更年期症状ーめまい
「めまい」とは
めまいとは、身体の平衡(バランス)を保てなくなる状態のことを指します。
大まかに分けると、平衡感覚に異常が生じる部分は耳(末梢性)の場合と脳(中枢性)の場合があり自覚症状としては「回転性」「前失神」「ふらつき感」の3パターンがあります。
「回転性」はグルグル天井が回った、壁が流れるように見える、身体が傾いていく、引っ張られるようだ、と訴える人もいます。
「前失神」は卒倒感ともいい、失神しそう、倒れてしまいそうな感覚のことです。立ちくらみ、目の前が真っ暗になる、血の気が引く、気が遠くなるなどと表現されることが多いです。
「ふらつき感」は宙に浮いた、雲の上を歩くような感覚になります。
足元がふらつく、よろめく、頭がふらふらすると表現する人もいます。
急に歩行が困難になったり、ろれつが回らなくなったりといった症状が現れる場合には、脳血管の病気である可能性があるので、救急搬送が必要になります。
更年期のめまい
更年期における「めまい」を感じる頻度は、調査によって違い、10%という調査結果もあれば34.4%という調査結果もあります。
自律神経失調症状として分類されていることが多いです。
他にもエストロゲンが減少し抗動脈硬化作用がなくなり脳梗塞や椎骨動脈循環不全などの血管障害によるめまいも増加します。
中枢性のめまいを否定しておくことが重要となります。
また、更年期障害を訴えて耳鼻咽喉科を受診した方のめまいは良性発作性頭位めまい症が56.2%、メニエール病が17.8%だったそうです。
うつ病やパニック障害などの時も併発する症状なので、すぐ更年期症状と思わずに他の病気がないか鑑別する必要があります。
私は、めまいの症状のある人に相談されたら一度、受診して本当に他の病気がないか調べて貰うことを勧めています。
今は、こちらで調べると、めまいの専門知識および基本的な診療技術を備えていると一般社団法人日本めまい平衡医学会が認定した医師がわかりますので、参考にしてみてください
最近は、更年期症状のめまいとして次のようなことが明らかになってきました。
更年期以降のめまいが、良性発作性頭位めまい症のことが多くエストロゲンの減少によるカルシウム代謝障害が考えられています。
耳石へのカルシウムの取り込みが障害されることで耳石の形態異常が起きてその変形した耳石が耳石膜より剥がれ落ちて良性発作性頭位めまい症が生じることがわかってきました。
エストロゲン分泌低下
(エストロゲンレセプター、TRPV6の減少)
↓
カルシウム代謝障害
↓
耳石量の減少
耳石の形態異常出現
↓
耳石剥離
↓
BPPV (良性発作性頭位めまい症)
BPPV (良性発作性頭位めまい症)と骨密度減少
エストロゲンが減少するとカルシウム代謝異常が生じます。
(骨量の低下を引き起こす事象でもあります)
1)50歳以上の女性のBPPV症例のうち34%が骨量減少、47%が骨粗鬆症で75%に骨密度の低下を認めた
2)BPPV再発症例に骨量低下と骨粗鬆症の合併を優位に認めた
3)ラット頭蓋への振動刺激実験で、耳石の剝脱は若年ラットより更年期ラットで多い
4)卵巣摘出後のラットで耳石量が減少し、剥脱した耳石の量が増加した
以上のような報告があることから、更年期障害や骨粗鬆症の治療がBPPVの再発予防につながるかもしれないことが示唆されています。
更年期以降の骨粗鬆症の予防の重要性が示されていますね。
ここから言えることは
1)骨粗鬆症を予防することで、耳石の剥脱によっておこるめまいを予防できる可能性が大きいので、骨粗鬆症の予防の指導を徹底する2)逆にめまいの症状を訴える人には、骨密度測定を勧める
3)2)で骨密度の低い方には治療を受けることを勧める、予防をすることを勧める
また、耳鼻咽喉科での必要時治療することも勧めていく必要があるかと思います。
めまいで日常生活ができない、仕事ができないという方もいます。
自律神経失調による症状で片付けてしまわずに、看護職からもきちんとアプローチしていきましょう。
めまいに関する問診のポイント
1)めまいの性状
回転性めまい
非回転性めまい・・・動揺性めまい(体がフワフワする)か失神型めまいか(立ち眩みのような)
2)めまいの発症パターン
急激に発症か緩徐の発症か、反復するのか
3)めまいの誘発要因
頭位の変換時か、起立時か
4)めまいの随伴症状
耳鳴り、難聴、耳閉感
5)既往歴合併症
ウィルス感染、頭部外傷がないか
高血圧、糖尿病、脂質異常症がないか
6)薬物使用歴
服用している薬の確認
7)家族歴
遺伝的素因をもつもの(メニエル病、片頭痛、耳硬化症、神経線維腫証、遺伝性小脳失調症など)
8)血圧および治療履歴
高血圧、起立性低血圧の有無
めまいが起きた時のセルフケア
セルフケアに関しては、こちらのコラムで詳しく書きました。
指導の時など参照にしてください。
参考文献
①ENTONI 2013年3月号 更年期障害と耳鼻咽喉科
「更年期におけるめまい」 清水重敬・鈴木衛著
②女性医学ガイドブック 更年期医療編2019年度版 日本女性医学学会編
「めまい」P272
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この記事は私が書きました。