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映画「コマンドーニンジャ」レビュー「祝!Amazonプライムビデオで「コマンドーニンジャ」が視聴可能に!この機を逃さずグイグイ布教しちゃいます!」

1968年ベトナムで作戦行動中のコマンドー部隊は
謎のニンジャ軍団の襲撃を受け壊滅し,隊長のジョン・ハンターは
捕虜収容所で虜の身となり所長のイン大佐の拷問を受ける。
だが頑として口を割らないジョンに感じ入ったインは
獄中の彼に密かに拳法を教え,更に忍術の奥義をも授け,
今ここにコマンドーニンジャが誕生したのであった。

だが彼はインが免許を皆伝した最初のコマンドーニンジャではなかった。
ジョンの兄弟子で最初のコマンドーニンジャとなりながら,
その後フォースの暗黒面に堕ち,悪に与するレッドニンジャこそが
コマンドー部隊を壊滅させたニンジャ軍団の首領だったのだ。

「コマンドーニンジャを倒せる者はコマンドーニンジャだけだ」
と彼に言い残したインは米国による絨毯爆撃の業火で焼かれるのであった。

歳月が流れ,1986年となり今や退役しカナダの山奥で隠遁生活を送る
ジョンの元にかつてのコマンドー部隊の戦友ホプキンスが訪れ,
離婚した妻が何者かに殺害され
同居する愛娘ジェニーが拉致された事を知る。
怒りに燃えるジョンはホプキンスと行動を共にしながら
事件の手掛かりを求めて行動を開始するのであった…。

コマンドー部隊とか愛娘ジェニーは「コマンドー」の引用,
ジョンの風体は「ランボー 怒りの脱出」のジョン・ランボーの引用,
光学迷彩で姿を消すレッドニンジャは「プレデター」の引用,
ジェニーが家中にトラップを仕掛けニンジャ軍団を迎え撃つ描写は
「ホームアローン」の引用,
ベトナムの密林で恐竜が襲って来る場面は「ジュラシックパーク」の引用,
捕虜収容所の所長インは「地獄のヒーロー2」の引用,
修行場面はドルフラングレンの映画と
「ニンジャ・タートルズ」の引用…と数え上げればキリが無いが,
ベースとなってるのは
「コマンドー」「プレデター」「怒りの脱出」「アメリカン忍者」の4作。

特にジョンが娘が拉致されたバルベルデ(!)に完全武装して乗り込んで
無双する模様は「コマンドー」そのものであって,
音楽も「コマンドー」の笛の様な曲が流れてる有様。
本当に監督は「コマンドー」が好きで好感が持てる。

バルベルデでジョンにやられる無数の兵士たちは
「ゾンビ」のSWAT隊モチーフかしらと思っていたが
何とSNKのビデオゲーム「怒」(1986)の青ザコ兵士がモデルとの事。
「怒」は「ランボー 怒りの脱出」の世界観を拝借したゲームなのだ。
何でそこまで詳しいの?
更に愛娘ジェニーが遊んでいたTVゲームは
タイトーの「オペレーションウルフ」(1987)と,
ゲームまでもが「凄腕の軍人が無双する」系となっていて
単なる時代考証では絶対こうはならない。
監督が「当時の空気」全体をこよなく愛してる事が
こういうディティールからも分かるのである。

監督・脚本のベンジャミン・コンブは子供の頃,
80年代映画のビデオを山程見て
「僕も(80年代)映画を造りたい」と思ったと言う。
余りにも80年代映画を意識する余り,画質は意図的に荒く作り,
音響は当時のエレクトーンを捜して来て,
特撮もダミー人形丸分かりにして構築したと言う。

なので全く予備知識無しに観た僕などはすっかり騙されてしまい,
本作を「ホットショット」の様な1990年代の映画を思い込んでしまったが,
実は2018年に作られた仏国発の自主製作映画と知って大いに驚いた次第。

監督がスタッフに徹底周知したのは,ひとつは
「80年代映画を真似する事なく,馬鹿にする事なく作れ」
という意識。
もうひとつは「安易にCGを使わない事」。
特に後者は監督の怨念が溢れ
「僕は「スターウォーズ」の今世紀に於けるCGによる「手直し」や
北野武監督の「座頭市」のCG処理に大いに落胆した」
と手厳しい。

自主製作故に何しろ専門家を雇う金もロケ地となる場所を借りる金もなく,
基本はゲリラ撮影。
あとは親戚縁者の所有する建造物を使用。
「映画を作りたいなら親戚縁者を大切にした方がいい」
とは監督の弁。
仏語を米語に吹き替える声優はユーチューバーと
「金がないなら知恵とコネをフル活用」
という映画の基本を監督が実地で学び取って行く姿は感動的ですらある。

ジョンとホプキンスが18年ぶりに再会して腕力を競い合う場面は
勿論「プレデター」のダッチとディロンの再会の再現であり
斧で薪を割っているジョンに背後からホプキンスが忍び寄る場面は
「コマンドー」冒頭のメイトリクスとジェニーの再現。

『本作に「独創」は無いのか?』

という御批判に対してはジョンとホプキンスの会話場面を紹介したい。

ホプキンス「いい知らせと悪い知らせがある」「どっちから聞きたい?」
ジョン「じゃあ悪い知らせから」
ホプキンス「君の娘がニンジャ軍団に拉致された」
ジョン「ジェニーが!?」「それでいい知らせは?」
ホプキンス「君の別れた奥さんがニンジャ軍団に射殺された」
ジョン「YES!これで慰謝料を払わずに済む!」

「別れても好きな人」などという寝惚けた概念はフランスには無いのだ。

特典映像は短編映画「ホプキンス」とメイキングと予告編集。
「ホプキンス」はベトナムで隻腕となったホプキンスが
NYで孤独に生きながらNYの地下道でゲリラ活動を続ける
幻覚のベトコンを火炎放射器で焼くことを夢想する内容。
映画本編の様な活躍の場が彼に訪れなかった場合のIF映画であり,
彼がショボクレた傷痍軍人の身でありながら
『ずっとトラウトマン(上官)からの新たな命令を待ち続けてる
「もうひとりのランボー」』
という描写にグッと来ますなあ。

「メイキング」では監督が詳細に元ネタを明かしてくれてます。
映画を観終わった後の映画知識クイズの
「答え合わせ」をするのにいいのかもしれません。
監督がコブラ会のTシャツ着て,スーパーファミコンに
「スーパードンキーコング2」のカセットが刺さってて,
本棚に「ロボコップ2」のコミックが並べてある時点で
監督を好きになるしかないのである。

予告編のひとつに
「1986年に日本で本作が公開された場合の予告編」
が収録されてて,YouTubeでは東映マークが付いてたんだけど
本商品ではモザイクがかけられてました。
このフェイク予告編,東映さんには無断だったのかしら…。

ジャケットはリバーシブルで裏面は
「本作がビデオゲームになった場合」のIFが再現されてて楽しいですね。

すっかり本作のファンとなってしまったのですが
発売元からの悲鳴の様な告知によると
「日本を47都道府県に分けた場合,
全ての都道府県で各1枚買われた計算よりも売れてない」
そうな。
世間の認知度が余りにも低すぎるのだ。
僕は多く見積もっても「48人目の購入者」と言う訳か。

拙レビューで80年代映画に大いなる愛を捧げた
本作の魅力の100分の1でも伝われば幸いである。

ED主題歌は体内の血液が沸騰する必聴の内容です!


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