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ロールスイッチという魔法〜ソーシャルワークに役立つプロセスワークのはなし
自分の古いファイルを整理していたら、別のことに使おうと思っていた文章がふと見つかった。読んでみると面白かったので、せっかくだから記事にしちゃいました。
ぼくはDayaのもとでプロセスワークを学んでいますが。多くの人々にプロセスワークのもつ可能性やパワフルさを知ってもらえたら幸いですぜ。
ある保護者と関係機関との葛藤
ぼくはソーシャルワーカーとしてある自治体の福祉事務所から業務委託を受け、低所得者の子どもとその家族を支援していました。ぼくはあるひとり親家庭を担当していましたが、ある日、保護者から同自治体内の関係機関の対応に怒っている、という話を聴きました。最初ぼくはただ保護者の話に耳を傾けていましたが、保護者からの訴えはどんどん感情的になりエスカレートしていきました。ぼくはそれをただ聴いていたのですが、具体的なアクションは何もせずにいました。ぼくはただ聴くだけの支援に限界を感じていました。
Dayaのワークを受けた
プロセスワークにおけるロールスイッチ
そんななか、ぼくはDayaとの個人セッションでワークすることにしました。ケースの概要を話したのち、Dayaはぼくに「保護者のロールに立ってみなよ」と促しました。プロセスワークにおけるロールプレイは、その人の立場をしっかりと感じ、いわばその人になりきり、そこから出てくるフィーリングや想いに耳を傾けます。
保護者のロールを感じる
Dayaが関係機関、ぼくは保護者ロールに立ち対話を進めながら、ぼくはそこから感じるその関係機関に対する怒りを表現しました。次第にぼくは、彼がぼくに話したように、興奮し顔を真っ赤にし怒りを表現し言葉にしました。ロールにしっかり立つことで、関係機関に自分の意見を聴いてもらえず勝手に支援方針を決められた保護者の痛みや無念さをリアルに理解できました。
ロールを深めた先に出てきた意外なことば
さらに保護者ロールを深めていくと不思議なことが起きました。ある言葉がふと浮かんだのですが、それは普段の自分では絶対に浮かんでこない言葉でした。一瞬躊躇しましたが、それをDayaは見逃さず「何が起こってる?」と声をかけてくれました。ぼくはそれを言葉にすることにしました。
「むらきちさん、私と一緒に関係機関に行ってください」
ぼくは普段から多くのケースでその関係機関と関わっていて、この保護者の側に立つことで関係が悪化するのを恐れていました。ぼく自身当時自治体から業務委託を受けている非常勤職員であるという立場の弱さもあったし「ぼくが動いたところで状況は変わんないよ」という諦めもありました。自信がなく、自分の力も過小評価してました。しかし上記の言葉は普段の自分の理解を超えたところにあり、同時にとてもリアルで説得力がありました。不安や恐れを抱えつつも、ぼくはその声に従うことにしました。
葛藤への介入
数日後、ぼくは保護者と面接し「今まで一人で関係機関に行かせてごめん。心細かったですよね。ぼくが力になれるかわからないけど、必要だったら一緒に(関係機関に)話しにいくからその時は遠慮なく言って欲しい」と伝えました。関係機関にも連絡し「その時は保護者に寄り添う形で話しますね」と伝えておきました。数日後、声を荒げた保護者から「今から(関係機関に)行くから一緒に来てください!」と連絡があり、保護者、関係機関職員、ぼくとで面接をすることになりました。
話し合いはとても激しいものでした。保護者は興奮し怒りの感情を表現するのですが、関係機関職員は保護者のその感情には応えず、冷静かつ表面的で事務的な回答に終始しました。こう着状態となったため、ぼくが介入しました。まず関係機関の立場に立ち、関係機関の事情を保護者に伝えました(事前に関係機関のロールを取り準備しました)。その上で関係機関に、保護者が本当に伝えたかったのは、保護者としての自分を蔑ろにされた痛みなんです、とフィーリングも込めて伝えました。
すると職員から「確かにそうですね。それは申し訳ありませんでした」と謝罪がありました。すると保護者は「…わかればいいんですよ」と目に涙を浮かべながら応えたのです。状況は一気に変わり、その後の現実的な取り決めはスムースに進みました。この展開に最も驚いたのはぼくでした。
現在
数年たち、ぼくは同じ福祉事務所には勤めているのですが、別な仕事に就いており、保護者との直接な関わりは無くなりました。
だけど先日ぼくの法人がこども食堂をやることになり、彼に声をかけたらこどもと駆けつけてくれました。一緒に大きな葛藤をくぐり抜けてきた繋がりは今も続いています。
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この記事を読んでプロセスワークって面白そうだなぁ、自分も学んでみたいなあ、て思われた方がいらっしゃったもしれません。
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