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ベートーヴェンと食

作曲家の食の話題はとても興味があるのですが、あまり材料がなく、書くことができません。私が書ける唯一話題はベートーヴェンです。単に彼が最も好きな食べ物のお話ですが。

コーヒー愛好家

彼が無類のコーヒー好きだったことはよく知られています。なにしろ朝食はコーヒーだけです。しかもその淹れ方にベートーヴェンのこだわりが現れています。毎朝、コーヒー豆を60粒数え自慢の手動トルコ式コーヒーミルで豆を挽きます。そして湯を注ぎ入れるのです。必ず豆60粒というのがおもしろい。あのベートーヴェンが無骨な手で豆を一粒一粒数える微笑ましい光景を想像すると楽しくなります。

彼の好物は


そして、彼の好物のラインナップ。

子牛の肉、牛(成牛)の肉、鳥の肉、魚、牡蠣、ほうれん草、卵、クリーム、砂糖、スープ、ワイン、濃いコーヒー。

豚肉は嫌い。ビールもあまり好きではない。
(以上、ベートーヴェンの筆談帳の研究によるもの)

シンドラーが書いた「ベートーヴェン伝」にはベートーヴェンの好物はパルメザンチーズをかけたパスタ、とあります。

ベートーヴェンの手紙や彼と接触のあった人々の書き残したものによると、彼は魚が大好物。淡水魚よりも、海の魚が好きだったようです。ボンという海に近い土地で育ったからでしょう。彼の少年時代や青年時代の食生活はどんなものだったのでしょう。

ウィーンでの料理についての不満

ウィーンの料理について、ベートーヴェンは「ここの人たちは料理に不当なまぜものをする」と嘆いています。混ぜものとは彼が常に不平を漏らしていた「毒」のことではなく(笑)、色々な食材を多彩に混ぜることをいうのでしょうか。食材を混ぜるのは複雑な味を創造するための料理の技ではありますが、それが口に合わなかった。

混ぜものの代表の「ソース」も好きではなかったのかもしれません。ソースはそれこそ混ぜものですしね。そんなことをいえば、今流行の日本のラーメンなんかも彼には邪道でしょうか?

ベートーヴェンには素材をのものを生かす和食が最も口にあったかもしれませんね。魚好きですし。あと二百年後に生まれていれば、彼の舌を楽しませる食事を日本人が用意できたかもしれません。

文句をいいつつも健啖家

ベートーヴェンの好物を見ると、意外に何でも食べているみたいという感想を抱きます。一説によれば彼は決してグルメではなかったといいます(ちなみにモーツァルトはグルメだったとか)。グルメでない、つまり味のわからない、単に腹がふくれれば満足の人間というレッテルを貼った記述があると聞いたことがあります。(出典が定かでないので話半分に聞いてください)

人間すべてがグルメである必要はありませんね。むしろ出されたものを多少の文句はいいながらも全部たいらげる愛すべき健啖家が、私は好きです。彼も料理人や家政婦と相当な確執があったとは聞いていますが、基本的には貴族的ではない、全く庶民と同じ食の感覚を持つベートーヴェン像を私は頭で描いています。

ははは、卵10個を使い作った巨大なオムレツをハフハフいいながら食べるベートーヴェン。その食事の光景を思い浮かべるだけで楽しくなります。食は人間そのものを感じさせてくれます。

さて、私はこれからパスタを茹でて塩をまぶし、パルメザンチーズをかけて食べましょう、今宵は。

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