感想 ピストルズ 阿部和重 神町シリーズの第二弾。前作シンセミアのような毒はなく上品な語り口だし入りやすいが、内容はかなりぶっ飛んでいた。
神町シリーズの第二弾ということらしいが、これって、芥川賞を取ったグランド・フィナーレにあった短編も関係しているから、厳密に言うと第三弾のような気もしないではない。
というのも、下巻の6に、あの神町にやってきた幼女性癖の監督が出てくるからだ。
あの物語の不思議な納得のいかない部分が、この物語において謎解きされているというのも面白かった。
本書は、シンセミアから6年後ということになる。
本屋が、小説家の家族と関わることになる。そこで、その伝統ある菖蒲家の不思議な歴史を語られるのだ。すべて語られると記憶を消されるという条件で。
その本屋の石川が、あのグランド・フィナーレの短編で変態監督に演技してもらった二人の少女の一人の親ということになる。この繋がりが僕には楽しかった。
この家は、数千年続いていて一子相伝と言っても北斗神拳ではないよ。
魔術というのか、幻術というのか、超能力というのか
その場の人間を支配できる能力なのです
だから、この父は後継者の娘を連れて博打場に行くのです
このシーンがとても楽しい
勝負に負けても、この菖蒲家の娘は勝ちにできるのです。その場の全員を精神支配できるからです。その能力は当主である父も思い浮かばない凄い技。歌を歌うと支配できるというアニメみたいな話しなのです。
いかなることも、この能力があれは帳尻を合わせられるという、もう、これは最強の能力ですね。
それを悪用しないのが、この家族のいい部分です。
修行の場面で、娘に毒キノコを食べさせたりするのですが、そこから、もう、かなり胸糞悪さが出てきます。
シンセミアのような下品な胸糞悪さではなく、よくわからない胸糞悪さなのです。
その原因が、この作品のあとがきにこう示されています。
語り口も内容も下品でも変態でもないのに、どうして気分悪いのか不思議に感じていたのですが、筒井康隆氏のこの作品を評した、この言葉に集約されているように感じます。
2024 3 13
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