僕達が虫を嫌いになったその理由(上)著者/yoruta
虫が嫌いで仕方がないのに、近くに自然がある町に引っ越してしまった。
家の隣に林があるため、毎日様々な種類の虫が輸入されてくる。
見た事もない大きさの真っ黒な虫。本当に自然のデザインなのか?と目を疑うような形の虫。
先日玄関の前に堂々と「スズメガ」が座り込んでいてしばらく動かない(人間が動けない)といった出来事があった。
ホラー映画などではよく見かけるちょっと不気味なタイプの蛾である。
現実で初めてお目にかかったが、あんなに大きいなどと思ってはいなかった。
手のひらぐらいの大きな物体が飛び去る瞬間ブウウウウンの音。驚異のスピード。
確かにホラー映画などで起用されたい。あれは虫ではないUMA的な何かであると…。
ただし、蛾は室内までの侵入は無い。玄関での襲撃がほとんどである。
玄関で襲撃に遭うというのも厄介ではあるが、
我が家への来客として厄介な問題児を紹介するならば、まずはカメムシである。
サシガメという虫である。
(種類はオオトビサシガメなのではないか、と思う。)
ふと見ると壁についていたりする。
臭いだけのカメムシとは違う。
見た目はゴ○ブリと間違えるような形をしているが、よく見るとかなり凝ったデザインの体。
扇を広げたような優雅な背中を持ち、三角を重ねたような複雑な模様。
貫禄があり、かなり堂々としている。
カメムシは寒い場所が苦手で、オフトンを探しているらしいというが、そういう性質は変わらないのか?
布団の上で二度目撃している。脚の上にいた事もある。恐ろしや。
これは名前のとおり刺す虫で、刺されると相当痛いらしい。恐ろしや。
さらにこの辺りは日本脳炎で知られる「アカイエカ」や、有名すぎる毒蜘蛛「セアカゴケグモ」などが見つかっている地域。
蜘蛛の来客は突然である。ソファーの真上に来客していた蜘蛛に気付かず、噛まれてしまった(毒蜘蛛ではない)
首がしびれたため、病院へ行き破傷風の注射を打たれたり、保健所が我が家を調査しに来たりなど相当に厄介である。
実際にはその蜘蛛が嚙んだのか、他の毒のある虫にたまたま刺されたのかは特定できなかったのだが、災難である。
止まらない害虫たちの訪問。
毎年夏には虫の対策を始める
梅雨が始まると虫よけグッズを大量に買い込む。
夏には業者を呼んで薬を散布したこともあるが、今年はひとまず既製品を頼りにした。
ちょうどこの夏はSNSでおにやんまをモチーフにした虫除けが流行。
夏の始まり頃はダイソーなどでも売られていたのに、バズってからは近所では購入できなくなってしまった。
おにやんまの柄だけでも効果があるとの事で、自作のおにやんま柄棒を玄関にセットしてみた。
割り箸にガムテープを巻いただけの簡易的な自作だが、これが蚊には案外本当に効いているかもしれない。
今年の夏は猛暑が激しく、暑さで蚊がいないとも聞くので、本当の効果は不明であるが、虫嫌いのメンタル用お守りとして良いアイテムである。
そんな虫嫌いの私がこの夏、昆虫採集に誘われたところから物語は始まる。
虫とり網という名の"伝説の武器"
「yorutaさんも行きませんか?」
親戚の子供たちが揃ってニッコリしている。
なぜ私も?虫とりなんか、当然ノリ気じゃない。
「これからチョコザップに行くので」とテキトウすぎる返事をした。
ただ、せっかくの夏休み。たまには少し別な刺激を得たい、夏らしい事をしたい」などと考えてもいた。
何も思わずあっという間に時が過ぎてしまうのも淋しいものだから。
子供好きじゃ無い。
日焼けしたく無い。
蚊に刺されたく無い。
でも魔が刺した。
甦る幼い夏の日々、覚醒
湿地の自然をそのまま生かした公園は猛暑なのになぜか涼し気。
陽が暮れる前の時間である為さっそく、セミの幼虫たちが土から這い出てお出迎えしてくれた。高い木を目指してヨチヨチ歩いている。
子供の頃、セミの幼虫の羽化を見たことがあった。白い身体がだんだんと色づき飛び立つまで。
素晴らしい瞬間だった、とそれ以外の言葉が見つからない。
大人になってもはっきりと覚えているぐらいだから。
親戚の子供たち生まれて初めての昆虫採集なのか、なかなか虫を捕まえられない。
それどころか、まるでハエ叩きのように網を振り回している。
嗚於…あれでは潰してしまいそうだ。
「ちょっとかしてごらん」
その瞬間、私は30年ぶりに虫とり網に触れた。
否、虫とり網という名の"伝説の武器"に触れてしまったのだ。
私は虫のとり方や触り方を知っている。
それは頭ではなく、体が知っているのだ。
網はこう持ち、こう捕まえる。
この虫の触り方はこうで、こうすれば自然にかえる。
思い出した、私は誇り高き虫とり戦士。
耳を澄まして木漏れ日のなか、セミを探し続け、蝶々や蜻蛉と追いかけっこした。
その日の収穫はアブラゼミ
ショウリョウバッタ、モンシロチョウなど。
まとめると、これは虫嫌いのはずが虫とり網を離さず、子供たちより夢中になって虫とりをしていた恥ずかしいオトナのお話です。
帰り道、本屋に寄った私は昆虫図鑑を手に取っていた。
今日の物語はこうして陽が暮れる。
カラスが鳴くから帰りましょう。
虫嫌いになった理由を考察する続編(下)へ続く
著者:yoruta