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二重課題歩行による脳卒中後の歩行パフォーマンスの改善効果-RCTデザイン

こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。

今回紹介するのは、脳卒中者の二重課題に関する論文です!

脳卒中者の治療においては、基本的に運動麻痺や感覚障害、筋緊張亢進など、機能的な障害に目が向きがちですが、二重課題能力も低下すると言われています!

二重課題は、運動をしながら何かを考える、もしくは別な運動も行いながら歩く、など2つの課題を同時にこなす能力になります。
この機能性が十分に備わっていないと、歩きながら障害物を避けたり、危ない箇所を認識したりなど、ADL場面に関わることになります。


そこで、本日紹介する論文はこちら↓


この論文についてです。
掲載雑誌:Scientific Reports, 2017
Impact Factor:3.998(2019-2020)
参考文献数:29本

IFが高い方だと思います。
また、RCTで研究がされているのも信憑性が高い論文になります。


では早速目次です!

はじめに

認知運動と運動の二重課題は、日常生活において重要な役割を果たす。

例えば、歩きながら話す、携帯電話を使用する、バッグを運ぶ、交通状況を理解するなどがある。

一方で、先行研究により、

2つの課題を同時に行うことで、歩行パフォーマンスに影響を与える可能性があることが示されている(Beurskens R et al. 2012、Li K et al. 2001、Lovden M et al. 2008)。

歩行パフォーマンスに影響を与える二重課題は、健康な対象者(AL-Yahya E et al. 2011、Lu C et al. 2015、Mirelman A et al. 2014)だけでなく、神経障害がある対象者(Chawla H et al. 2014、Bowen A et al. 2001、Baetens et al. 2013、Hyndman D et al. 2006)でも観察される。

脳卒中患者では、認知と運動による二重課題により歩行速度、ケイデンス、歩幅の減少、などが報告されている。

二重課題のパフォーマンスの低下と環境に対する能力低下は、脳卒中患者のコミュニティへの回帰能力を制限する可能性がある。

したがって、コミュニティの制限が見られる慢性期脳卒中患者にとって、二重課題での歩行能力向上は重要な目標の1つとなる。


運動学習の重要な原則

課題のパフォーマンスを向上させるために、
課題固有の運動を頻回に繰り返し行うことで、
特定の概念に対するトレーニングを積むことが重要

(Woollacott A et al. 2007)
二重課題トレーニングは、単一でのトレーニングと比較して、二重課題のパフォーマンスを向上させる効果が高いことが示唆されている(Slisupadol P et al. 2009、Hiyamizu M et al. 2012、Li K et al. 2010)

2つの研究(Subramaniam S et al. 2014、Lee I et al. 2015)により、

バランス課題と認知課題を組み合わせた後に二重課題下でバランス能力と認知運動に有意な改善を認めた。

これまでのほとんどの研究では単一課題(例:歩行)が二重課題へ影響することを強調した↓

認知課題トレーニングを行った8週間のトレッドミル歩行後、
10m歩行と6分間歩行で有意な改善
(An H et al. 2014)

4週間の認知二重課題トレーニング後、
単一認知課題(ストループテスト)と歩行能力(TUG、10m歩行)が改善
(Kim G et al. 2014)


脳卒中患者の二重課題歩行パフォーマンスに対して二重課題歩行トレーニングによる効果を示したのはこれまでの2つの研究だけである。↓

4週間の運動二重課題歩行トレーニング後の運動二重課題歩行中の
歩行速度、ケイデンス、重複歩時間、重複歩距離が改善
した
(Yang Y et al. 2007)

追加の認知課題を伴う12セッションの
歩行トレーニング(認知二重課題歩行)後、
認知二重課題歩行速度が改善

(Plummet P et al. 2014)


一方で、異なる二重課題歩行トレーニング(認知および運動)が二重課題歩行パフォーマンスに与える影響は明らかとされていない。

本研究の目的↓

脳卒中患者に対する認知および運動二重課題歩行トレーニングが二重課題歩行パフォーマンステストに与える影響を評価


対象と方法

対象者:脳卒中患者28名(平均年齢50.2±11.2、発症後41.1±40ヶ月)
対象者属性
選択基準:
1. 脳卒中による片麻痺患者
2. 20〜80歳の方
3. 少なくとも制限がある歩行能力(35 m / min)(Perry J et al. 1995)
4. 補助具なしで10m歩行が自立している方
5. 評価を完了するため、非麻痺側でトレーを保持できる方
6. MMSEで24点を超える方

除外基準:
1. 歩行を妨げる脳卒中以外の併存疾患または障害がある方
2. 運動が禁忌である管理されていない健康状態を有する方
3. 研究を妨げる可能性がある神経学的または整形外科的疾患を有する方

研究プロトコル
研究デザイン:
ランダム化比較試験(RCT)
対象者割り付け(3つのグループに封筒から紙を引いて選択)
1. 従来の理学療法群(CPT)
2. 運動二重課題歩行トレーニング群(MDTT)
3. 認知的二重課題歩行トレーニング群(CDTT)

介入時間:全てのトレーニングで30分/日、3回/週、4週間実施

全ての評価は介入の前日と介入終了翌日に測定された。

評価

介入

1. CPT(従来の理学療法群)
・筋力増強(股関節屈筋・伸筋・外転筋、膝関節伸筋・屈筋、足関節底屈・背屈筋)
・バランス(立位での多方向への重心移動、ボールに対するしゃがみ動作、目を開閉して立つ、目を開閉したタンデム立位)
・歩行トレーニング(前方、後方、S字型)

2. MDTT(運動二重課題)
・1つまたは2つのボールを保持しながら歩行
・両手を使って傘を使いながら歩行
・ガラガラと手を振って歩行
・カスタネットを叩きながら歩行
・バスケットボールをバウンドさせながら歩行
・ネットに入ったバスケットボールを蹴りながら歩行
これらの歩行は前方と後方、S字型のルートで実施。

3. CDTT(認知的二重課題)
・フレーズを言いながら歩行
・数字を1つずつ数えながら歩行(正数え、逆数え)
・単語を繋ぎながら歩行(しりとりみたいな)
・詩を暗唱しながら歩行
・会話をしながら歩行
・文章の暗唱をしながら歩行(終わりから始めへ)
これらの歩行は前方、後方、S字型のルートで実施。

トレーニングの介入中、CDTTおよびMDTTの対象者は、二重課題の歩行中に課題に集中するように求めた。
難易度は徐々に上げていくように設定された(前方歩行→後方→S字など)

データ解析
・クラスカルウォリスの一元配置分散分析
・ウィルコクソンの検定
・統計的な有意差はp < 0.05とした。

結果

28人の参加者をCPT群(10名)、CDTT群(9名)、MDTT(9名)に割り付けられた。
ベースラインに対するグループ間の有意差はなかった。

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4,148字

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