🏷【知識を真に「自分のモノ」にする『ラベリング』の技術】

今回のテーマは、【知識を真に「自分のモノ」にする『ラベリング』の技術】です。ラベリングには、❶学習（インプット）を効率化させ、❷知識の定着と応用を加速させる効果があると考えられます。

「仕事/勉強が進まない」「大事な情報を見落としてしまう」「読んだり聞いたりしてもいまいち要点がわからない」「なんであの人はあんなにたくさんのことを要領よく覚えられるんだろう？」

そんな悩みの解決の糸口になるかも知れません。

この記事の着想を得たのは、友人とのモーニング。彼女の一言がきっかけでした。

「言葉っていうのは、海の水をすくうための『コップ』なんだね」

比喩がこれほど刺さったのは、久しぶりのこと。せっかくだから記事にしてみようと思いました。さて、以下では言語の強烈な働きと、『ラベリング』という手法を紹介していきます。上記の友人の言葉を意識しながら読み進めてみてください。

では行ってみましょう。

⭐️ラベリングとは？

ここで言うラベリングとは、一つ一つのモノや概念に「これはこう言うことだよ」という印をつけて行くこと。簡単に言えば、「キーワード」や「タイトル」をつける作業を意味する。レッテルを貼ると言ってもいいかも知れない。例えば、私たちは一言で「食べ物」ということもできるものを「肉」とか「魚」というラベルで区別している。そんな感じ。

さて、このラベリング。どんな意味、機能を持っているのか。

⭐️事例

最初にこちらの記事を元にして、具体例を示したいと思う。

こちらの記事は、「1日3食をやめましょう」という提案記事であるが、『ステルスタイム』という考え方を紹介している。

画像にあるように、『食事』という行為を分解して考えると、「買い出し」「メニュー考案」「調理」「盛り付け・配膳」「後片付け」という【物事の実行の準備にかかる所要時間】がたくさん潜んでいるということである。1日3食を2食にすれば、その分だけこの『ステルスタイム』を節約できますよ！という提案である。

さて、この筆者が【物事の実行の準備にかかる所要時間】を『ステルスタイム』と呼んでいること。これこそがまさにラベリングである。

では、このラベリングで、どんなことが起きているだろうか。

それについて解説する前に、少し前提知識の話をしておきたい。少し難解な話になるが、しっかり理解していただければ、知的生活に大革命が起きると言っても過言ではない内容なので、最後まで耐えてほしい。

⭐️ソシュールの理論

ラベリングの効果について小難しく示したのが言語学者のフェルナンド・ソシュールである。彼はこれを、『言語の分節化機能』と呼んだ。

例えば、次の図。

あなたは「何を見る」だろうか？

ペンだろうか？紙だろうか？机だろうか？それとも･･･

結論を言えば、「見えるもの」は「言語（ラベリング）の豊かさ」に依存している。

3つの場合に分けて考えてみよう。

❶言語（ラベリング）が普通の世界
👉見えるのは『机』『紙』『ペン』が見える。

❷言語（ラベリング）が貧しい世界
👉5つの 『物質』が見える
「言葉（ラベリング）が貧しい」とは、その種類が少ないということである。なかなか想像しづらいだろうが、『机』『紙」という言葉の区別がない世界を想像してみてほしい。貧しいと言っても、「ゼロ」ではない。例えば、この写真にはは、合計5つの『物質』を見るということになる。
原子時代などはそうであろう。または、乳児期などもそうに違いない。人間は、言葉を獲得することで初めてものを「区別」できる。モノの材質、機能、重み、手触り･･･ そうした特徴によって適切に言葉を使い分け（＝ラベルを貼り）、次々と「別物」として認識して行くのが知的発達というものである。

❸言葉（ラベリング）が豊かな世界
👉『ペン』『ノート』『メモ帳』『日記帳』

『机』『紙』『ペン』以上に言葉が豊かな人から見た世界。どういう世界だろうか。ここにあるのは『紙』『ペン』ではない。『ノート』『メモ帳』『日記帳』である。2本の『ペン』はどうしようか。過剰に言葉を豊かに使う人は、左の赤の模様が入ったペンを『赤模様ペン』、右のペンを『白ペン』と呼ぶかもしれない。

❹言葉（ラベリング）が存在しない世界
もうお分かりだろうか。言葉がない人がこれを見ると、『何も見えない』のである。まやかしのように聞こえるかもしれないが、そうなのである。

ソシュールのいう『言語の分節化機能』とは、『言葉』が存在することによって、初めて2つのモノの違いが識別されるという意味だ。言葉がなければ、違いを説明できないのだから、そこに違いはない。裏を返せば、私たちは違いを説明するために言葉を作っているとも言える。

⭐️ラベリングのメカニズムとは？　情報の「海」に「コップ」をくべるということ　

『ステルスタイム』の話に戻ろう。先程の記事の筆者は、『ステルスタイム』という言葉を【創出】することで、時間概念に関して『言葉の貧しい世界』から『一つ豊かな世界』へと転生したと言っていい。

私たちは「時間」という言葉から何を連想するだろうか。

「時間がない」「起床時間」「残業時間」「時間が大事」「時間がない」「時間いっぱいがんんばろう」「時間と空間」「食べる時間」「起きる時間」「楽しい時間」「時間」「時間」「時間」 etc…

図で表すとこんな感じだろうか･･･

これは、脳みそをイメージしている。青色で表しているように、時間のありとあらゆる関連要素が「海」の中に漂っている。

正確には、ラベリングをしていない状態だと、「　」で表されたそれぞれの時間概念は、見えてこない。お互いに溶け合っている。ここに『ステルスタイム』というラベリングをしたことで、【時間は時間でも、料理などの物事の実行の準備にかかるような、普段は気付きづらい潜在的な所要時間】という形で、この「時間概念の海」からすくい上げてやることができるわけである。

情報の海。それはどこを突いても形をかえ、混ざり合い、すくってもこぼれ落ちるやっかいな存在。そこに『ラベリング』というコップをくべることで、一定の『取り扱い可能』な単位にするのである。つまり、概念化である。

⭐️最適化される学習、加速する行動　〜ラベリングの学習応用機能〜

以上が、『ラベリング』の機能の概要である。

ラベリングとは、【適切なキーワードを与えることで、その知識、概念、発想を他の瑣末な部分から区別して取り扱う技術】ということになる。

ただ『机』『ペン』『紙』といった常識的なラベリングはどうでも良い。今回のテーマである【知識を真に『自分のモノ』にするラベリングの技術】という観点からは、自分が発見し、整理した独自の知識、概念、発想に対する『オリジナルラベリング』こそ意味がある。この『ラベリング』という概念自体も筆者が勝手に名付けているだけであるし、これまでのあらゆる記事で、私なりの言葉で知識、概念、発想をラベリングしてきた。

例えば、次のようなモノである。

✅『オフェンスメモ』『ディフェンスメモ』･･･読書中に作成し、内容の位置付けや前後文脈との相互関係を把握するためのメモを『オフェンスメモ』、事後に整理し、知識を「忘れないようにする」ためのメモを『ディフェンスメモ』とよんだ。（こちらの記事）

✅『有力化』テクニック
「挑戦したことがないのに、勝手に諦めている学習性無力感」を覆すために、自分自身にさまざまな問いを投げかけたり、思考を促すテクニックのことを『有力化テクニック』とラベリング。（こちらの記事）

✅分解思考とP-T往復思考
仕事、作業、アイデア出し等の際に、ただただ書き始めるのではなく、出てきたアイデアをより抽象度の高いジャンルでまとめていったり、要素分解していく思考を『分解思考』とラベリング。また、具体性の高いタスクが複数出たとき、一つ抽象度の高いプロジェクトで括り、そこからまた抽象度を下げてタスクを考え、また抽象度を上げてプロジェクトに立ち戻り･･･というアイデアだしの思考を『P-T往復思考』とラベリングした。（こちらの記事）

✅『並列読書』
5冊の課題があるとして、1日1冊という『大きな単位』で読むことを『直列読書』とよんだ。一方で、「それぞれを1/5ずつ×5日」というように『小さな単位、小刻みに切り替えながら』読むことで、『締め切り効果』、『スコトーマ外し』、『学習スケジュールの調整』といったメカニズムを発動させて、学習効果を上げる読み方を『並列読書』とラベリングした。（こちらの記事）

✅ 『箱』『空白の魔力』
表、エクセル、スプレッドシートなどを用いて事前に記入するスペースを設け、自分の思考や行動を強制的に省み、変容させるきっかけとすることができる。この入力先を『箱』と呼び、『箱』があることで、空白を避けたいという心理が働き、そこに入力すること（＝振り返りや意味付け）が習慣化することを『空白の魔力』とラベリングした。（こちらの記事）

これまで本noteで行ってきたラベリングを見てきた。大変ありがたいことに、もしもあなたが今までの記事を一部でも読んでくださっていたなら、こうやって概観してみると、わかってくることがあるだろう。

💡ラベルがつくだけで、その知識を忘れない/意識できる気がする

「記憶の海」からすくわれたこれらのノウハウは、それぞれのラベルというコップに【名前をつけて保存】され、【別管理】される。

⭐️ラベリングをすることは、主体的に生きるということ

大量の情報・記憶（＝海）のままでは、私たちは何かに「意識的」になることができない。ただゆらゆらと水が流れて行くように、毎日は自分の意図と関係なく、流れ去っていく。

仕事も、勉強も、スポーツでさえもそうだ。例えば先人は、【たまたまうまくいっただけ】の「高い打点で打ち込むスイング」のことを『スマッシュ』と名付けた。もしこのラベリングがなかったら、それは海の中にある他のあらゆる液体と同質であり、分離できない存在だ。しかし、もしその特徴を的確に説明するキーワードを与えさえすれば、その言葉がコップとなり、その必要な情報を【自分のもの】として、扱うことができる。

扱うとは、❶切り取り、❷取り込み、❸取り出すということである。

❶コップで切り取る･･･他の現象と区別する。（ストローク、ボレー、サーブ、そしてスマッシュという打ち方の区別）

❷取り込む･･･自分の知識として定着させる（「相手のスマッシュに注意しよう」）

❸取り出す･･･必要な時に、説明したり、実践したりできる。（「いまだ、スマッシュを打つぞ！」

ラベリングがなければ、現象は好き勝手にゆらゆらと流れていくただの液体。
言葉によるラベリングをするから、自分の『意図』や『価値観』が出てくる。そこに『工夫』が生まれる。それが『主体的に生きる』ということにつながってくると思う。

まとめ　『ラベリング』と『ハイライティング』

ここまで読み進めていただき、ありがとうございました。今回は、「海とコップ」という最高の比喩にあまりにも感動を覚えたため、気合を入れて書いてみました。内容を振り返ります。

❶事例･･･『ステルスマネー』
❷『言語の分節化機能』（ソシュール）･･･「言葉がないと、識別できない」
❸言葉は、「情報の海」から一部を切り取り、「別保存」するコップである
❹ラベリングをすることで、情報の『切り取り』『取り込み』『取り出し』ができる
❺ラベリングをすることは、情報を意識的に扱うこと≒主体的に生きること

以上、ラベリングの意味と大切さを力説してきました。次回、もう少し発展させたいと思っています。

というのも、言葉を与えすぎると、「海」とは別の場所に「コップ」ができるわけですが、「コップ」が並びまくるというのもいかがなものかと思うわけです。

大量に陳列された「コップ」から、必要なものを必要な時に取り出すための技術の開発が必要かと思っています。ここ1年間くらい、そういうことを無意識に試行錯誤してきました。

次回、その成果物を『ハイライティング』というテーマで書いていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました‼️ 少しでも読者の方に貢献できたなら、「スキ」をして激励してやってください。これからも頑張ります。