気ままに読書録 勝手に特別版「神様のカルテ(夏川草介)」から「臨床の砦(夏川草介)」を考える
「神様のカルテ(夏川草介)」は私のバイブルだ。
初めて読んだのは一度目の就職活動の時。
周りの同級生の9割が内定先が決まっている終盤戦。
私は内定が出るどころか、応募ができる行きたい会社がなくなってしまい、どっちに進んでいいのか完全に迷子。
でも、何か行動しないといけない。何でもいいから前に進まないと。
もはや何に追われているのかもよくわからないままに、ただひたすらに同じところをぐるぐると回っているような、そんな感覚で完全に疲弊していた時。
この本に出会った。
「前へ前へとすすむことだけが正しいことだと吹聴されるような世の中に、いつのまになったのであろう。」
「惑い苦悩した時にこそ、立ち止まらねばならぬ。」
栗原先生が迷った末に導き出したこの結論に、肩の力が抜け、憑き物が取れたようにすっと楽になった。
この時以来、私は「神様のカルテ」シリーズとともに歩いてきたように思う。
最初に入社した会社を辞めて大学院に戻るか迷った時、また読み返した。
大学院に戻った後の2度目の就職活動の時、ちょうど「新章 神様のカルテ」が発売され、普段は文庫本派だけどハードカバーで買って読んだ。
そして、今の研究室に来てカルチャーショックに行き詰まった時、また読み返した。
「神様のカルテ」は医療小説だ。
でも、それよりも、大人になって忘れてしまいそうになる、何か人として大切なものがそこにはあって、読み返す度に心の癒しがある。
そして、何かを選択する上で幹になる、信念をもらえるような気がするのだ。
それはたぶん、この小説の素晴らしさは言うまでもないけれど、作者の夏川さんがおそらく私と離れすぎず、かつ近すぎない年上で、つまり、栗原先生が私の一歩だけ前を歩いてくれているからだろうと思う。
読書を趣味にしていてよかったと思う。
他人や世の中に依存せず、自分が頼ることができるものがあるというのは精神的に心強いものだ。
次の新刊はいつ出るのだろうか。
そう思ったのは、折しも新型コロナウイルス感染拡大で医療現場が大変な時。
この状況を、栗原先生はどう考えて、どうやって乗り越えるのか。
様々な意見の飛び交うこのウイルスとの向き合い方について、栗原先生は何か正解を持っているのだろうか。
そんな続編を読んでみたいと思った。
ただ、夏川さんは信州の内科医。
多忙に追われていることは想像に難くなく、収束するまでしばらく新刊は出ないだろうと思った。
ところが。
「臨床の砦」が出た。
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