#289 12年前の今日、私は結婚式場にいた。
2023.3.11.
先日、学校で謝恩会があった。スライドショーを見たり懐かしい先生方の言葉を聞いたり。子供たちの6年間の成長が感慨深い。
最後に、卒業対策委員長からの言葉があった。12年前の保護者たちは、生まれたばかりの子を抱え、また、もうすぐ産まれそうなお腹を抱えて震災を経験し、不安の中での子育てだったという話。
そうか、この子達は12年前に生まれたのか。
少し前までは、安全指導や道徳で震災の話が出ると「あの頃保育園で…」などと子供たちが話してくれたものだが、もう今の小学生で当時物心ついていた子はほぼいないということだ。
時が経つのははやい。
2011年3月11日。
私は東京都内の結婚式場にいた。列席していたのではなく、スタッフとして。
そのちょうど3ヶ月前にブライダル会社に就職し、配属先は4月上旬オープンの新しい会場だった。
新店舗の近くのビルに開業準備室が作られていた。日々出来上がっていく会場を横目に、お客さんの案内、必要な備品の発注、アルバイトの面談…それはそれは目まぐるしい日々だった。
3月11日は、もう会場もほぼ出来上がっていて、ちょうど午前中にスタッフ全員でシミュレーションのシミュレーションをしていた。
遅めのお昼を食べ、トイレで歯磨きをしていたとき、とてつもなく大きな揺れ。
「地震だ!大きい!」
事務所から打ち合わせサロンを抜けてお客様がいないか確認しながら外へと走った。出来上がったばかりの会場なのに、打ち合わせサロンの壁と天井の間からパラパラと粉のようなものが落ちてくるのが見えた。きっとちゃちな造りなのだろう。「倒壊するかもしれないな」と、それを見ながら思った。
店舗の前の駐車場にスタッフみんなで集まった。お客様は、衣装合わせに来ていた1組。
ずっと…ぐらりぐらりと眩暈のような揺れを感じる。近くのタワマンはぐねぐねと揺れていた。マンションってこんなに曲がるのか。中にいる人はどうなっているんだろう…などと考えていた。
そして、震源ができるだけ遠くないことを祈った。
近くにあったスポーツ系の保育園では、どうやら卒園式をやっているようだった。フットサル場を使って卒園式をしているからか、地震に気付いていないのかもしれない。私たちが駐車場に避難している間も、「栄光の架橋」が流れ続け、下手くそな男性の歌声が聞こえてくる。アンコールが始まったときには、さすがにスタッフみんなで笑ってしまった。
なんとかお客様を帰し、スタッフは泊まる組と歩いて帰る組に。私は歩いて帰れそうだったので、5時間くらいかけて家を目指した。店舗内最強のお局先輩が同じ方面だったので、めちゃくちゃ怖かった。笑
道には同じように歩くたくさんの人たち。銀座近くを通ると、帰るのを諦めた人たちがたくさん飲み屋で飲んでいた。
家に着いたときには疲れ果てていたけれど、家族もみんな無事だった。
度重なる余震。緊急地震速報の音。テレビで流れる衝撃的な津波の映像。正確な情報が分からない原発。計画停電。もう聞きたくないぽぽぽぽーん。
明日どうなるかなど分からなかったが、私には家もあり、不安を分かち合う家族もいた。
その後、結婚式場はどうなったかというと、会場の大理石が壊れたり壁にヒビが入ったり。一番ひどかったのはチャペルのパイプオルガンのパイプが全部倒れていたことだった。
キャンセルや日程変更の問い合わせももちろんあったのだが、なんとか復旧作業を行い、結局は日付を変えることなく新店舗をオープンさせることができた。そこからは息もできないほどの怒涛の日々となった。
◇◇◇◇◇◇
映画「すずめの戸締り」は、ファンタジーでありながらも、東日本大震災が題材となっている。一番涙が止まらなくなったシーンは、あの日、いってきますと言っていつもと同じように家を出ていく人々の様子が描かれていたところだ。
もしあの日、私が教員だったらどうだっただろう。そう考えると恐ろしい。私は30人もの子供の命を守れるだろうか。
備えておくに越したことはない。
◆我が家では、最後にお風呂に入った人が(基本は母なのだが)浴槽を洗い、水を溜めておいている。翌日はそれを沸かす。
◆家に防災リュックを作ってある…でもあれ、今は3階にあるから、自分の部屋に持ってきておいた方がよさそうだ。
◆ベッドの近くにLEDのランタンを置いている。
絶対必要になるモバイルバッテリーもどこかに置いておきたい。
また、当たり前のことだが、自分がいる時間が長い場所が一番被災する確率の高い場所のはず。
…つまり、今であれば学校。数日だったらなんとかしのげる程度のグッズをロッカーに入れておくとか、それこそ防災リュックを更衣室においておくとかしておくと良さそうである。…という自分はまずできていない。
あの日の教訓を生かす。
そして、震災関連で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
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