文体は小説ごとに変えています(その小説を最高に演出できる文章を選ぶ)
特に「一人称」では差が激しいのですが…
自分は小説の文体を、1つ1つ変えています(短編を含めると、かなりの作品数になりますので、中にはカブっているものもあるとは思いますが)。
…というより、そもそも準備段階で「この小説に最も合った文体は、どんなものだろう?」「この小説の内容を最もよく表現できるのは、どんな書き方なのだろう?」と、そこから考え始めます。
文章には、様々なスタイルがあります。
一人称に三人称、「です・ます調」に「だ・である調」、過去の話なのか・現在の話なのかetc…
それぞれにメリットとデメリットがあり、表現できるものが違ってきます。
また、詳細に描写するのか・サラッと流すのか、重厚な描写にするのか・軽妙な描写にするのか…それによって、小説の「雰囲気」がガラッと変わってきたりもします。
なので、書き始める前にまず「この小説はどういうイメージで仕上げたいのか」「そのイメージに近づけるためには、どんな書き方を選ぶべきなのか」を考え、星の数ほどある「文章の書き方」の中から「最適と思われるもの」を選択します。
そうすると当然のことながら、物語が変わるごとに文体も変わってしまうのです。
「一人称」の場合は、だいたい「主人公のキャラクター」に応じて文体を考えます。
「大雑把」な性格なのか、「繊細」な性格なのか…「頭の良い」キャラクターなのか、そうでもないキャラクターなのか…
小説を読んだ読者が、その主人公が「本当にいる」と錯覚できるような…その物語が本当に「主人公の心情の吐露」に感じられるような、そんな文体を選んでいるつもりです。
そして、できることなら、物語ごとに主人公の「違い」を出したいのです。
せっかく多くの作品を書いているのに、主人公が「全部同じ」、物語に「そんなに違いがない」と思われたら、悲しいではないですか。
それに書いている作者当人も、ワンパターンでマンネリな物語は書きたくありません。
なので、できる限り、主人公にも文体にも「バリエーション」を持たせようと努力しています。
読者に「この主人公は、前の話の主人公とは全くの別人だ」と思ってもらえるようにしたいのです。
ただ、そうすると自然と「これまで書いたことのない文体」「書いたことがないタイプのキャラクター」に挑むことになってしまうのですが…。
(根っからのチャレンジャーですので、書くことに関しては全く苦ではない(むしろ楽しい)のですが、クオリティーが下がってしまうリスクはあります…。)
そして、こういう書き方をしていると「文体で小説を選んでいる」読者の方々を戸惑わせることになってしまうと思いますので、そこはちょっと申し訳ないのですが…。
(おそらく大半の読者は「同じ作者なら文体は全部同じだろう」という考えで、小説を選んでいらっしゃるかと思いますので。)
ちなみに、現代の少年少女を主人公にする場合、一人称の地の文で「どこまで『言文一致』にするのか」を、いつも悩みます。
言葉というものは時代とともに変化するもので、普段純文学で使われているような文体も、既に「現実にはあまり使われない、ちょっと古い言い回し」になってしまっていることが多々あります。
しかしながら文体を「現実」の方に寄せてしまうと「くだけ過ぎ」「文章が乱れている」と眉をひそめる方々もいらっしゃることでしょう。
かと言って、「国語のテストで正解が取れるような正しい文章」ばかりで書いたなら、逆に「現代において」のリアリティーが無くなります。
その辺りの「ちょうど良いライン」を探るのに、いつも苦慮しています…。
(ネットミームやスラングをどこまで入れて良いか、「ら抜き言葉」をどこまで許容するかetc…。)