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ある行旅死亡人の物語  読書感想文


共同通信の記者がいつもチェックしている「行旅死亡人データベース」で発見した大金を残し、右手の指を欠損した行旅死亡人の女性がどこでどう生きてきたのかを追いかける。



失礼ながらエースという雰囲気ではない二人の記者が本業と
いえる仕事の合間に取材で事実をひとつひとつ掘り起こす。
ドラマチックではないけれどそんな事起こるなんてという事の連続で
だけど一個一個の可能性を手間を惜しまず確認していくという事の繰り返しで超人ではない自分と同じ普通の人がひとつひとつ時間をかけて調べていく
という普通の事をして女性の生まれに迫っていく。
だが取材対象に話しかけるタイミングや取材に訪れる時間が違えば
そうはならなかったかもしれないという事に連続で
大げさに言えば人生っていうのは
そういう事の連続だよなあと読んでいて思った。
劇的な事が起こらないけどちょっとずつ時間をかけてじりじりと
目的に近ずいていくのが読んでいてこういう本が読みたかったんだよな
と思い最後に何もかもすっきりするわけではないのが
それもまたほんとの話なのだがほんとっぽくていいよなと思った。

女性の住んでいた錦江荘の写真もすごいし女性の残したアルバムに映り込んだ車やぬいぐるみから少しずつ女性の生活を感じさせる情報が浮かび上がってくる。
沖宗さんに話を切り上げられそうになった時にとっさにインターホンに駆け寄った記者の動きと声掛けに凄さを感じた。
広島の田舎町で川岡への取材の楽しそうな様子に大変なことばかりだろうが
記者ってすごくいいなと思った。

いまんとこ2023年今年一番で読んでよかったと思う。

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