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わたしと霊性|第9話 絵に描いた絶望
「鬱病ですね」
初めて心療内科の門を叩いた時、僕は二十歳になっていました。
思えば、ずっと何かがおかしかった。「悪魔のような心の声」を放置し続けた結果、僕は精神障害の百貨店になってしまいました。
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そして時間の経過と共に状態はどんどん悪化していき、やがて声が出せなくなって、人と会話をすることが難しくなっていきました。
それに加えての記憶障害。新しいことがほとんど記憶出来なくなり、今自分が何をしようとしているのか、さっきまで何を考えていたのか、いつも分からない様な状態です。もう完全に脳が機能していません。
そして一番きつかったのが、人がちょっとでも視界に入って来るだけで、恐怖で過呼吸になり嘔吐してしまうことでした。
この時には「大悪魔の心の声」によって、この世の全ての人が僕を殺そうとしていると洗脳されていたからです。自分の意思とは無関係に、そのような思考回路になってしまっていました。
永遠に続く恐怖と苦しみの時間。耐えられなくなった時は病院で頂いた頓服のお薬を飲むのですが、それは強制的に一日を終わらせる薬でした。薬を飲み込むと、直後に一気に笑いが込み上げて来て、気絶するように一瞬で眠りに落ちてしまいます。そして気が付くと朦朧とした意識で翌日を迎えていて、また恐怖と苦しみの無限ループが始まるのです。
もうそこまでの状態になってしまうと、一歩も動けないし、何も出来ないし、治る見込みなんてとても見出せないし、夢も希望もあったものではありません。
20代前半にして僕の命は風前の灯であり、とても冷静に「あぁ、僕はそろそろ死ぬのだな」と、涙すらも出なくなってしまった心身で覚悟しました。それはまさに絵に描いた絶望でした。
つづく