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#112 アヌーナ『アザーワールド』
鈴木さんへ
久しぶりに”ならず者”という言葉を目にしました! でも、いいですね~、このロックンロール感が。キャッチーだし、派手さもあって楽しい~。ただ、思うのは流行って残酷。もし、今時代がロックンロールだったら、絶対に大ヒットしていますよね。
それから、ベッカ・スティーヴンスを気に入っていただいたようで良かったです。日本ではコアポートというレーベルからリリースされているのですが、このレーベルってかつてはキューバ出身の女性シンガーソングライター、ジューサと契約するなど、慧眼を持つ高木さんが運営しているので、フォークでも、ジャズでも新作は、注目なんですよね。オススメです。
さて、今回私が紹介するのはアイルランド出身の男女混成合唱のアヌーナです。鈴木さんもアイルランド音楽が好きだと思いますが、日本のゲーム音楽に彼らが参加していたのってご存じでしたか? ゲームってやります? 昭和のインベーダーゲームですらハマらなかったので、私にとってゲームは異世界なんですよね……。
アヌーナ『アザーワールド』
聖歌ではないけれど、荘厳な雰囲気の合唱に教会に迷い込んだ気持ちにさせられる。彼らのそこに惹かれて聴き続けてきた。アヌーナは、作曲家のマイケル・マクグリンが「中世アイルランドの音楽」をコンセプトに1987年に結成した男女混成合唱団だ。
その彼らの9年ぶりの新作になる。いつもメンバーは流動的なのだが、今回注目すべきは、マイケルの娘さんローレンがメインヴォーカルで参加していること。ゲームを全くしないので、知らなかったけれど、『ゼノブレイド2』の音楽でローレンが歌っているとか。その音楽を作曲した光田康典氏が彼女の歌声のことを「作曲でしばしば必要とする”光と闇”の要素を体現している」と。それは、アヌーナの音楽にも言えることだと思う。その『ゼノブレイド2』の曲も新たにレコーディングした新録として4曲を収録。
それ以外の曲は、主にマイケルが書き上げた新曲になる。彼の言葉によれば、収録曲はレコーディング中にスポンテニアスに生まれたとか。今回アイスランドにあるシガーロス所有のスンドラウギンスタジオでレコーディングされたとか。その環境にインスパイアされるところがあったのだろう。静謐で、冷たい空気感が伝わってくるような曲もある。また、今回は、アイスランド人のメンバーもいる。
歌詞は、ゲール語、ラテン語、アイスランド語などで、宇宙や架空の王国をテーマにしたりしているが、私が心惹かれるのは『セルキーの唄』。セルキーというのはアザラシから人間に変身できる神話の生き物で、アイルランドでもアイスランドでも伝承の物語に登場するとか。壮大な世界観で、ヴィオラの演奏から始まるところも素敵なのだ。
そんな新作と共にアヌーナの来日も決まっている。ライヴに行くと、ますます彼らの神秘的な世界観に引き込まれるのだが、不思議なのはマイケルが指揮することなく、何かカウントをすることなく、十数人のメンバーがス~ッと自然に歌い始めるところ。このアルバムのタイトルじゃないけれど、まさに異世界へと誘ってくれる。そこがまた好きだ。
服部のり子
来日公演