ここまで、シューマッハ・カレッジ滞在のことを書いてきたのですが、最後にサティシュのお話を。
本で読んだサティシュ・クマールもすごく素敵だったけれど、実際にリアルで会ったサティシュは、すごくパワフルで、キラキラ話すおじいちゃんという感じ! オーラはあるけど、まったく威圧感がなくて、温かさとか愛とか人間性が滲み出るような存在感のある人でした。
わたしがずっと探していた「教育観」に出会った
わたしが最初に読んだ本はこちら。サティシュが書いた本の中で、なぜかわからないけどこれが一番タイトルが気になって、即購入したのでした。
けっして薄くはない本なのですが、読み進めれば読み進めるほど、素晴らしい言葉がたくさん出てきて、一気読みしてしまいました。
そして、わたしが一番感動したのはこの言葉。
知識を詰め込んで、人間を画一化するのではなく、「その人の中にあるものがさまざまな出逢いを通して開いていくことが学び」というメッセージが、わたしの理想の学びのカタチと近くて、なんだかグッときたのです。
他にも、仕事やアートに関するものなど、いろいろ素敵な言葉が。
最後の、「自分で仕事をつくること」「自分の生き方をつくること」はまさに今、わたしが帰国してから取り組んでいるテーマでもあります。
3つのH(Head, Heart, Hands)
シューマッハ・カレッジにおいて、大切にされている考えの一つが「3Hの学び」。頭と心と身体をバランスよく使って学びましょう、という教えです。
シューマッハ・カレッジは住み込みで、学生たちは一緒に生活しながらコミュニティで学ぶ学校。サティシュは、自分の話や偉い人たちの演説を聞くのと同じくらい、ガーデニングや料理や掃除が重要だと語っていました。
科学技術が進歩すればするほど、人間は不必要な存在になり、わたしたちはただの「消費者」になっていってしまう。だからこそ、教育を通して「創り手であることを思い出して欲しい」とサティシュは伝えていました。
パンをつくることも、詩をつくることも、庭を手入れすることもすべてが芸術であり、わたしたちは本来誰もが芸術家。芸術家とは何か特別なことをした一握りの人を指すのではなく、自分の想像力、創造力、自発性、自分の心、自分の手で何かを創り出した人のことを言うんだよって。
わたしの身体はわたしのものだけれど、それ以上に大きな意識、想像力、創造性、スピリチュアリティ、喜びのための器のようなもの。だから、わたしは視野を広げたいし、意識を広げたい。
わたしたちは神聖な存在として生まれてきて、世界を美しい場所にするために生きているんだよって話していました。
それから、同様に、心がとても重要と言うことも強く伝えています。
そう問われて、すぐ言葉にできる人はすごく少ないと思います。もちろん、わたしもまったく答えられませんでした。
(むしろ、愛について教えられる人ってどのくらいいるのだろうか?)
これどのくらいの人がそのまま理解できるんだろうって思うのです。そして、それを自分の日常で実践できるかどうかは、また別の話。
そして、ガンジーやマーティン・ルーサー・キングのような偉人たちを挙げて、彼らを動かしていたのは愛と希望だということも話していました。
これらのメッセージは強すぎて、もしかしたら苦手な人もいるかもしれないけれど、その人のタイミングで必要だと思えるときが来たら、目の前のことから取り組んだらいいだけ、とわたしは思っています。
3つのS(Soil, Soul, Society)
もう一つ、シューマッハ・カレッジで大切にされているのが「3Sの教え」。このときは、主にSoilのお話をしてくれました。
農業や食料生産が機械化・工業化され、土とのつながりを失ってしまった結果、ロンドンやニューヨーク、東京といった大都市に住む人々は、食べ物がどこから来るのかわからなくなってしまったのだと。
土で育った食べ物を食べて生きているわたしたちは、そこから切り離されて生きることはできないんだよと言われている感じがしました。
それから、同一性、画一性が、現代の問題だとも言っていました。
多くの宗教があり、多くの色があり、多くの言語があり、多くの哲学があることは素晴らしいこと。
そして、「あなたがあなた自身であること」が大切ということ。
あなたは分離しているのではなく、ただ異なっており、その意味でユニークな存在。この地球上には80億人の人間がいるけれど、あなたのような人は他にはいないのだから、と。
誰かと違うことを恐れるのではなく、あなたが人と違っていることが価値なんだよってすごく強いメッセージだし、もっと多くの人に届いて欲しい言葉だなぁって思いました。
人間の存在の尊さ、自然の豊かさを思い出す
ここでは、サティシュが語っていた、対極にも見えるエピソードを2つ紹介します。最初のメッセージは、けっこうぐさり来る人もいるかも…。
自然は溢れるばかりの恵みを与えてくれているのに、わたしたちはそのことをすっかり忘れてしまっている。そして、自分たちがどれだけ素晴らしい存在だったかも見失ってしまっているのだ、と言われた気がしました。
"BE THE CHANGE"大きな変化は小さな変化から
質疑応答の中で、一人の学生が、サティシュにフォルケホイスコーレのことを質問したのです(わたしはその前にフォルケホイスコーレに行っていたので、この質問が出たときめちゃくちゃびっくりした)。
サティシュも、ノルウェーやデンマークの学校をいくつか訪問したのだそう。そしてイギリスでも、わたしたち自身がそのような学校を始める必要があると思っているとも語ってくれました。
けれど、変化というものは政府からは生まれないもの。草の根レベルの人々の運動が、大きな影響を与え、ある種の変化をもたらすのだと話してくれました。(だからこそ、あなたがそう思うならあなたからはじめないとね?というメッセージな気がする。)
近くで見たサティシュは、まさに愛そのもの
木曜日と金曜日はサティシュが一緒に瞑想をしてくれる日でした。
こんな言葉からはじまるサティシュの瞑想。それはまるで、自分のための時間でありながら、大きなものの一部であることを思い出すような時間でした。
これは瞑想ではないけれど、サティシュの言葉でわたしが大好きなもの。
そして、お話の中の「あなたたちは愛についてどのくらい学んできた?」という質問があまりに刺さりすぎたので、ランチのときに聞いてみたのです。
わかったようで、わかっていない気もするけれど…
愛は大切だけれど、特別なものじゃないんだよって言われた気がしました。
サティシュと一緒にいたのはたった2日間だけだったけれど、その存在が愛で溢れているというか、そこにいるだけで愛がいっぱいの人でした。
サインもしてくれるし、握手もハグもしてくれるし、ランチも一緒に食べてくれるし、この2日間は本当にサティシュを近くで感じられる時間でした。
あのとき「サティシュに会いに行かなきゃ!」という直感だけに従って、トットネスまで行って本当に良かったし、勇気を出した過去の自分をハグしにいきたい気持ちになりました。
2024年秋には、サティシュが来日するそうなので、ぜひもっと多くの人にこの愛を感じて欲しいなぁ。