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コロナ禍を思い出す時に、きっとこの物語を思い出す。 〜窪美澄さんの「夜に星を放つ」を読みました。〜


窪美澄さんの「夜に星を放つ」を読んだ。

5篇の短編が収められていたが、どの物語も僕の心を優しく照らしてくれた。

コロナ禍が小説の背景とされている部分が印象的だった。
今、マスクの着用が強制されなくなり、徐々に以前の日常を取り戻しつつある。
けどこの数年で味わった苦しみ、悲しみ、やるせなさ、どうしようもない無力感。
忘れたいようで忘れたくなくて、きっと心の片隅に閉じ込めたまま、これからも生きていくのだと思う。

この小説に登場する人物たちは、皆どこかに絶望を抱えている。
自分の力じゃどうしようもない辛い現実がそこにあって、押しつぶされそうになる。
そんな時に人の優しさや温かさ、生きてみるのも悪くないなと思える瞬間がふと訪れて、どうにか日々をやり過ごしていく。

コロナなんて、その最たるものだ。
別に誰が悪いわけでもなく、僕たちの生活を制限し、絶望へと押しやられた人もいる。

小説を読むことは救いだ。
それが虚構であろうと、苦しいのは自分だけじゃないかもなと思えるだけで、とりあえず今日を生きてみようと思えたりする。

コロナ禍を思い出す時に、きっと僕はこの本を読んだことを思い出す。

辛かった。しんどかった。
でも、だからこそ感じられた善意もあったし、手を差し伸べてくれた誰かもいた。

きっとこれからも、人生という大きな波に飲み込まれて、立ち上がれなくなりそうになる時も来るだろう。

そんな時は本を読もうと思う。
そして誰かを救う物語のように、僕の一言が心を少しでも軽くできるような、他人が生きる手助けをできるような、そんな人間を目指して生きいけたらいいなと思う。

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