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むるめ辞典

■吐息

[読]といき

吐く息

[例文]
彼女の膝の上にのせた頭の中でこれから起こることを考えると肚の奥が熱くなった。喉の奥から滲み出た唾を飲み込む音が大きくて相手に聞こえた気がして恥ずかしかった。

私が小さく咳払いし相手の微笑んでいた唇の閉じたのがスイッチになって空気が変わった。

笑うときにできる彼女の口の端の筋が跡になっていて、その線を人差し指の腹でおさえてみたくなった。そうしながら好きだという言葉が言えそうなのを感じた。

下から白くて華奢な手が伸びてきて私の頬を撫でた。爪と骨の浮き立つ少し乾燥した細い指が首の後ろに回り弱々しく私を引き寄せた。

私たちは天地逆さまになった人同士のように顔を近づけて目をつぶった。

優しく唇が重なり乾いたところを埋めるように湿った舌と舌が触れた。柔らかくて実体のない泡色の吐息の匂いがした。

いつのまにか握り合った手はほぐれて彼女の腰のあたりをさするように動いていた。私の手の平は何処か別のところからやってきたように遠慮なく彼女の体を弄った。

彼女は逃げるように唇を離して泡色の吐息を空中に漏らした。

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安藤むるめ
サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。