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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ

ヤクルトが勝った日も、負けた日も、打った日も、打たれた日も、ノーノーの日も、(ほぼ)毎試合、観戦エッセイをアップします。勝った日は喜びを倍にし、負けた日は悲しみを半分…いや8割……
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#野球

サムライの熱狂と、ヤクルトと。

WBCが、終わった。 私はいつもほんとうに、あらゆることを理解し消化するのに時間がかかる性格のため、この熱狂が落ち着きはじめ、いいかげんみんなペナントに向けて切り替え始めているという頃に、今さら少しだけゆっくりと、あの熱戦について、考えている。 決勝の日は、私も朝から緊張していた。いつもはその時間ジムにいるけれど、ジムの時間をずらし、ランニングだけ終えてテレビの前で待機した。日本の国旗を持って入場してきたオータニさんと、アメリカの国旗を持って入場してきたトラウトの対比は、

【オープン戦 3/11〜13 ソフトバンク戦】できればプレッシャーよりも多く、自信と誇りを持って

ふと気づくと、スコアボードの上でチャンピオンフラッグが、神宮の風ではためいていた。 外野から見える選手の腕には、小さくチャンピオン・エンブレムが光る。 ヤクルトが優勝を決めた日、そして日本一を決めた日。それはほんとうに、ついこの間のような気がする。今年はオフシーズンが短かったから、ここに来るのも例年よりは、早い気がする。 それでもオフシーズンを挟むと、この球場も、そしてここに集う選手たちも、やっぱりとても、新鮮に映る。久々にこの美しい球場で飲むビールは、やっぱり世界一お

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【2/20練習試合 楽天戦●】嶋さんの走塁と、元気でいること。

嶋さんのホームへの全力疾走を見て、解説の五十嵐さんは大爆笑していた。(ように聞こえた。) いや、わかる、でもいいよね、嶋さんの全力疾走…。と、思っていると、配信終わりに実況の方に「嶋の全力疾走も、良かったですね」と聞かれた五十嵐さんは「というかあれは、肉離れを起こさないように、注意して走っているという感じでした。年齢を重ねるとそういうケアが必要なんです」というようなことを、言っていた。(ように、思う。) ほおおおお、良いことを言う。と、私は思う。いやそうだよ、けがをしない

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プロ野球と私の、オンと、オフ。

知っていましたかもう、開幕まであと56日と迫っています。というか、キャンプインまであと一週間を切りました。信じられますか?信じられない。オフがほんとうに、随分と、短い。 だけどそうは言っても、あの優勝の瞬間と、日本一の瞬間、あれはもう、ずいぶん前のことのようにも思える。なんだか、夢の続きをみているような、そんな気分だ。そしてふわふわした気持ちのまま、このオフシーズンは過ぎていこうとしている。 私が初めて経験する、優勝した年の、オフ。でも今年はちょっと意識的に、あまりヤクル

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「怒らないこと」をヤクルトから学ぶ、修行の日々

『怒らないこと』という本を読んでいる。 というのも今年の私の裏テーマが、まさに「怒らない」なのだ。じゃあ表は何かというと、特に、ない。でもとにかくこれは、なんとなく、「裏」にしておきたい。 普段、仕事とかで怒ることはまあ、ほとんどない。私が「怒る」というのはだいたい、家族に対してである。つまり、子どもたちと夫。でもそれを、ちょっとやめるように意識してみようというのが、今年の裏テーマなのである。 普段は小説以外の本をほとんど読まないのだけれども、たまたま目にしたこの本を読

杉谷の不在と、村上くんの「責任感」。

大量の塩を振って、なんなら口にする村上くんを見て、爆笑しながら同時に私は、そのある意味「けなげ」な姿に胸がいっぱいになっていた。リアル野球盤というテレビ番組の一コマである。 年末年始にかけ、どんどんヤクルトたちは行方不明になっていく。ぐっちに至ってはまじで毎年、どこぞの島へ行っていたりしてほんとうに消息がわからない。スポーツニュースはだんだん、選手の動向よりはコラムが増えていく。(それはそれで楽しいけれど。) そういう中で、とにかく「動くヤクルトたち」の映像は貴重である。

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【オフシーズン・ヤクルトエッセイ】野球選手と、金髪。

髪を染めた。いや、そんなことはしょっちゅうだけれど、ここ2年ほどは、カラーをせずに地毛の黒髪で過ごしていたのだ。自粛期間に美容院に行けなくて、髪はどんどん伸び、そしたらその黒髪がまあ結構新鮮で、これはこれで良いなと、しばらくそれで過ごしていた。 が。私はほんとうに、元来、ものすごく、飽き性のニンゲンなのだと思う。性懲りもなく、毎朝走ったり筋トレしたりしているけれど、はっきり言えばランニングにも筋トレにも、飽きている。ぜんぜんやりたくなんてない。それでもまあ、ある意味「飽き性

【オフシーズン・ヤクルトエッセイ】ヤクルトが日本一になった時、神戸でレフトを守っていたぐっちのこと

3年前のオフ、こんなnoteを書いた。 そう、数字はとても明快にあらゆるものをあぶり出すけれど、それでも数字で計ることのできないものというのが、世の中にはたくさんある。 その「思い」は、例えばファンからの拍手によって表されるのかもしれない。一人の選手が積み重ねてきた歴史によって紡ぎ出される一つのシーンに、大きな拍手が送られる。それは、数字では表せないものだ。 日本シリーズ初日、現地にいる読者の方が、京セラにいるぐっちの写真を送ってくださった。そして、メンバー発表のとき、

【オフシーズン・ヤクルトエッセイ】ファン感謝祭後の、選手たちのインスタを見ながら

よく晴れた日曜日。まぎれもない、「ファン感日和」である。 その日たまたま外苑の銀杏並木を家族で見に来ていた同期が、「まいちゃんもしかして、いる?」と、LINEグループに神宮正面入口の写真を送ってきた。「いるよ!!!3万円握りしめて!」と、言うと、別の同期が「そんだけあったら銀座で寿司食えるがな」と言っている。 「あのね銀座のお寿司は頑張れば年に一回くらい食べられるかもしれないけど、ヤクルトの日本一は20年に一回しか見られないかもしれないの!」と、私は返す。「それはわかる。

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【オフシーズン・ヤクルトエッセイ】ヤクルトを、日本一にしたもの。

2017年。その年、私はサラリーマンを卒業し、息子は小学校に入学し、仕事もプライベートも大きな変化があった。ついでに、ヤクルトスワローズというチームを好きになった。(あと、本格的に毎朝走り始めた。) あれから4年。1年生だった息子は5年生になり、保育園の年少だったむすめが2年生になった。 そして、最下位だったヤクルトスワローズは、日本一になった。 ♢ 私がヤクルトを好きになってから、ヤクルトの順位は、最下位が3回(2017,2019,2020)、2位が1回(2018)

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【11/27日本シリーズ オリックス戦◎】ヤクルト日本一の日に。てっぱちの涙、息子の涙。

てっぱちの涙を、村上くんの涙を、青木の涙を、カツオさんの涙を、慎吾の涙を、私は忘れないでいようと思う。みんながどれほどの思いを持って、このシーズンを戦ったのか、そして、日本シリーズの熱戦を戦い続けたのか。私がわかったふりをしながら、全然わかっていなかった、たくさんのことを。 ♢ オリンピックでてっぱちと村上くんがほんとうに嬉しそうな顔で笑っていた時、私はてっぱちのこんな笑顔を見たことがないな、と、そうおもった。 てっぱちの喜びがたくさん伝わってきた。それを見ながら私は、

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【11/25日本シリーズ オリックス戦●】ほんとうに幸せな時間は、振り返ったときにあとからわかるもの

スーツの上からオリックスのユニフォームを着たお兄さんが、熱心にグラウンドを眺めていた。 先発の山﨑が三振を奪うたび、静かな、でも気持ちのこもった拍手を送り、攻撃の時には応援団の太鼓のリズムに合わせて手を叩く。 横顔が宮本くんに似てるな…とか思っていたら、立ち上がった姿を見て驚いた、それは「お兄さん」じゃなくて、学生さんだった。スーツだと思ったのは、制服だったのだ。 学生さんは、オリックス側に積み重なっていく点数を見ながら、ほんとうにうれしそうに手を叩いた。素直な喜びが、

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【11/24日本シリーズ オリックス戦◯】カツオさんはヒロインでいつも、誰かに感謝する

カツオさんはお立ち台で、「めちゃくちゃうれしいです」と言ってはにかんだ。それはほんとうに、ほんとうに嬉しそうな笑顔だった。 私は今シーズン、何度も何度も見たカツオさんの悔しそうな顔を思い出し、思わず泣いた。優しいフォロワーさんがくれた「塩入りタブレット」を取り出し、口に入れる。 やさしさの味がして、私はまた、泣く。 「第4戦という大事な試合を任されて、なんとか監督の気持ちにこたえたかったので、『絶対大丈夫』という気持ちでマウンドに立ちました。」と、カツオさんは言う。

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【11/23日本シリーズ オリックス戦◯】「気持ち」が突き動かすもの

「気持ちで打ちました」「気持ちで投げました」といったようなことを聞くたびに、…気持ちでなんとかなるなら苦労しないけれども!と、思っていた。だけどこの日本シリーズの試合を見ながら私は「ああこれは、気持ちだわ…」と、つくづく思う。 例えば青木のヒット1本に、その「気持ち」を見る。 今シーズン、青木は数字としては「ものすごく良い」ものではない成績だった、と思う。いや十分すごいけれど、今までと比べれば飛び抜けて良いものだったわけではない。だけどこの日本シリーズで、青木はほんとうに

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