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コクーン歌舞伎「天日坊」

今日はふたたびの渋谷へ。
コクーン歌舞伎「天日坊」を観てきました。

昨年末のTVドラマ「中村仲蔵」の勘九郎さんを観て、コクーンを観よう!と楽しみにしていました。期待通りの面白さ。芝居はもちろん楽しく、それにこんなに生演奏にノリノリになって観劇できるとは思っていませんでした。

勘三郎さん時代から時々観てきたコクーン歌舞伎。初めての作品は「桜姫」だったでしょうか。歌舞伎座とはまた違った’渋谷’で観る歌舞伎に興奮でした。

今回の「天日坊」は再演です。前回は2012年6月。
私は何で観なかったのかというと、四代目猿之助襲名公演スタートの月だったからでした。ヤマトタケルの虜になってた(笑)

なので、初見です。せっかくなので前情報などは一切入れずに臨みました。

~孤児で善良な坊主の法策(勘九郎さん)が、ふとしたことから「頼朝公のご落胤」の証の存在を知る。これさえあれば。。。となりすますことを決意し、人殺しをして証を手に入れる。悪事を重ねながら鎌倉を目指す。途中に出会う、盗賊の地雷太郎(獅童さん)とその妻 お六(七之助さん)から、法策は本当の素性を知ることになります。

そして、そのことから二人と組むことになり、名を「天日坊」と改め、三人で鎌倉に上ります。そこで待っていたのは知った顔でした~

「俺は誰だあっ!」
チラシにあるこの言葉。自分は孤児の法策なのか、頼朝公のご落胤なのか、新たに知った素性の者なのか、天日坊なのか。。勘九郎さんが苦悩する姿が印象的でした。

迷い、決意し、でもまた迷う。歌舞伎によくある完全な悪ではなく、上手くいっても、そうでなくても苦悩する。勘九郎さんの表情が印象的で、笑っても泣いているようだったり、ゾクゾクするほど悪い顔だったり、優しかったり冷酷だったり。目が離せませんでした。

獅童さんの盗賊がかっこよかった。浮世絵から抜き出てきたようなお顔で素敵でした。二枚目で怖い役ですが、面白い場面も健在です。片岡亀蔵さんとめんどくさい対決は笑えました。

七之助さんはわかってたけど美しさが増し増しですね。何ですか!あのスリットが入ったお着物は(笑)あれを着こなせるのは七之助さんだけです!

笹野高史さん、萬次郎さん、扇雀さん、國矢さん、などなど。一人一人がキャラが立ち見逃せません。虎之介くんの出がインパクトありすぎてウケた(笑)鶴松くんのラストも切なくてよかった。

で、私が注目したのが平蔵役の小松和重さん。違和感なさすぎて、本人が’歌舞伎は初めて’とアドリブ?を言うまで気づきませんでした。大人計画の方で、TVでもよくお見かけします。以前の大河も出てましたよね。

幕間明け、小松さんだけのフリータイムがあって(笑)そこで百戦錬磨な匂いがプンプンするわけです。アドリブ力のすごさ。遅れて席に着こうとするお客さんに話しかけるのは時々見かけるネタですが、小松さんは返り討ちに合ってしまった(笑)お客さんの返事に、ネタにしたことを後悔することになるとは~。そんな光景は初めてでめちゃめちゃ面白かったです。

それと、最高に楽しかった生演奏。トランペット、ギター、パーカッションなど。舞台の上手下手の両方にいらして、私はちょうど挟まれた位置で嬉しかったです。効果音にもなるし、大向こう的にも聞こえる時があるし、BGMにもなる。人物の心の声にも。サウンドは哀愁があるけど軽快。芝居とぴったりな世界観でした。

特に大立廻りの時、殺陣と音楽がぴったりあって鳥肌。ゆっくりなテンポから、途中、音楽のテンポが速くなりダイナミックに変化する。七之助さん獅童さんの二人の殺陣は阿弖流為か!みたいな。豪快な殺陣にテンション上がりまくりでした。

勘九郎さんもすごいけど、もともと坊主だし(笑)強いという感じではなく、自分に迷いながらという感じだったので、もっと振り切った殺陣が見てみたかったかも。あああ、でもかっこよかったよ。。

天日坊は生き残るのですね。
私は勝手にラストは果てるのかと思っていました。意外な結末に、希望が見えました。自分が誰であろうと、どんな境遇、名前であろうと、命ある限り生きていかなればならないのです。誰であるかは自分次第で決められる気もするし、一生をかけてもわからないかもしれない。それを探すのが人生かもしれない。

でも、自分は誰でもない。
私はそれでいいのかも。

下座音楽以外で生演奏を聴いたのはいつぶりだろう。音楽って楽器っていいなと改めて思えたのも嬉しい。素敵な時間を有難うございました。

aya


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