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「銀の夜」〜人生楽しむことを諦めてしまったあなたへ〜

欲しいのは生きる手応え。
あの頃は良かった。あの頃に戻りたい。
そんな情けない思いを抱く自分に嫌気がさす。
そんなあなたに、おすすめの一冊だ。

主人公は3人の30代女性。
それぞれ結婚したり子供がいたり、それなりに生活を営む。だがどこかで物足りなさや満たされなさを感じている。
私の人生、これでいいの?
同じ不安を抱く人が小説の中に存在してくれるだけで、少し救われた気持ちになる。

3人の女性は10代の若かりし頃に、音楽で一時有名になっていた。その頃のことを思い出して、あの頃が人生のピークだったと悲しみを覚える。
美しいはずの記憶が今の人生を否定してしまうようで、辛いだろうなと思う。

生きる手応えとはなんだろう。
与えられた日々、与えられた役割をただ消化していく毎日。流れ作業のようでもある。
自分の力で泳いでいる感覚が欲しい。流されていく人生はなんだかやるせない。

人生とは、努力の届かない次元で既に色々なことが決まっていると思う。人それぞれ考え方があるだろうけど。
決まっているからこそ、好きに生きる。
今この瞬間の自分の感覚や感情だけを頼りに、進みたい方向へと進んでいく。どっちにしろ人生は決まっていて、結局なるべきようになるのだから。開き直って、安心して遊んでいけばいい。

本書の登場人物たちも、ラストに向けそれぞれが好きに生きていこうと決意する。
過去に捉われることなく、あの頃は良かったなんて不毛な思いを抱くことなく。ただ、やりたいことをやる。今の私が、生きたいように生きる。

生きて死ぬ。人生はそれだけ。
その間を、少しでも楽しく、充実感と共に生きていたい。生きてる!って思いながら、いつか終わる日々をただ生きていたい。

私も登場人物たちと同じ30代となり、人生というものを深く考えてしまうようになった。
若い頃は楽だったのだろう。やるべきことが目の前にどんどん流れてきて、何も考えず向き合うことで、日々は自然と充実してしまっていたのだから。

あの頃は良かった。私の人生はもう終わった。今は余韻でしかない。
そんなことは思わない。まだまだ楽しむ。貪欲に。

諦めてしまっている人に、本当にそれでいいの?と問いかけてくれる本だと思う。
普通に生活していると、自分が諦めてしまっていることにさえ、気づかずに流される日々を送っている。なぜなら、周りにいる人たちも皆、同じように諦めながら流されているから。

まだまだ泳ごう。泳ぎたい方法で、泳ぎたい方向へ。
きっと流れ着く先は決まっているのだろう。人生とは、そうゆうものなのだろう。

流されてたどり着くのか。流されつつも泳いでたどり着くのか。
ほんの小さな違いだけど、大切なのは胸に宿る充実感なのだと思う。

やるだけやった。楽しかった。
そう思えるように、思いながら終えていけるように、これからも日々を楽しんでいこうと思う。

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