君の体を通してその向こうに届ける。

昨日寝過ぎたから、夜は目が冴えていた。

不定期にあるラジオを聞いた。機械からの指示も受け入れれば楽になると言う人の話を聞いて拍子抜けした。

どちらかと言えば、人間感を奪われたくないと思う側の人間が、面倒なところを全部機械に任せられたらいいのにと言っていた。絶対にないと思っていたから、そこを簡単に乗り越えられる人がいるなんて思ってもいなかった。

どんな仕事も趣味だって面倒なところはある。そこまで良いものだと思い込んで愛おしく感じるのはある種の麻痺だ。自分は自覚なく麻痺していて、麻痺していることにも気づいていなかったんだな。

飲み込まれる人々を遠くから見ている感覚だったけれど、自分だって彼らと同じ場所にいて、もっと違う角度で過ごしている人間がいることをすっかり忘れていた。いつまでか思っていたのに、いつの間にか視野が拡大されていたみたいだ。

その人は馬鹿を装った賢さで、素直な感覚を持っていた。凄い人なんだろうけれど、全く知らなくて、凄さなんて見る人次第だから知らない自分にとってはただの人だ。でも淡々としていてなぜか少し格好良く思えた。

そのまま朝方まで起きていたけれど、今日は早起きだった。着替えて少しだけお菓子を食べて家を出た。

移動を繰り返し、乗り物を乗り継ぎ、この街に帰ってきた。どうも好きになれないのに、今日は少しだけ安心してしまった。逃げるような気持ちになった。

そんな感情は初めてだったから詩を書いた。そして狭い空を見ながら読書をした。嫌な話の連続だった。

最寄駅の階段を降りるとき、小さい子供が両手を引かれて一段ずつ飛び跳ねながら降りていた。自分も誰かに体を預けて飛び降りてみたくなった。

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