梨子ちゃん。色んな世界を見て豊かな子になってね

「両親に名前の由来を聞いてきてね。」

小学校5年生だっただろうか。

その日の宿題は漢字ドリルの書写しでもなく、音読でもなく、イレギュラーなものだった。

“わたしの名前の由来”

こんな風に人生を生きてねって想いを込めて
迷って、迷って、迷った末選び抜かれた1つであり、最初に与えられた贈り物。

私の名前は　りこ。

山梨県の『梨』に子供の『子』で梨子。

私の名前は何でりこで、何で梨子という
漢字になったんだろう。

言われてみれば、すごく興味があるぞ。

でも、正直宿題になるまで聞こうと
思わなかったなぁ。

わたしはその日、自分の名前が何を意味しているのかを知ることがとっても楽しみになった。

＊＊＊

「ねえ。りこの名前の由来って何なん」

学校が終わって、その夜わたしは
早速宿題に取りかかった。

正直、お坊さんに名前の漢字の画数が縁起いいと言われたからとか、響きが綺麗だからといった答えが返ってくるとばかり思っていた。

しかし、意外にも面白い答えが返ってきたのを覚えている。

「姉ちゃんの名前はスペイン語で【豊かな】っていう意味なんやで。辞書で見つけたときこれやって思ったんや。色んな経験をして、色んな世界を冒険して豊かな子に育ってほしい。それが名前の由来や。」

父は続けて言う

「ちなみに漢字は利益のなる木を
持った子で梨子や！！！！」

(漢字の由来は商売が大好きな父親らしかった)

『名前の由来の宿題』は学校の宿題史上最も
印象に残るものとなった。

だって私はその日から自分の名前が大好きになったのだから。

誰かに梨子ちゃんって呼ばれるのが嬉しい。

先生、宿題を出してくれてありがとう。

＊＊＊

名付けられて早24年。

わたしは新しい景色や人、経験が大好きで、
自然豊かな小さな故郷を飛び出して、気が付けば国境を越えた地まで来てしまった。

もっともっと知らない世界を見てみたい。

わたしの原動力はいつだって好奇心で、名前に込められた想い通り、あるいはそれ以上の
冒険野郎に育っちゃったよ。

わたしはね、これからも色んなものに出会って触れて、感動して豊かな人生を送りたいんだ。

だって、私は梨子だから。

＊＊＊

(Picture: フロリダの海！)

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