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「地図と拳」を読みました。

小川哲さんの「地図と拳」を読んだ。

小説を通して戦争という歴史に触れることで、今自分が戦争の渦中にいないという事実がとても奇跡的に感じられる。
そして、現代に生まれたことをありがたくも感じられるようになった。
これが本を読むことの効能だと思う。
全く違う世界や価値観に触れることで、何でもない今が尊く思えるようになったりする。

戦争中はやりたいことなんてやれなかった。
上からの命令で戦地に赴き、お国のためにひたすら命を削り、前に進む。それだけの世界。

比べて、今はどうだろう。
やりたいことをやれるし、好きなものも食べれる。どう生きようが、誰も文句をつけることはできない。

その奇跡を、大切にしていなかったなと反省する。やりたいことをやれる時代なのに、何を下向いてとぼとぼ歩いていたんだろう。
実は自由を手にしていたことに、不自由な世界を舞台とした物語が気づかせてくれた。

逆の見方をする。
現代の自由さ故に苦しむ人は、戦争で自由を奪われていた人に、一抹の羨ましさを感じることもあるかもしれない。
少なくとも、当時の彼らにはやるべきことがあり、目的があった。一心不乱に敵に向かう時、充実感を得ていた人もいるかもしれない。

自由であるが故の苦しみ。
好きに生きなさいと広い広い草原に放り出されたけど、何をしていいかわからない。向かうべき場所が見つからない。

きっとこれはトレードオフだ。
自由に生きられる世界は、自分で選び取らなくてはならない世界だと言い換えられる。
もう誰も、あなたに命令をしてくれる人などいない。

嘆くか、感謝するか。
どちらの側面に目を向けて生きるか。
私は与えられた自由にありがとうと言いながら生きる人生を選びたい。

何かに向かっていたい。充実感を得たい。
生きる意味を感じていたい。
きっとこれは、時代を超えても変わらない、普遍的な人間の本質だ。

夢中になって生きていこう。
没入して生きていよう。
能動的に生きなくては。
自ら取りにいかなくては。

何にでもなれる、素晴らしい世界。
そうでなかった時代が確かに存在する。
今に感謝して、やりたいことをやっていく。
そんな人生を楽しんでいきたい。

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