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慢性期脳卒中者の腓骨神経に対する機能的電気刺激と短下肢装具を比較した研究(長期評価)

こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。


本日紹介する論文はこちらです↓。

本note記事を作成する上で著者らとの関係はありません。

この論文についてです!
掲載雑誌:Neurorehabilitation and Neural Repair, 2015
Impact Factor:3.982
参考文献数:30本(リンクからpubmedへ)

では目次です!

はじめに

脳卒中は、公衆衛生や医療費に大きな影響を与える。脳卒中者の70%が歩行能力の回復を認めるが、痙縮、筋力低下、バランス能力低下などの障害が残り、歩行機能が制限される(1)。
脳卒中者の約20%が罹患する重大な歩行障害である下垂足は、痙縮片麻痺による影響を受ける(2)。

歩行制限は、脳卒中者の機能的な可動性、コミュニティへの制限、生活の質(QOL)に継続的な影響を及ぼし、多くの人が補助具を使用することで自立歩行を行うことができる。

歩行補助具として、
 AFOは、通常ポリプロピレンで出来た、足関節を正常な位置に保つために装着する短下肢装具である。

先行研究によるエビデンス
AFOは、神経学的歩行障害のある人の
・歩行速度(3)
・歩行の安定性(4,5)
・歩行の対称性(4,6)
・静的バランス(7)
を改善する効果がある。
一方で、AFOには
・足首の可動性を制限する(8)、
・筋活動を低下させる(4,9)
・動的バランスを損なう可能性がある(7,8)。


歩行の遊脚期に腓骨神経への機能的電気刺激(FES)を適用すると、能動的な背屈が得られ、自発的な筋活動を促進することで下垂足を軽減し(10)、歩行の質と対称性を向上させることができる(11,12)。

FESの欠点は、
・皮膚刺激の可能性が高くなること(13,14)、
・電極の設置が困難になること(13,15,16)、
・刺激の不快感(14)である。

神経周囲のFESの有効性を支持する文献もある。(11,12,17) 

AFOとFESの両方を支持するこれまでのエビデンスは、無作為化されていない事前事後介入研究に由来するものであったが、最近発表されたFESとAFOを比較した4つの無作為化比較試験(RCT)により、より質の高いエビデンスが文献に追加された(30,18-20)。

さらに、いくつかの研究では、FESの長期的な効果を調査しており、追跡期間は6〜7ヶ月(30,19,21)から1年(10,15,16,22,17,20,23)で、最も長いものでは10年間の追跡調査が行われている(24)。これらの長期研究のうち、FESとAFOを比較したRCTは3件のみである。

一方で、現在のところ、FESとAFOを1年後までの安全性と有効性の観点から比較したRCTは発表されていない。

本研究の目的

歩行速度と重篤な有害事象(SAE)の発生率において、6ヵ月後のAFOに対するWalkAide(WA;Innovative Neurotronics社)の効果が12ヵ月後も継続しているかどうかを評価することであった。
2つ目の目的として、12ヵ月後の効果指標の変化の大きさを評価し、6ヵ月後に観察された変化と比較すること


対象と方法

研究デザイン:多施設共同ランダム化比較試験
対象者:脳卒中患者384名
WA群:180名
AFO群:204名

使用機器について
WA:下腿部に装着して、傾斜センサーと加速度センサーを利用して足関節の背屈を誘発し、歩行遊脚期に腓骨神経を刺激する時間とタイミングを制御する。
AFO:認定装具士が下垂足を十分に緩和できると判断した場合、個別で処方されたAFOを着用した。新規または交換用の装具を必要とする対象者に提供されたAFOは、装具士の臨床的評価および判断に基づいて提供された。

評価項目
・全ての歩行テストにおいて、対象者は割り当てられた装具または補助具を使用するによう指示した。

主要評価項目
10m歩行テスト

機器による有害事象(SAE)
SAEとは・・被験者の健康状態に重大な変化が生じ,その結果,生命を脅かす疾病,傷害,あるいは身体の構造や機能に恒久的な障害が生じ,入院を必要とするか,既存の入院が延長されるか,あるいは恒久的な障害を防ぐために医学的または外科的な介入が必要となるものと定義。

副次評価項目
・6分間歩行テスト (6MWT) → 歩行耐久性
・FAP (GaitRite Functional Ambulation Profile) → 歩行の質
*GaitRite社の指示に従ったマットを用いて算出
・mEFAP(Modified Emory Functional Ambulation Profile) → 機能的歩行課題の実行能力
*(a)硬い床の上での5m歩行,(b)カーペットの上での5m歩行,(c)アップ&ゴーの時間制限,(d)標準化された障害物コースのナビゲーション,(e)4段の階段の昇降の5つのサブタスクで構成

統計解析
すべてのITT解析は、治療群を固定効果、試験施設をランダム効果とした混合効果回帰モデルを用いて、多重入力されたデータに対して行われました。

結果

対象者の結果


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