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なぜ、私は職能資格を有しながら二十年以上所属した職能団体を退会するのか?

本noteは、私が作業療法士でありながら、二十余年間所属した「日本作業療法士協会」及び「県作業療法士会」をなぜ退会するのかを記述したものです。決して職能団体からの退会を奨めるものではありません。むしろ筆者は、職能資格で就業している方は、職能団体に所属すべきという考えであることを強調しておきます。

職能団体とは

”職能団体(しょくのうだんたい)とは、法律や医療などの専門的資格を持つ専門職の従事者らが、自己の専門性の維持・向上や、専門職としての待遇や利益の保持・改善、及び専門職の団結による社会貢献活動を行うための組織”である。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

つまり、職能団体である日本作業療法士協会及び県作業療法士会とは、作業療法士としての専門性の維持・向上や、作業療法士の待遇や利益の保持・改善に加え、作業療法士としての社会貢献活動を行うための組織と考えることができます。
 これを踏まえた上で、日本作業療法士協会が作業療法士養成校用の講義資料として作成した「これから作業療法士になるあなたに/日本作業療法士協会とは?」を見ると、職能団体としての日本作業療法士協会の役割がよくわかります。以下に、その要約を記します。

作業療法士の役割は、作業療法を必要とする人たちに常に質の高い支援を提供することにある。これは、国家資格を付与された者として、私たち作業療法士に与えられた使命である。しかし、個人の力だけで作業療法士の知識と技術を更新しつつ、社会的地位の向上を目指し続けることは難しい。だから、日本作業療法士協会がある。
 学術部は、学会の開催や学術誌の発行、事例報告登録制度や作業療法マニュアル作成などの学術活動を行なっている。教育部は、卒前・卒後教育や各種研修会の運営、生涯教育制度の運営を行なっている。制度対策部は、制度改正を行政に働きかけたり、作業療法士の活用を他職種に働きかけている。国際部は、国際的な学術交流や研修、教育支援を行なっている。そして広報部は、機関誌の編集・発行やWebサイト及びSNSの企画・運営、広報物の制作などを行なっている。
参考:日本作業療法士協会「これから作業療法士になるあなたに/日本作業療法士協会とは?」を筆者要約

以上のことから、職能資格で就業している方は、知識と技術を更新しながら社会的地位の向上を目指すのであれば、職能団体に所属することが最も合理的であると考えることができます。

職能団体の活動原資

職能団体には、強制加入制のものとそうでないものがあります。日本作業療法士協会や県作業療法士協会は、強制加入制ではありません。したがって、個人の意思で加入していない方も散見されています。
 下の図は、日本作業療法士協会の2020年度の正味財産増減計算書です。正味財産増減計算書とは、その事業年度中にどのくらい収益があり、どのくらい費用や損失が発生し、結果として正味財産がどれだけ増減したのかがわかるものです。

引用:日本作業療法士協会『2020年度正味財産増減計画書』

ここでは、経常収益のみ注目します。すると、経常収益計808,351,766円に対し、会費収益は729,094,000円で、経常収益計に対する会費収益の割合は90.2%であることが分かります。つまり、職能団体として活動するための原資の9割は会費なのです。したがって、職能団体としての協会活動は、会員が減少すると先細りとなるリスクが想定されます。言い換えると、フリーライダーが増えることで、作業療法士の社会的地位の向上を目指すことが難しくなる可能性があると考えることができます。

退会を決意した理由

そのような状況の中で、私が職能団体の退会を決意した理由の一つに、「職場での役割の変化に伴い、認定資格の維持が困難になったこと」があります。
 作業療法士として臨床実践を行なった20年弱と、リハ部門マネジャーとして組織マネジメントを実践してきた5年間は、学会発表や論文投稿といった学術活動と、作業療法士としての社会貢献活動の実践によって認定資格を維持してきました。しかし、職場での役割がリハビリテーションの現場から法人本部に移行した今、その認定資格を維持し続けることは困難と感じました。次回更新分の要件はこれまでの実践で満たしてはいますが、その後の更新は困難と感じたのです。
 また、「職場での現在の役割に求められる知識や技術を維持・向上するためには、マネジメントに関連する別の団体への入会が必要と感じたこと」も理由の一つです。
 以上のことから、職能団体である日本作業療法士協会と県作業療法士会を退会し、自らに求められる就業上の役割を果たすための別の団体への入会を決意したのです。

結語

職能団体が存在する意義は、専門性の維持・向上や、専門職としての待遇や利益の保持・改善に加え、専門職の団結による社会貢献活動を行うことにあります。他方、職能資格で就業している方は、自己の専門知識や技術を更新し続けることが必要です。また、その職能資格で持続的就業を可能とするためには、職能資格の社会的地位を高め続けることも必要になります。しかし、これらを個人で行うことは難しいために職能団体が存在しているのです。そう考えると、職能資格で就業している方は、その職能団体に所属することが最も合理的な判断であると考えることができます。
 私は作業療法士として就業してきた二十余年間、途切れることなく作業療法士の職能団体に所属してきました。しかし、現在の私は作業療法士ではなく、事務職員として組織マネジメントを担う立場で就業しています。だから私は、日本作業療法士協会と県作業療法士会を退会し、新たにマネジメントに関連した団体に入会することにしたのです。さまざまなご意見があるとは思いますが、今の私はそのように考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』:職能団体.https://ja.wikipedia.org/wiki/職能団体(参照2022.3.15)
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』:強制加入団体.https://ja.wikipedia.org/wiki/強制加入団体(参照2022.3.15)
・一般社団法人日本作業療法士協会:これから作業療法士になるあなたに.https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/06/ot_kougi_0423.pdf(参照2022.3.21)
・一般社団法人日本作業療法士協会:2020年度正味財産増減計算書.https://www.jaot.or.jp/files/news/soukai/2020gian-report-4.pdf(参照2022.3.15)
・一般社団法人日本作業療法士協会:当協会の活動.https://www.jaot.or.jp/about/associa/(参照2022.3.21)

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Y.MURAYAMA|医療法人 経営戦略部門
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