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なぜ、BCPは形骸化してしまうのか

 BCPとは、事業継続計画(Business continuity planning)の略称です。これは、災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画を指します。
 私は、今年開催される第55回日本作業療法学会において、COVID-19に対するリハ部門のBCPの作成及び運用の経験を報告予定です。そこで本noteでは、リハ部門及び感染症に特化したBCPは一般的なのか、またそれを形骸化させないためにはどのような視点が必要なのかについて整理します。

リハ部門と感染症に特化したBCPは一般的なのか

 限られた対象ではありますが、Twitterによるアンケート調査を実施しました。問いは、「医療及び福祉施設に勤務されている方にお尋ねします。あなたの職場には、リハに関する感染症に対するBCP(事業継続計画)はありますか?」とし、回答期間は7日間としました。

 結果、少なくとも6割以上の医療及び福祉施設には、リハに関する感染症に対するBCPはないということが示唆されました。
 医療の領域においては、平成29年度より災害拠点病院のBCP策定は義務化されました。また、介護保険領域においては、令和3年の介護報酬改定より介護施設・介護サービス事業所にBCP策定が義務化されました。
 したがって、病院や福祉施設等においては、おそらく全社的なBCPの策定が進んでると推測されますが、対象者との接触が他職種に比べて時間的・距離的に密となるリハ部門のBCPを別途設けている施設は現時点では一般的ではないことがわかります。

BCPを形骸化させないためにはどのような視点が必要か

 下の図は、「処理すべき優先順位をどうつけるか?」の決定時に活用する時間管理のマトリクスを示しています。簡単に解説すると、人は緊急度の高い活動が中心であり、緊急度と重要度が高い第1領域の活動に目処がつくと、緊急度は高いけれど重要度は低い第3領域の活動に目を奪われてしまうというものです。したがって、緊急度は高くないけれども重要度が高い活動である第2領域にどう着手するかが重要であるというものです。

重要性・緊急性マトリクス

 この緊急度と重要度のマトリクスで「形骸化するとはどういうことか?」を考えると、組織の構成員の多くが「重要ではない」と認識することと推測します。実際に、重要でも緊急でもないという第4領域のものなら切り捨ててよいと考えます。しかし、第1領域及び第2領域のような重要なものは、「重要度を強調し続けること」が必要と考えます。
BCPの重要度を強調し続けるには、シミュレーションとメンテナンスが必要と私は考えています。シミュレーションでは、BCPを活用しなければならないような最悪の状況を想定し、判断の目的と基準を定期的に組織の構成員と共有します。一方、メンテナンスでは、シミュレーションの過程で表面化する想定外のパターンや状況を反映させます。このシミュレーションとメンテナンスをマネジャーが定期的に実施することで、組織の構成員が重要度を認識し続けるのではないかと私は考えています。
 
 BCPに限らず、仕事上において形骸化した仕組みはたくさんあると推測します。その場合も、今回のBCPを形骸化させないための視点は参考になると考えます。重要ではないものは潔く切り捨て、重要なものは形骸化しないようにマネジメントすることがマネジャーには常に求められていると私は考えます。

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