『夢中問答』第八話:お祈りとは
問い
これまでのお話を聞いていると名利のお祈りに効果は無いようですのでお祈りをお断りしてはどうですか。
夢窓国師答えて曰く
確かにどの質問も核心をついた真剣なことは良くわかっている。
真剣であるからこそそのような疑問を抱くのであろうが仏教に無関心の者もいるのである。
どれほど無相実相の世界が素晴らしいものであっても言葉では人間は信じないから儀式という行為から感化してゆくのである。
もし無相実相の世界を知らない者が名利のために勧誘すればそれは悪業である。
しかし人間は行為を習慣化することで心も変化することを実感するようになる。
最初は名利を祈っていても何時しか名利を求むる心が無くなって行為だけが儀式として残るのである。
何故なら人間は本来本源自性天真仏と言って妄想を除かず真を求めなければ即仏性とは永嘉大師の言う所である。
その様に仏教に縁のない人々に真理を進めるには目に見える形式から順次教えることは大日経にも書かれている。
参照
『夢中問答』夢窓国師 岩波文庫:絶版
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