形式のものです。それを子ども向けに「SDGsに楽しく触れることができる謎解きゲーム」にしたものが、「スクール探偵」です。横浜の山下公園を歩きながら謎解きを楽しみSDGsに親しむコンテンツです。
■謎解きチームビルディングを通してチームで課題を解決したときの爽快なスッキリ感を味わっていただき、「もっと勝ちたい!」と挑戦を楽しむ脳を作る。
mySDG編集部:「謎解きゲーム」「スクール探偵」は、大規模な人数が街を歩いて巡るプログラムの開発にあたり、難しい部分はありましたか?
山田さん:我々の提供するプログラムでは、街の暮らしや普段の生活を大切にすること。そして、例えばお地蔵様など、日常生活では当たり前すぎて気づかないような街の風景に溶け込んでいる、魅力的なスポットにあらためて光を当てることを大切にしています。加えて、何百人もの人々が同時に参加するイベントでも、みなさんがストレスなくスムーズに楽しめるように人の流れをデザインすることを大切にしています。
一か所に多くの人が集中してしまうと、そこで行列が出来てしまってなかなか先に進めなくなったり、その街に住む方々の生活の妨げになるようなことが起きてしまうからです。
謎解きスポットの選別やコンテンツの制作には、日本人だけでなく外国人も一緒に行っています。制作チームは日本人と外国人の混成チームで、みんな日本が大好き。彼らの感性で、その街の魅力をより引き出し、町おこしにもつなげていけると思っています。実際、謎解きに参加した多くの方々が、「もう一度この場所を見に行きたい!」とイベント後にスポットを訪れてくださっています。
mySDG編集部:「謎解きゲーム」は英語など、外国語でも参加できるとのことでしたが、日本語を話す人と外国語を話す人と、どのようにして一緒に協力できるように作られているのでしょうか。
山田さん:ゲーム自体が「非言語」中心のものが多く、図を見たりなど、グラフィック中心に謎解きをしていく形式です。謎解きに没頭しているうちに自然とコミュニケーションが盛り上がり、仲良くなることができます。このあたりもSDGs的な要素があるように思います。
mySDG編集部:楽しさで人がつながり、人種も国籍も忘れて協力し合って課題解決することで、チームビルディングできるということなのですね。
山田さん:目標に向かってチームメンバーの様々な才能を結集させることが、成果を出すためには大切で、人と一緒に働くことの醍醐味でもあると思います。ひとりでできることは限られているけれども、仲間がいるからより大きな山も乗り越えることができる。私自身、それを、この会社をやっていても日々実感しています。
mySDG編集部:ゲームの中でどこが一番、チームビルディングを構築するために重要な部分になるのでしょうか。
山田さん:人間は無理に何かやれと言われても、力がなかなか出ないもの。いかに挑戦の中に楽しみを見出していただけるかを重要視してコンテンツを作っています。勉強でも仕事でも、ゲーム性を見出して楽しくやれば、より力も出るし、より心も開く。そうすると視野も広がり、自分の持っている能力を引き出すこともできます。
当社のチームビルディングプログラムを通してチームで課題を解決したときの爽快なスッキリ感を味わっていただくこと。脳は、その快感を覚えて、もっとそれを味わいたい。日常生活に戻ってからも、チームで挑戦を楽しむ良い循環が生まれていくようなプログラムにしています。
■SDGsは壮大な目標。達成するには地球規模の協力が不可欠。それこそが、チームビルディングだと、「スクール探偵」を通して伝える。
mySDG編集部:対象は高校生のみですか?
山田さん:今回は高校からお声かけがありましたので、高校生の参加でしたが、幅広い方に楽しんで頂ける内容としています。
mySDG編集部:「スクール探偵」はSDGsのテーマで謎解きでしたが、参加した高校生はSDGsの感想はどうでしたか?
山田さん:我々が「スクール探偵」を通じて伝えたかったのは、「子どもであっても、思いを持って働きかけることで、その小さな一歩から、世の中に対してきちんと影響を与えることができる」ということです。
「課題意識を持って、一歩を踏み出すことが大事だよ」という、わりと受け入れやすい内容で作ったコンテンツなので「難しい」や「とっつきにくい」という意識は持っていないと思います。
mySDG編集部:ゲームの前にSDGsについて学ぶ時間があるようですが、どんな内容なのでしょうか。
山田さん:SDGsというと17個の目標のうちの「環境」や「教育」などの分かりやすいものに注目が集まりやすいと思います。私は、全体像や基本的な概念を理解することで、17個の目標が分かりやすくなるので、そこからお伝えするようにしています。例えば、17個の目標がありますが、17個って多いですよね。その17個を分かりやすい「SDGsウエディングケーキ」を用いて説明します。我々はSDGsの基本的な概念である前文を重視しています。前文ではSDGsの17個の目標を設定する前提として、人や経済、社会について定義しています。例えば、「人間」についてはこのような内容です。
“人間
我々は、あらゆる形態及び側面において貧困と飢餓に終止符を打ち、すべての人間が尊厳と平等の下に、そして健康な環境の下に、その持てる潜在能力を発揮することができることを確保することを決意する。“
引用:我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ
未来を担う子どもたちにとっては、自らが学んで、行動し、潜在能力を開花させること。その能力を持って、社会に貢献していくこと。それが子どもたちのSDGsの第一歩だと考えます。
だからこそ、学校で先生方から教えていただくこと、経験すること、すべてが大切な経験になるよ。何一つ無駄になることはないよって思っています(笑)
mySDG編集部:ゲーム性を見つけながら勉強ですね(笑)
山田さん:一人ひとり異なる才能を持っています。変化の多いこの時代に、画一的な正解を求める必要などないと思います。それぞれが自分の可能性を見つけ、それを発揮して世界に貢献していくことが大切だと思います。一人ひとりの持つ多様な可能性を見つけるためには、自分の興味のあることを学校生活の中で掘り下げていくこと。関心のあることについて学んでみる。その時に出た疑問を、先生、親、周りの大人、コミュニティなどに質問して、掘り下げて考える。行動する。興味があるということは、才能があるということだから、そこを開花させていってね、という話をまずします。この話もSDGsのゴール目標の話にもつながってくるんです。
mySDG編集部:そうですね。SDGs目標を学ぶことは、「自分ごと」として届くメッセージにかみ砕いて伝えることが大事ですね。すばらしいメッセージです。
山田さん:事前学習のワークでは、まず16個のゴールが出てきます。そこで、こんな風に問いかけます。「あれ?17個だったよね。最後の1個は何だっけ?」と。最後に目標番号17番の「パートナーシップで目標を達成しよう」が出てきます。
色々な目標の16個のゴールがありますが、その16個のゴールを「パートナーシップ」で達成することが大事ですよ、と伝えるんです。
一人ではできないようなことも「パートナーシップ」で、皆で力を合わせるとできるというわけです。
それが、まさにチームビルディングだと思うんです。
私自身、会社を経営していますが、自分のできることは小さいなあと感じます。多様な仲間がいて、皆が才能を発揮してくれてはじめて当社のサービスが成り立っている。協力しあうことで達成できています。SDGsも本当に大きなゴールですものね。
mySDG編集部:まさにチームビルディングになるのですね。SDGsのような世界の大きな目標でも、落とし込むと一人ひとりの行動の話なので、身近な人や隣の友だちと協力し、「パートナーシップ」で、大きな目標を成し遂げたいですね。
■まだまだスタートしたての「スクール探偵」。人を大切にするインバイトジャパンの目標は、多くの人が才能を開花できるプログラム作り。
mySDG編集部:「mySDG」では定量的な成果にも注目しているのですが、成果として体験された人数などを教えて下さい。
山田さん:始めたばかりのプログラムですので、3回の開催でまだ1,000人台。
まだまだ、「スクール探偵」に参加して下さる方を増やすことが大事だと思っています。
mySDG編集部:小学生や中学生にも挑戦してほしいですね。学生向けの「スクール探偵」は始まったばかりですが、企業向けの「謎解きゲーム」も含め、今後の目標や展望を教えてください。
山田さん:「スクール探偵」を実施できるエリアは現在横浜だけですが、今も大阪・福岡などさまざまな地域からご要望を頂いています。今後は各地で開催できるようにしていきたいです。また、オンラインチームビルディングは、今も様々な国・地域をつないで開催しています。例えば、アメリカ西海岸とアジアなどです。そちらにもSDGsの要素を入れてプログラムを作っていきたいです。
SDGsを達成するには、ひとりひとりが自らの才能を開花させ、その能力を発揮していくことが大切です。それを支えるようなプログラムを提供していきたいです。
mySDG編集部:最後に、アピールしたいことがあればお願いします。
山田さん: SDGsの17個の目標はカラフルでキャッチーなので、そちらに注目がいってしまうんですが、前文を読むとSDGsの理解はもっと深まると思います。基本となる「アジェンダ2030」とその前文を一度読んでみてほしい。この「原点に戻る」という態度が、これから様々なことを学ぶ時にも、通ずるものになります。そして、仲間とともに楽しみながらより大きなことを達成していってほしいです。
mySDG編集部:本当ですね。前文を読むと、SDGsの目的がより明確に理解できそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!
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