『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を見た
ようこそ。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を見てきましたので感想を。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
(原題:Joker: Folie à Deux)
監督:トッド・フィリップス
脚本:スコット・シルヴァー、トッド・フィリップス
賛否巻き起こる本作。
私はどちらかというと「賛」です。
でも、「否」の気持ちもものすごくわかる。
演劇や映画も食事も基本的になんでも美味しく摂取できるタイプなので、
「否」になる作品はそんなに無いのですが、ちょっと奥歯に詰まった要素を先に上げていこうかなと思います。
1.アメコミ作品への期待
どの評論サイトにも、ネット記事にもよく書かれていることなんで、耳タコかもしれませんが、やっぱりバットマンシリーズの超人気ヴィランの「ジョーカー」を題材にしているだけあって、これまでの世に出てきた狡猾で、残忍で、掴みどころのないジョーカー像を期待はしていました。
比べる必要はないけど、前作はもちろん、これまでのジョーカー、僕の場合は特にヒース・レジャー演じるジョーカー像と重ねてしまいました。鑑賞前は。
結局、賛否の一番の原因はココなのかなと。それにつきます。
でも、ホアキンジョーカーは、これまで見ることができなかった。ジョーカーの精神的なオリジンを垣間見ることができるような表現をしており、ジョーカーを知った気になっていたことを突き付けられたようです。
とはいえ、需要の話をするとジョーカーに上記のような像を期待していた人は少なくはないし、前作ではその片鱗が見えていただけに、需要にマッチするような、商品の提供はされていないと思います。
2.ハーレクインとの関係性
レディ・ガガ演じるリー(ハーレクイン)への愛が一方的で、リーからのジョーカーへの愛は大衆的だったことについては、僕は一番腹落ちしていません。
元来のジョーカーの話をすると、基本的にハーレクインからジョーカーに対する愛のベクトルがセオリーで、その愛の大きさや異常さは大衆とは比較ならないものであると思っています。
今回の場合、大衆やリーからホアキンジョーカーに対する期待値が大差なく、アーサーの自白での冷め方も同じように冷めていたなと感じました。ここが、もったいない気がしています。冷めてもいいんですけど、冷め方がカエル化現象みたいな形で腑に落ちていません。
例えば、アーサーの意思をガン無視してでもジョーカーに戻そうとしたり、自分がジョーカーになるくらい狂ったりそういう変化が見たかったのかなと考えています。
これも、結局は僕の勝手な期待なんですが、ここに関しては納得はしていないです。
ちなみに、ミュージカルパートに関しては、僕は無しじゃないと思っています。
さて、「否」に関して考えていることはここまでで、僕が「賛」に至ったことについて書いていこうと思います。
Ⅰ.メタ
今回のジョーカーは、メタフィクション大好き人間の僕にとって、第4の壁を触れずして現実世界に干渉してきた感じがして、ゾクッとさせられました。
これも、良く世に出ている評価ですが、作品内の大衆と私たちは同じような期待をアーサー(ホアキン)に対して抱いており、それがトッド・フィリップスの手の上だったということに過ぎないことなのかなと思います。
そのことがムカつくかムカつかないかがこの作品の評価に繋がっているだけで、僕は監督に転がされたことに、快感を感じています。
鑑賞者としての私の感情のラインは、劇中の大衆たちと同じで、しばらくは何をしてくれるんだという期待をホアキンに投影し、アーサーが自己弁護を決意するシーンで、傍聴席同様に心が躍りました。そして、アーサーの内心の吐露に肩を透かさる。ユナイテッドシネマももちの10番スクリーンで見ているものの、自分の存在は画面の中にいるような気持ちが芽生えたとき、自分はしてやられたと感じ、楽しんでいました。
Ⅱ.逆張りではない
期待していたものでは無かっったですが、監督が逆張りをしていたわけではないこと。このことが、僕の中で本作が良かったと思えるポイントになっています。
天邪鬼になって、期待と違うことをすることは、そんなに難しいことではなく、それは結局逆張り元のことを真似しているだけに過ぎないと思います。
ただ、今作は観客に期待を持たしたまま、終幕まで持っていったと思います。
また、これまでのジョーカーを否定しているわけではいことは見られており、特に、最後アーサーを刺した囚人が自身の口角をナイフで切りつけるシーンは、ジョーカーが固有名詞ではなく、概念として連なっていくことを暗喩しているように思え、この最後の囚人がジャックニコルソンやヒースレジャーのジョーカーに繋がるんじゃないのかと、また期待させてくれています。
アーサーはバットマンのヴィランにはなり得なかったけど、アーサーをきっかけにヴィランであるジョーカーが生まれる可能性にワクワクしています。
以上、今回の「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」の感想となります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
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