00.はじめに
~《主な登場人物》~
~《誰かに伝えたい名セリフ》~
~《あなたに観せたい美しいキャメラシーンPART1》~
~《あなたに観せたい美しいキャメラシーンPART2》~
01.安らぎの羽根
冒頭シーン、一枚の白い鳥の羽根がゆらゆらと上空から舞い降りてきます。
ゆっくりとゆっくりと。
どこに落下するか分かりません。
風や空気の抵抗をうけて、右へ左へまた再び上昇したりと自由気まま。
あるがままの偶然に身を預けて、気持ちよさそうにゆらゆらと落下しています。
その美しい羽根の旋回するリズムに合わせて、とてもやさしいピアノが奏でられます。
バックの背景がどんどんと変わってきて、何だろうかと不思議な世界に誘われている気分です。
「こっちにおいでよ。面白いものをみせてあげる。これが人間っていう生き物だよ、ほら。」
とでも言っているようです。
その羽根は一度、通行人の肩に留まりそうになりますが、また風に乗り、車のフロントを撫でるように移動します。
するとその羽根は一人の男の使い古びたナイキのスニーカーに身を寄せるように留まりました。
この男と何かに共鳴するように。
穏やかでどこか心が癒やされるような、森に囲まれたバス停。
人が集まり、別れ、再会する場所。
そこでは喜怒哀楽が自然と生まれる場所。
人生の縮図みたいな所ですね。
男はそのきれいな羽根を拾い上げ、愛用の絵本に挟み込みました。
男が座っているベンチの隣に女性のナースがやってきました。
ナースは雑誌を読み始めます。
フォレストはチョコレートの箱をナースに差し出します。
ナースは首を振りました。
フォレストはナースの靴を指さして言いました。
02.脚装具
そうして、フォレストは目を閉じて、フォレストの幼少時代に遡ります。
フォレストのナレーション:「『これは魔法の靴よ』」
フォレストは生まれつき、背骨が曲がっていて、真っ直ぐに歩くことができませんでした。
そこで医者は脚装具をフォレストの両足に取り付けました。
母親と道路を横断中、フォレストは金属の柵に脚装具がひっかかり、動けなくなりました。
周りの人は珍しげにフォレストに注目します。
母は威嚇するように見物人に注意します。
改めてフォレストに向かって戒めます。
お母さんは宿屋を経営していたので、たくさんの人を見てきて、人間観察に長けていたのですね。
そして、彼女は「愛の人」です。
フォレストの幸運の泉は母の愛ゆえのものです。
03.無償の愛
物語が進んでいくうちに、皆様方はフォレストの母の役割の大切さが分かってくると思います。
この世のお母さんの『無条件の愛』『無償の愛』を体現した母親です。
フォレストの身体が不自由でも、知能も低くても、息子の存在そのものを受け入れるような愛をそそげる人です。
それとは逆に世の中には多くの『条件付きの愛』を与える親がいます。
周りの子と比較して、出来ないことを責める。
本人の意志は尊重せずに、社会規範を厳しく当てはめる。
「これが出来なければ、あなたを好きになりません」と言っているような親です。
子供は親に愛してもらうために、親の理想に近づこうと努力しますが、追いつくことができません。
やがて、理想に追いつけない自分を嫌い、自己否定する大人になっていきます。
周りの人をすべて競争相手と見て、敵とみなしてしまいます。
劣等感のため、いつまでも実らぬ努力をし続け、人は離れていき、孤独になります。
『無条件の愛』は子供に安心感を与え、自信を持たせ、自己を肯定させ、ゆるぎない意志を持たせて、自己実現へと誘う、幸せの連鎖を与えてくれます。
この幼少期の『無条件の愛』は何十億の大金よりその後の人生を幸せにしてくれます。
04.境界知能
校長先生の顔が悪い顔になっていきます。
境界知能ですね。
校長は母と関係を持つことでフォレストの入学を許可しました。
夜にフォレストが家の外で待っている間、校長と母が『行為』をするシーンです。
校長の喘ぎ声に品がないんですね。
アメリカ映画ではこういった『不届き者』によく罰を加えますね。
『行為』あと、汗だくの校長が家から出てきます。
フォレストに向かって言いました。
校長は慌てて退散しました。
すごくシニカルで小気味いいシーンです。
ロバート・ゼメキス監督らしく、弱者にも変な同情はしないで、ユーモアたっぷりに表現します。
そこには弱いものへの愛情があるからこそできる、滑稽な表現なのだと思います。
許せる悪意だと思います。
今からそういうシーンが度々出てきますが、決して馬鹿にしているのではないということを信じていただきたいと思います。
人々を平等に見ているんですね。
黒人に対してもそうです。
たくさんの黒人がフォレストの人生に関わってきます。
私は滑稽さとは、必死に生きているから、時に人は一点に集中しすぎているから、そして弱さがにじみ出ているから、見えてくるものだと思っています。
人って愛らしくて、愛おしい存在ですよね。
フォレストの母はフォレストに本を読んであげています。
05.エルヴィス・プレスリー
宿屋の風景シーンです。
このフォレストのちょっとした誤解、固執、思い入れや疑問形のナレーションが面白いんです。
こういう所でも観客を楽しませてくれるエンタメ精神に感動しますね。
フォレストの母は部屋から聞こえてくるギターの音に恐る恐るドアを開けます。
何と、若き頃のエルヴィス・プレスリーですね。
ここで『ハウンド・ドッグ』〜エルヴィス・プレスリー〜の曲が流れます。
フォレストの脚装具の動きから、エルヴィスのあの腰振りのセクシーな歌い方が生まれたのだという面白いシーンです。
『That’s all right 』という曲名もありますよね。
エルヴィスがテレビに映っていて、その曲を披露していました。
このフォレストのナレーションはバス停に来た人に対しての会話という設定なんですね。
ナースはフォレストの話に少しずつ興味を持ちはじめ、雑誌を読むのを止めます。
06.最愛の人、ジェニー
やがて、フォレストは小学生になり、初めてのバス通学。
バスの運転手は笑顔でフォレストを迎え入れます。
運転手は女性ですが、くわえタバコでいかにもファンキーな人なんですね。
フォレストは席に着こうとしますが、誰も空けてくれません。
女の子は首を振ります。
フォレストは席を譲ってもらえず、バスの中でしばらく立っていました。
フォレストはジェニーの隣に座ります。
脊柱側弯症ですね。
フォレストは母の愛情や励ましをたくさん貰って育ちます。
全然、ひねくれていないんですね。
母の言葉を真っ直ぐ信じています。
誰でも自分の劣っている所に段々と気づいてきますよね。
でも、愛情を注がれた子供は立ち直ることができるんです。
ジェニーはこの作品の大事な主人公の一人です。
ジェニーは母親が早くに死に、実の父親に性的虐待を受けて育ちます。
愛情を求めても返ってこない親。
いつも罵倒され、自分に責任を感じながら生きてきました。
そうして、自分さえも嫌って生きていくようになります。
満たされない自分。自信を持てない自分。自己否定、無価値感、虚無感。
ありとあらゆるマイナスの感情を携えたまま成長してしまいます。
そういう人間は常に愛情飢餓に陥り、あらゆるものに愛情を求め、まるで現実をさまよい歩くように生きることを余儀なくされます。
フォレストとは対照的な人間像です。
07.覚醒
再び子供時代です。
フォレストは同級生たちに石をぶつけられて逃げ出します。
ジェニーの声にエコーの特殊効果がかかります。
エンターテイメントの始まりです。
フォレストは同級生に自転車で追いかけられます。
フォレストの脚装具はトランスフォーマーのように剥がれ落ちて、フォレストは凄まじいスピードを出して走ることができました。
アニメのように砂煙をだして、フォレストはどこまでも走って行きました。
草原を越え、橋を越えてどんどん走ります。
途中で30人ほどの男が鎌で草を刈っているんですね。
よくわからないシーンですが、のどかな田舎で鎌のスイングとフォレストの地面を蹴り出すピッチのリズムがぴったり合っていて、ニンマリしてしまいます。
脚装具の壊れ方がなにげに面白いです。
町中を駆け抜けるフォレストに少しボケたおじいさんが言います。
このシーンが初めてフォレストが走っているのか、それとも好きすぎていつも走っているのか分からなくなってしまいます。
このまったりしたとぼけた雰囲気がのどかでいいんですね。
とても楽しい演出です。
小学校低学年くらいまでは皆走るのが好きでしたよね。
いつしか球技など、頭を使う競技をし始めますが、改めて見て走ることは楽しいですよね。
運動会など、スポーツテストなどで走ることは競争になってしまい残念ですね。
「走ること」が、今までフォレストにはできなかった。
今までの我慢を晴らすかのように、フォレストはたくさん走ります。
心臓の高鳴り、浮遊感、景色がどんどん変わっていく。物語がすぅ〜と自分に入ってくる感覚ですね。
08.ジェニーの家庭環境
ジェニーの父親が酒瓶片手に、トウモロコシ畑の中を追いかけてきます。
ジェニーはいつも父親の残像から、そして自己否定するジェニー自身から追い立てられて心の休まる日はありませんでした。
ジェニーは自分でも気づかずに、フォレストのそばがとても落ち着く『安全場所』だと思ったのでしょう。
『無償の愛』の中で育てられたフォレストにはそういった安らぎを持っているのだと思います。
09.一期『多』会のはじまり
次にハイスクール時代に変わります。
小学生の時と同じくフォレストは同級生たちに石をぶつけられて逃げ出します。
今度は乗り物がグレードアップしていて、フォレストは同級生に自動車で追いかけられます。
再びエンターテイメントの始まりです。
俊足のフォレストでも自動車には勝てません。
フォレストは急角度で横に走り抜けました。
そのまま大学のアメフト練習場に駆け込んで、快速を飛ばします。
フォレストはアメフトチームに入り、在籍中、俊足だけで活躍します。
相手チームはフォレストのスピードについていけず、敵同士でぶつかったり、途中でコケたりする楽しいシーンです。
競技場出口の応援幕には『GO ALABAMA GO』と書かれていたので、
ゴール地点を越えて、競技場外まで走り抜けました。
人生は何が起こるか分かりませんね。
本当に人生はチョコレートの箱のようで、食べてみないと分からない。
時と場所と運とそれに応じた能力が大切なのだと思います。
しかし、この作品はある長けた能力が幸運を掴むことを言いたいのではありません。
やはり、人の『こころ』なんです。
10.アラバマ大学の黒人入学
大学構内に人だかりができていました。
フォレストは比喩を理解できていませんでした。
実際の演説映像の中にフォレストが映り込んでキョロキョロとしています。
何と皮肉がこもったシーンでしょう。
この演説でフォレストはウォレス知事の挨拶時に手をあげる仕草を見つめて、のちにものまねを始めます。
堂々と入学する二人の黒人学生。
その一人が本を落としますが、フォレストはただ一人彼女のために拾ってあげます。
実際の入学映像に特殊撮影でフォレストを写し込ませています。
当時の周りの黒人差別がどのようなものだったかを如実に物語っていますね。
バスを待つ黒人のナースはフォレストに親近感を持ったのか、去る時に声をかけました。
11.女子寮の夢
隣にいた赤ん坊を抱えた白人女性が近寄ってきてフォレストに話しかけます。
ジェニーはボーイフレンドに送ってもらって、車内でいちゃついていました。
それを見たフォレストはジェニーが襲われていると思い、ボーイフレンドに殴りかかります。
ジェニーのようないつも愛情を求めている『愛情飢餓感』がある人は、他人に依存しないと不安でたまらないんですね。
そして、それを利用する人がたくさんいることも事実です。
このボーイフレンドはそういう人であり、そのことにジェニーも薄っすらと気づいているのだろうと思います。
簡単にフォレストを許して、女子寮の部屋に案内しました。
次の会話でとても大事な言葉が話されています。
フォレストの言葉の方が逆説的です。
幸せになるための、自己実現のための近道のように感じますね。
あるがままの自分でいることが幸せを引き寄せてくる。
ジェニーは今の自分を否定しています。
努力して、今の自分を変えて生まれ変わりたい。
そして、人々の愛をすべて受け取りたいと願っています。
劣等感をもつ人は一人残らず、生まれ変わろうと必死にもがき、実らぬ努力をします。
どうして実らないかと言うと、何かを達成したとしても『渇き』は決して潤わないからです。
それほど、『愛情飢餓感』は底しれぬものであり、『無価値感』『自己否定』は治まることは決してありません。
人にはそれぞれの能力があります。
自分の適性に合っていない能力を目指しても、決してたどり着けません。
そのあとに来るのは、人への『嫉妬や恨み』と『自己憐憫』、そして『虚無感』です。
無理に決まってますよね。人はスーパーマンにはなれません。
ジェニーは下着を外し、フォレストに体を触らせました。
フォレストは呼吸を忘れ、苦しくなります。
ジェニーは下着をつけて、子供の頃のようにフォレストの体のぬくもりを感じました。
傷ついたジェニーが癒やされているのが分かるシーンです。
12.ケネディ大統領
相変わらずのアメフトでの大活躍。
応援団の人文字が前回は『GO ALABAMA』から『GO FORREST』に変わっていて面白いです。
加えて『STOP FORREST』の横断幕。
相手選手たちはフォレストの速さにキリキリ舞いです。
『代表チームに入れられ』というセリフはフォレストだから嫌味がないですね。
飲みすぎてしまって、トイレに行きたくなり、もぞもぞしている映像が本物のケネディ大統領といっしょに映っています。
ホワイトハウスのトイレにはマリリン・モンローとケネディ兄弟の写真がありました。
ケネディ大統領にゆかりの深い悲劇の人物たちですね。
13.入隊
卒業式にもらった陸軍案内に応募します。
これも面白い所ですが、ロバート・ゼメキス監督は小学校のバスと同じシチュエーションで陸軍に入隊します。
軍曹の口が悪いのは『愛と青春の旅立ち』のように昔からずっとですね。
フォレストはスクールバスと同じようにほぼ満員のバスで席を探します。
白人に給仕する姿を何世代も見せることで、黒人の奴隷の歴史が分かりますね。
ブラックジョークですね。
一般兵が整列している所に、怖い軍曹が顔を近づけて罵倒する、軍隊ではお馴染みのシーンです。
ライフルの組み立ての訓練です。
バッバはエビのことばかり話します。
すると隣の男からポルノ雑誌を渡されます。
見てみると、ジェニーが掲載されていました。
14.風に吹かれて
彼女はアコースティックギターで上半身を隠し、歌を歌うストリッパーになっていました。
『風に吹かれて』〜ボブ・ディラン/ジョーン・バエズ〜の曲を弾いていました。
この皮肉はとても悲しいものがあります。
『どれだけ多くの道を歩めば、人は人として認められるの?』はジェニーの今の心情を表していて、切なくなりますね。
歌詞とジェニーの現状をシンクロさせているところが、観るものの心に響きます。
ジェニーは脚を触ってきた客と喧嘩になります。
フォレストはステージに上がり、客をジェニーから引き離しました。
フォレストは裸のジェニーを抱えあげ連れ出そうとします。
二人は舞台から出ました。
ジェニーは自死まで追い詰められていました。
どうしようもない『無力感』がジェニーを捕らえて離さないでいます。
ジェニーは知り合いの車を見つけ、乗り込もうとしました。
それを聞いたジェニーは車に乗り込むのを止めました。
ジェニーは何も言わず車に乗り込み去っていきました。
フォレストに度々干渉されながらも、心優しいジェニーはフォレストを許してきました。
それも段々と心の余裕が無くなってきているところが切なくなりますね。
一方のフォレストは、辛抱強くジェニーを見守り続けています。
フォレストから『無償の愛』を感じずにはいられません。
ジェニーにとって、フォレストは心の巣のはずです。
ジェニーは劣等感のため、そして自身の理想像を追い続けているので、今はまだ素直に受け入れることができないんですね。
15.戦場へ
フォレストは出征前に母のもとに帰ります。
母は黙って優しくフォレストを抱きしめました。
綺麗なまだ暖かな夕陽がフォレストを包み込んでいました。
それは母性そのもののようでした。
『フォーチュネイト・サン』〜クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル〜の曲と共に軍用ヘリの音でベトナム時代が始まりました。
ベトナムに赴任してきたフォレストとバッバは小隊長に挨拶に行きます。
士官だと分かり二人は慌てて敬礼します。
バッバの下唇が突き出ている顔を見て言いました。
フォレストの考え方はいつも前向きなんですね。
不安、心配事があれば、一気に心はそれに囚われて、恐怖心で一杯になります。
前述のバッバの家系と同様に、アメリカの今までの戦争で戦死するシーンがコメディタッチで映されています。
途中で『スループ・ジョン・B』~ザ・ビーチボーイズ〜の曲が流れてきます。
あまり話を聞かない上官ですね。それでもフォレストは頼りになると言っているところが面白いですね。
皮肉にも、差し込まれるジェニーの映像はヒッピーになってあてどなく移動しているシーンでした。
16.戦闘
すると、突然、部隊は敵に銃撃されました。
ダン小隊長はフォレストに後退するように体を持ち上げます。
フォレストは親友が心配になり、前線へ戻りました。
フォレストのこの行為を、人は『馬鹿だから』と解釈するかもしれませんが、私は違うと思うのです。
しっかりとした愛情で育てられた人は、他の人より日常の不安や恐れの気持ちが少ないのだと思います。
そういう人はしっかりと現実を直視できます。
そして『愛の人』はその育まれた、いいイメージを『意志』に変えて、『行動』を取ることができるのだと思います。
『行動』までしっかり導いてくれるこのイメージを心理学者ディヴィッド・シーベリーの言葉で『機能的心象』といいます。
自身が守られていると信じて疑わない人は迷いがないのだと思います。
バッバを探している最中に脚が重症で動けないダン小隊長を見つけました。
ダン小隊長は無線で連絡を取り続けていました。
フォレストは横の兵士が死んでいるのを確認しました。
ダン小隊長はフォレストを跳ね飛ばし言いました。
フォレストは無線機とダン小隊長を切り離して、抱えあげて安全な場所まで連れて行きます。
ダン小隊長の先祖の戦死の想像シーンもそうですが、皆、背中から地面に倒れて後頭部を打ちます。
ここにもなにげにリフレイン効果のユーモアが発揮されていますね。
フォレストは信念の人です。
馬鹿だから上官の命令にしたがっていたのではありません。
ちゃんと自分の意志を持っているんですね。
味方のナパーム弾が落ちようとしている所にまたフォレストはバッバを捜しに戻ります。
そこには瀕死のバッバが倒れていました。
フォレストがバッバの腹部を見ると焼けただれていました。
辺りからはベトナム語で喋る敵兵がうろついていました。
味方のナパーム弾攻撃が始まりました。
フォレストはバッバの巨体を抱え上げ、安全な場所に連れていきます。
この一言はフォレストにとって、大切な言葉として胸に刻まれます。
人は苦難が訪れると故郷に思いを寄せるのだなと悟ります。
のちにジェニーにもアラバマに戻るように言いますね。
人にはそれぞれ安寧の地、回復の場所があるのだと思います。
バス停のベンチには中年男性に変わって座っていました。
17.ダンの絶望
ダンは脚を切断し、名誉の戦死もできず、生きる意味を失っていました。
フォレストが差し出したアイスクリームを取り、尿瓶の中に捨てました。
ダンの絶望感とフォレストのアイスクリームがとても対照的ですね。
ユーモアがあるシーンですね。
脚を切断して動けなくなった様子がユーモラスに表現されています。
ダン小隊長は入浴のために介護されて連れて行かれました。
フォレストに郵便が届きます。
ジェニーに送った手紙が宛先人不在ですべて返送されてきました。
リラクゼーションルームで傷を癒やしているフォレスト。
松葉杖の負傷兵士が卓球を教えてくれました。
尿瓶に球を次々と入れてコントロールを磨きました。
次のシーンでは負傷兵士が集まって、フォレストの球さばきを見る慰安会のようでした。
ダン小隊長は窓を向いて不貞腐れていました。
こういった生きる希望を失った人をこのように『雑に』ユーモラスに扱っている所にこの作品の深さが感じられます。
人の悩みが不思議とちっぽけなものに見えてきます。
お笑いもペーソスといった感情を織り交ぜると不思議な効用を見せるものですね。
真夜中、突然ダン小隊長がフォレストの首を掴み、思いをぶつけてきました。
ダン小隊長はこれから自分を見つめて受け入れることをしなければなりません。
今の彼の心はあの脚がなくなった戦場にいるままです。
現在にはまだありません。
フォレストの『今だってダン中尉です』と言った言葉が心の支えになってくれることでしょう。
フォレストが正直に言ったこういった言葉が、本当に真を捉えていて、演出の巧みさに驚かされてしまいます。
フォレストは先の戦場での仲間の救出で『栄誉勲章』を受けることとなりました。
それをダン小隊長に報告しにベッドにいきますが、彼は何も言わずすでに帰国していました。
18.栄誉勲章と反戦運動
『ミセス・ロビンソン』〜サイモン&ガーファンクル〜の曲が流れ、時代を感じさせます。
式には母の姿が誇らしげに映っています。
フォレストは全国生中継のさなか、ズボンを降ろし大統領にお尻の傷跡を見せました。
反戦運動家たちの反戦集会とデモだったのです。
皮肉にも、叙勲式を受けたあと、知らずにバスに乗せられて、フォレストは反戦集会に参加することになります。
こういった何気にトラブルに巻き込まれる所はチャップリン作品のようでもありますね。
フォレストは壇上に呼ばれ、言葉を発するように求められます。
そこはワシントンD.C.リンカーン記念館のリフレクティング・プールで行われた反戦集会でした。
何万人もの大集会でした。
『F』の男は観衆に向かって拳を突き上げます。
観衆は盛り上がり、フォレストのスピーチに注目が集まります。
突如、戦争推進派の警備の男がスピーカーの線を抜いて、スピーチを妨害します。
フォレストのスピーチは肝心なところが聴衆には聞こえませんでした。
これには撮影当時の逸話があるそうです。
19.生還の再会
ここでとても美しいシーンが始まります。
ジェニーとの再会です。
観衆の奥から、フォレストの名を叫ぶ女性が現れ、リフレクティング・プールに入水して歩いてきました。
フォレストは壇上から飛び降り、プールに入水してジェニーと再会を喜びました。
反戦運動のプラカード、当時のヒッピーの衣装を着た長髪でヒゲまみれの人々、そのような人々の真っ只中で、ジェニーと生還の再会をするシーンには涙なしには観れません。
何万人もの集会参加者が二人の再会を拍手して祝います。
圧巻のシーンです。
それはブラックパンサー党の本部でした。
フォレストは夜景を窓から見ていました。
フォレストはウェスリーがジェニーを平手打ちしたのを目撃しました。
怒りが込み上がったフォレストはウェスリーを押し倒して、何度も殴りました。
フォレストはジェニーに弁解をしました。
フォレスト達は本部を追い出されます。
外に出て二人は歩きます。
ジェニーは笑顔で微笑みます。
フォレストといると安心するのでしょうね。
自分の劣等感を刺激されないというのもあるでしょう。
ですが、しばらくフォレストといると自身の劣等感を彼に投影して嫌な気持ちになるのですね。
ジェニーは自分を受け入れることがまだ出来ていませんでした。
何か大きなものにすがりつく生き方。
今は政治思想や思想家に『依存』状態なのですね。
自分が大きく見える幻想の中にいるのだと思います。
『花のサンフランシスコ』〜スコット・マッケンジー〜の曲が流れます。
フォレストにもジェニーは明らかに病んでいるのが分かったのだと思います。
いいえ、ジェニーを愛しているからこそ、故郷に帰って心を癒やして欲しかったのだとおもいます。
ジェニーはまた自身の幻影を追い求めることを選んでしまいます。
自分の価値を探しながらの辛い旅を続けます。
愛情の飢餓のため、大いなるものを求め続けます。
他人に利用される人生がしばらく続きます。
フォレストは受け取った栄誉勲章をジェニーに渡しました。
『虚無感』でいっぱいのジェニーには、フォレストの優しさが心に染みてくるんですね。
ジェニーは帰るべき場所がどこなのか徐々に気づき始めます。
『ターン・ターン・ターン』~ザ・バーズ〜 の曲が流れ、ジェニーは出発しました。
20.ジョン・レノン
TVショーにジョン・レノンといっしょに出演しました。
フォレストはジョンに対して、『何だろうこの人』というような顔をしました。
フォレストのナレーション:「数年後、英国から来たその若者はファンのためにサインをしてて、何の理由もないのに誰かに撃たれた」
ジョンレノンの『イマジン』の歌詞そのままですね。
オマージュですね。
21.ダンの生活
フォレストが収録スタジオから出ると、何とダン小隊長が車椅子で待ち構えていました。
去ろうとするダン小隊長は、スロープに残った雪に車椅子がすべって倒れてしまいます。
ダン小隊長は、名誉のために生きてきた男です。
フォレストが勲章を受けたのを聞いて、悔しくて絡んできたのですね。
そのまま、フォレストはしばらくダン小隊長の世話をします。
想像するに、酒をあおる腕の仕草の事だと思われます
ダン小隊長は苦笑して答えます。
大晦日の夜でした。
二人はバーへ酒を飲みに行きます。
ダン小隊長は大笑いして叫びました。
何気なセリフですが、いい言葉ですね。
人は何度も失敗や過ちを犯しても、何度だってやり直せるんですね。
限界を決めるのは自分自身ですね。
彼女の生活はさらに荒んでいました。
コールガールのような服を着て、男の部屋を出ていくジェニーのシーンが挟まれます。
ダン小隊長は車椅子なので他の人より少し背が低いんですね。
バーのカウンターから頭だけが見えています。
色とりどりの紙くずが呆然と『空虚感』に襲われたダン小隊長の頭の上に掛けられた様が私達に悲愴感を漂わせています。
ダン小隊長のホテルに戻り、4人はそれぞれカップルになりますが、フォレストはレノーラを拒否して、倒してしまいます。
ダンはカーラを突き飛ばしました。
ダンは勢い余って車椅子から出て、無様に倒れてしまいます。
それを見た女たちは嘲笑し、罵声を浴びせて出ていきました。
フォレストは手を貸そうとしますがダンは拒否しました。
この時からフォレストはダンに受け入れられたのだと思います。
22.ピンポン外交
そして、フォレストはまた大統領と会うことになりました。
本作品はアメリカ史の紹介でもあります。
『雨にぬれても』〜B.J.トーマス〜の曲が流れます。
それはあの有名なウォーターゲート事件のあったホテルです。
部屋の机には『ウォーターゲートホテル』と書いてありました。
23.友との約束
フォレストは陸軍の除隊を告げられます。
フォレストは久しぶりに母に会いました。
『キャスト・アウェイ』でも主人公は救出された後にドクター・ペッパーを飲んでいましたね。
監督が好きなんだろうと思います。
持っているお金でフォレストは漁船を買いました。
24.エビ捕り船
フォレストのナレーション:「エビ捕りの方法はバッバから聞いていたけど、捕るのは難しかった」
船のネームプレートには『JENNY』と描かれてありました。
ジェニーの近況のシーンが入ります。
ジェニーはディスコで仲間とマリファナを吸っていました。
肌もかさかさで目には強いアイシャドーがギラついていました。
薬でハイになり、マンションのベランダから飛び降りようとしていました。
ジェニーの『虚無感』は現実逃避に変わり、精神は死の手前まで追い詰められていました。
ベランダの強風にふと寒さを感じたジェニーには包み込んでくれる温もりを必要としていました。
涙を流し震えるジェニーは明るい夜空の月を眺めます。
ジェニーは誰かに助けを求めているようでした。
晴れやかな晴天の下、フォレストが諦めずにエビ漁を続けていると、知った顔が目につきました。
ダン小隊長でした。
フォレストは船から岸辺のダンに向かって手を振ります。
嬉しさのあまり船から海へ飛び込み、船は航行したまま、無人となりました。
未だにフォレストがダン小隊長と呼ぶのは名誉を重んじるダンへの思いやりなのだと思います。
もう皆さんフォレストの『バカ』な行為に騙されてはいけません。
ロバート・ゼメキス監督はすべて意図的ですよね。
船員のいない船が波止場に突っ込んできました。
25.希望の戦場
二人は朝と昼と夜となく、かつての戦場のように航海に出かけました。
『大統領殿』〜ランディ・ニューマン〜の曲が流れてきます。
ダンは敵を捜す隊長のごとく、脚を失った後の人生が嘘のように生き生きしています。
フォレストは網を引き上げますが、エビは中々捕れません。
実直なフォレストはさっそく教会へお祈りに行きます。
コーラスで黒人女性に混じってゴスペルまで歌う派手っぷりです。
ある嵐の日の中、フォレストたちは漁をしていました。
ダンは戦場そのままに嵐に向かって叫んでいました。
まるで自分の運命に逆らうかのように抗うようでした。
男性は大笑いしました。
男性は笑いながら去って行きます。
不思議とフォレストの近くには人が寄ってきます。
お婆さんが一人、ベンチでフォレストの話を聞いていました。
フォレストはお婆さんに『FORTUNE』誌に掲載されている自分とダンの表紙を見せます。
お婆さんは目を点にして驚きました。
また漁船でのエピソードに戻ります。
26.感謝
そう言ってダンはきれいな夕陽を背景に、まるで人魚のように自由に海へ飛び込みました。
脚を失った身体がまるでピチピチした魚のようでした。
ダンが飛び込んだ水しぶきがカメラ一面にまぶしく撒き散らされます。
とても美しい瞬間です。
そしてダンは何か満ち足りたように海中を背泳ぎで泳ぎました。
とても感動的な場面です。
この海で泳ぐというシーンは、「運命に身をまかせる」ということの象徴だと、本作品の制作者は語っています。
フォレストがダンとベトナムで会ってからこれまで、全く変わらなかったダンに対する敬意は、私たちも見習わなければならない、見逃せない態度だと思います。
フォレストのそばにいると皆が癒やされるのは、相手の存在そのものを無条件で認める彼の優しい心があるからだと思います。
ダンはエビ捕り漁で成功したという理由で、フォレストに礼を言ったのではありません。
彼の自信や自尊心を取り戻す手助けをしてくれたからに違いありません。
27.母の遺言
アメリカ史は続きます。
フォレストに母の様態が悪いと連絡が入ります。
フォレストは急いで母のもとに駆けつけます。
2階のベッドに主治医といっしょにいました。
それはフォレストの母の息子への最後のレクチャーでした。
自分の存在意義は自分で決める。
だからこそ、生気をもってエネルギッシュに生きていけるのだと思います。
はかなくして自死を選ぶ人も多くいらっしゃいます。
本人以外にそれを止めさせる権利はないのだと思います。
残されたものはつらいですが。
その代わりに...生きる選択をしてもらいたいがためにこういったヒューマンドラマが生まれるのだと思います。
きっかけや手助けや励ましを差し伸べることしかできない。
それは本人への敬意を示すことであり、運命でもあるのかなと思います。
もし当人の心がひどく侵されていて、落ち込んでいる場合、精神科の薬を服用することで自死したい感情から解き放つことはできるので、精神科医に連れて行ってほしいと思います。
そう言ってお婆さんはハンカチで涙を拭きました。
投資先がベンチャー時代のアップルコンピュータなんですね。
28.やすらぎのForest
フォレストは夜にジェニーの幻影をよく見るようになります。
このシンプルな挨拶のような何気ない自然な優しさをジェニーは求めていたのでしょうか。
ジェニーはフォレストの優しさを取り込むかのように、懐かしい匂いを思い出すかのように抱きしめました。
散歩先にジェニーの生家にたどり着きました。
ジェニーは履いていた靴を昔の生家に投げつけました。
そして取り憑かれたように辺りの石を何個も投げつけました。
倒れた後、ジェニーは泣き崩れました。
ジェニーは不幸の原因が家庭環境にあったとようやく知ったのです。
愛情を与えてもらえなかった家庭。
愛情飢餓感はここで生まれ、大人になってもずっと渇きっぱなしの人生。
人に依存するようになり、利用される人生。
自身の『無価値感』を払拭しようと理想像をつくりあげるも、努力は届かない。
次第に燃え尽き、『虚無感』を覚え、回避行動に移り、現実逃避に病む人生。
もう死ぬことでしか逃げられないようになってしまいました。
唯一ジェニーの中に残っていた温かみ。
それは幼い時にフォレストのそばで安心して寝たこと。
フォレストとの時々の再会と揺るがず、絶え間のない温かな手紙。
ジェニーの心の光でした。
フォレストはジェニーの傍らに優しく腰を下ろしました。
それはバッバ=ガンプ社の帽子の色と同じ、ナイキのスニーカーでした。
ある夜、雑誌を見ているジェニーを見ているフォレスト。
ジェニーが寝るために2階の寝室へ行こうとしている所をフォレストは呼び止めました。
それは以前にフォレストがジェニーに言われた言葉でした。
ジェニーにとって「愛」とは『もらう』ものでした。
子どもの頃からずっと、求めて求めて求め続けてきたものでした。
決してジェニーから『与える』ものではありませんでした。
ジェニーには『与える』愛がなかったのです。
人は自分を好きでないと、人に心から優しくすることはできません。
愛を『与える』ことはできません。
それは愛する唯一の資格です。
ジェニーはまだ自分の人生を受け入れていません。
まだ自分の境遇を呪っています。
人は自分の不幸をも受け入れることで初めて前に進むことができます。
自分を愛するとはそういうことです。
自分に対する『無条件の愛』『無償の愛』
そのようにして初めて自分の中の土壌から芽が出はじめて、『自我』が育ちます。
そこからたくさんの愛を人に『与える』ことができるのではないでしょうか?
ジェニーはフォレストが寝ている寝室にやってきました。
ジェニーは黙ってフォレストの横で添い寝しました。
ジェニーとフォレストは身体を重ね合います。
次の朝、ジェニーは再びフォレストの元からいなくなりました。
ジェニーにあげた栄誉勲章を置いて。
今のジェニーにとってフォレストはあまりにも眩しすぎたのだと思います。
彼女自身の身体の温かさだけしか『与える』ものがなかった。
フォレストを愛しているにもかかわらずです。
フォレストはジェニーがいなくなった寝室をじっと見つめます。
彼は何を思うのでしょうか。
幾日も考え続けます。
29.前に進むために
彼は再び走り出しました。
脚装具が取れてようやく走れるようになった幼少期。
ジェニーに挑まずに走れと言われたべトナムの戦場。
走ることが好きで『バカ』だと言われても走ってきた。
フォレストは走ることで自分を作り上げてきました。
『SHIT HAPPENS』ステッカーは1980年代、流行した車のステッカーでした。
フォレストのナレーション:「Tシャツを商売して全財産をスッた男もいた」「だが僕の似顔絵も描けず、カメラも持ってない」
トラックが水たまりを跳ねて、フォレストは泥水を被ります。
おなじみのスマイルマークの「HAVE A NICE DAY」Tシャツですね。
フォレストは突如走るのを止めて、後続で走る人たちに言いました。
フォレストが逆方向に向かって帰ろうと歩いた時、モーゼが海を2つに分けたように人々は道を開けました。
30.今度は胸を張って
フォレストは大急ぎで走り出しました。
フォレストがジェニーのアパートの部屋のドアを開けると、とても明るいジェニーがいました。
フォレストはお土産にチョコレートを渡しました。
このジェニーの変わりっぷりは見ていてすごいですね。
あの病んでいたジェニー。
元気さとフォレストに会えた嬉しさでいっぱいです。
涙が込み上げてきますね。
ジェニーの家に一人の子どもが現れました。
ジェニーはフォレストを愛情深くじっと見つめます。
フォレストはとても驚いてたじろぎます。
フォレストはとても心配そうにしてジェニーに尋ねました。
とてもジーンとくる親子、家族の場面です。
実は今まで、フォレストが幼少時代からバカにされてきても、悲しむ場面は一度もありません。
いくらお母さんの愛情をたっぷり受けていても、実際は辛かっただろうと思います。
ジェニーが何度も離れていくのも、自分の境界知能のせいにしていたにちがいありません。
人は困難があると、一点に原因を集中させます。
フォレストは境界知能ゆえ、人と分かり会えない寂しさ、孤独感があったのだと思います。
名誉やお金では心の問題は解決しないのですね。
フォレストはそっと息子の隣に座りました。
まるで兄弟のようでした。
二人は隣の部屋のリビングでTVを見ているんですね。
ジェニーがそれをドア越しに見ている映像がとてもキレイなんです。
ジェニーが優しくのぞいている感じが出ていて、とても美しいシーンなんです。
31.結(むすび)
3人で公園に散歩に行きました。
ジェニーはフォレストに病気の事を告白します。
故郷の家で結婚式が始まります。
ジェニーはフォレストのネクタイを整えてあげました。
結婚式にダン小隊長が参列してくれました。
しっかりと2本脚で歩いていました。
結婚式はしめやかに行われました。
優しい陽光に包まれたなごやかな式でした。
32.ジェニーの運命、フォレストの使命
ジェニーは最愛の母のベッドで眠っていました。
フォレストはアフタヌーンティーセットを持ってきます。
ジェニーはそれに気づいて起きます。
フォレストがそういうと、ジェニーは嬉しそうにフォレストの手を握りました。
フォレストがベトナムで見た夜景、漁船で見た夕焼け、ランニングで見た空と湖。
これらはジェニーが恐れた『死』を和らげるためにフォレストは体験したのかもしれません。
今、この時のために。
それも神様の思し召しで運命のような気がしてなりません。
フォレストの母が死ぬ前にフォレストに諭しました。
死は運命であると。
フォレストはジェニーの死を受け入れたからこそ、旅立っていくジェニーに正気を保って慰めることができたのだと思います。
フォレストはジェニーの墓の前でジェニーに語りかけました。
フォレストの帰り際、数羽の鳥がさえずりながら飛んでいきました。
その声にフォレストは思わず、振り向きます。
それは祈りが叶えられた鳥になったジェニーの姿なのかもしれません。
30年前のフォレストとその母のように、フォレストと息子はスクールバスに乗り込もうとしています。
本の中から鳥の羽根が落ちました。
バスが来て、フォレストJr.が初めて乗ろうとしています。
そしてさきほどの羽根がフォレストJr.のバスを見届けるかのように、風に煽られて上昇して行きました。
こうしてフォレストの物語は終わりました。
33.終わりに
フォレストは英語で『Forrest』ですが、『For rest』(休息のために)や『Forest』(森林)をイメージすることができます。
作品中にはたくさんの木々に囲まれていました。
ここからもフォレストが『愛の人』だとなんとなく分かりますね。
皆さんはこのフォレストに訪れた幸運を、映画だから空想だと断言できますでしょうか?
フォレストの母が言うように、それは箱を開けて、あなた自身で食べてみないと分からないチョコレートです。
『偶然が偶然を産む』と締めることもできるでしょう。
しかし、私はあえて『行動が行動を産む』と言いたいんです。
実は置いてあるチョコレートを美味しいと感じることができる方法があります。
まずはあなたがこのチョコレートは美味しいとイメージすることです。
前に言った『機能的心象』です。
そのイメージはあなたの『潜在意識』に直接たどり着きます。
この『潜在意識』こそが我々のパワーの泉です。
『潜在意識』からの欲求が『意欲』『意思』を生み出し、『行動』に移してくれます。
良いことも悪いこともです。
この食べてみるという『行動』こそが運を呼び寄せ、実現させるのです。
『行動』しながらも人は、その度ごとにイメージを変えることが出来ます。
そして最初は思いつきだった『行動』はその都度より良く更新され、『自己実現』へとつながるのだと思います。
フォレストとジェニーの二人の人物像をお分かり頂けたでしょうか。
『無償の愛』で育った人と『条件付きの愛』で育った人。
彼らはそのまま、『自分を愛せる人』と『自分を愛せない人』となります。
『自己肯定』の人と『自己否定』の人です。
『自己否定』の人はどうしたらいいでしょうか。
この人の周りは敵だらけになります。
そして、自分をも信じていません。
自分をしっかりと見つめることから始めないとなりません。
・人に依存しないと生きていけない
・劣等感を持っているため、人が競争相手に見える
・劣等感を持っているため、理想像の自分を追いかけ続ける
・孤独である
・人生の意味を見失っている
・自分は無価値である
年を取っても上記の理由によって『いきづらさ』が存在し続けているはずです。
自分はこういった考えを持ってしまっていたと、認めることです。
そして、そんな自分をこんなに追い込んだ環境を憎み、そして受け入れること。
そうすれば、他者があなたの考えに入ってくることはもう無くなっています。
これからあなたがすべき事が見えてくるはずです。
そこがあなたの『ルネッサンス』です。再興のスタート地点です。
自分で自分を『無償の愛』で包んであげなくてはなりません。
それは「あなたがありのままのあなたを愛する」ということです。
神様はあなたに五感という素晴らしいセンサーをくれました。
五感のおかげであなたはあらゆる恐怖から『用心』することができます。
『観る、聴く、触れる、味わう、匂う』という素晴らしい五感はあなたにいつも新鮮な気持ちよさを与えてくれます。
あなたは世界から『無償の愛』をもらうのです。
そうしていくうちに、あなたの心は満たされていくでしょう。
あなたから奪おうと思っても、あなたの心の中には『無償の愛』が無尽蔵にあります。
そんな朗らかで明るくなったあなたには、人がたくさん集まってくるでしょう。
人は暖かいところが好きなんです。
私は久々に『フォレスト・ガンプ』を見直しました。
私はフォレストの幸運に騙されていました。
「結局は運なのか。面白いユーモアのあるアメリカ史だった」と長年思っていたのです。
しかし、見直してみると全く、鑑定(みて)なかったんです。
私には時間が必要だったんだなと思いました。
もしかしたら、私の中では最高傑作かもしれません。バイブルかもしれません。それを皆さんに伝えたかったんです。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。
あなたの人生がこの作品に『映写』されて、共感されることを願って止みません。
またの作品でお会いできることを楽しみにお待ちしております。
それでは、ご自愛くださいませ。
34.関連作品
《アメリカ史を彩る音楽たち》
フォレスト・ガンプ サウンドトラックより
DISC1
1.『ハウンド・ドッグ』♫
~エルヴィス・プレスリー~
2.『レベル・ラウザー』♫
~デュアン・エディ~
3.『バット・アイ・ドゥ』♫
~クラレンス”フロッグマン”ヘンリー~
4.『ウォーク・ライト・イン』♫
~ルーフトップ・シンガーズ~
5.『ダンス天国』♫
~ウィルソン・ピケット~
6.『風に吹かれて』♫
~ジョーン・バエズ~
7.『フォーチュネイト・サン』♫
~クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル~
8.『アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ』♫
~フォー・トップス~
9.『リスペクト』♫
~アレサ・フランクリン~
10.『雨の日の女』♫
~ボブ・ディラン~
11.『スループ・ジョン・B』♫
~ザ・ビーチボーイズ~
12.『夢のカリフォルニア』♫
~ママス&パパス~
13.『フォー・ホワット』♫
~バッファロー・スプリングフィールド~
14.『世界は愛を求めてる (バカラック&デヴィッド)』♫
~ジャッキー・デシャノン~
15.『ブレイク・オン・スルー』♫
~ドアーズ~
16.『ミセス・ロビンソン』♫
~サイモン&ガーファンクル~
DISC2
1.『ボランティアーズ』♫
~ジェファーソン・エアブレイン~
2.『ゲット・トゥゲザー』♫
~ヤングブラッズ~
3.『花のサンフランシスコ』♫
~スコット・マッケンジー~
4.『ターン・ターン・ターン』♫
~ザ・バーズ~
5.『輝く星座~レット・ザ・サンシャイン』♫
~フィフス・ディメンション~
6.『うわさの男』♫
~ハリー・ニルソン~
7.『喜びの世界』♫
~スリー・ドッグ・ナイト~
8.『ストーンド・ラヴ』♫
~スプリームス~
9.『雨にぬれても』♫
〜B.J.トーマス~
10.『大統領殿』♫
~ランディ・ニューマン~
11.『スウィート・ホーム・アラバマ』♫
~レーナード・スキナード~
12.『イット・キープス・ユー・ラニング』♫
~ドゥービー・ブラザーズ~
13.『イマジネーション』♫
~グラディス・ナイト&ザ・ピップス~
14.『オン・ザ・ロード・アゲイン』♫
~ウィリー・ネルソン~
15.『アゲインスト・ザ・ウィンド』♫
~ボブ・シーガー~
16.『フォレスト・ガンプ組曲』♫
~アラン・シルヴェストリ~
《映画作品》
『キャスト・アウェイ』ロバート・ゼメキス監督
『バック・トゥ・ザ・フューチャー1』ロバート・ゼメキス監督
『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』ロバート・ゼメキス監督
『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』ロバート・ゼメキス監督