いつもごめんね、なんて言える人はいないよ。

今日は早起きだった。寒かったけど気合いで起床した。ご飯を食べて、映画を見た。

ラジオで初解禁された新譜が聴けるようになっていて、誰かが勝手に投稿したんだと思っていたら今日が配信日だった。ずっと待ち遠しかった14日がもう今日だった。

今日は聞きたかった新譜が2曲配信された。部屋で両方聞いた。自然と笑顔になった。

外は風が強くて寒そうだった。木々が揺れる様を窓から見ていた。畑に立てかけられた枯れた稲みたいな草が倒れて散っていた。数箇所だけですぐに戻せそうなくらいだったから良かったと思った。

やっぱり着替えて外に出ることにした。買いたいものがあったから風の中自転車を漕いだ。短くても長くて、緩やかでも急に感じた。全部風のせいだ。

行き道、小さい檻に入れられた犬を見た。こんなに寒いのに大丈夫だろうか。毛布もなさそうで、動ける幅もない。記憶を辿ると犬の顔は元気そうだ。

自分は自転車を漕ぐ。古本屋に寄って本を眺めていた。汗をかくくらい暖かい店内で悴んだ指先を握りしめて、あの犬を思い出した。どうしようもなく気になった。きっと何か理由があって一瞬だけあそこにいたんだ、それをたまたま通りすがりに見ただけだから今頃は暖かいところにいるよ、と言い聞かせるけど、自分の中の心配性が隠れてくれない。

外気の冷たさのせいか視界もぼやけて文字がはっきりしない。欲しかった本を数冊買って店を出た。

暗くなりかけた空を見ながら食材を買いに行く。犬のことで頭がいっぱいだった。何を買いに来たのかさえ忘れそうだった。久しぶりに胃が痛くなって、自分の無力さを感じた。

必要なものを買って、また自転車に跨る。強風で倒された自転車を何台も見た。人間は自分でなんとか出来るからどうでも良かった。

もし帰り道も、あの犬が同じ狭い場所にいたなら自分の毛布を捧げても、新しいのを買ってあげても良いと思った。飼い主が姿を現すまで自分も上着を脱いでそこにいてあげようと思った。大袈裟で馬鹿馬鹿しいけど、本当に思った。

寒さよりも心配が勝っていた。感情よりも本当よりも、本能が急げと訴えていた。言葉にするよりもっと速く、純粋な何かだった。苦しいけど、潰されてもいいと思うくらい大切にしたい何かだった。

同じ道に入る。もう空は暗くて、路地裏だからあの家がどこなのか、注意深く見ておかなければならない。ここか、ここじゃない、を繰り返してあの場所に戻ってきた。

檻は半透明の板で覆われていて、中には何もないみたいだった。はっきり見えなかったけれど、隙間から覗いた空白を信じるしかなかった。

純粋さの前では、どこまでも無力でただ苦しかった。

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