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皿の上は歩けない
登場人物
慎太郎(23)……大学生
めだか(22)……大学生
○慎太郎の家
暗い部屋。
机の上に蝋燭の灯ったケーキが置かれている。
慎太郎(23)とめだか(22)がケーキを挟んで向かい合っている。
慎太郎「誕生日おめでとう、めだか」
めだか「1本足りない」
ケーキには21本蝋燭が。
慎太郎「いや、迷った……っていうか」
慎太郎、蝋燭をもう1本ケーキに刺そうとする。
めだか、動きを手で制止して、
めだか「いいよ、もう」
慎太郎、蝋燭を刺さずにテーブルの上に。
慎太郎「あのさ、ちょっと質問なんだけど」
めだか「何?」
慎太郎「幽霊って、年取るの?」
めだか「いや、とるよ、普通に。多分」
慎太郎「え、でもさ、なんか映画とかでよく見る幽霊って、死んだときの姿、というか……あ、ハリーポッターにさ……」
めだか「(遮って)ほとんど首なしニック」
慎太郎「だからさ……」
めだか「(遮って)跡に残らなかったから、私は」
気まずい沈黙。
慎太郎「もう半年か」
めだか「まだ半年か」
慎太郎「どう? 慣れた? そっちは」
めだか「全然、友達もできないし」
慎太郎「変わんないね」
めだか「てかさ、私の取り皿も用意してよ」
慎太郎の前に取り皿。めだかの前にはない。
慎太郎「あ、ごめん」
慎太郎、席を立ちキッチンの方へ。
めだか、蝋燭に息を吹きかける。
炎は全く揺れない。
慎太郎、取り皿を落とし、割る。
慎太郎「あ」
めだか「変わんないね」
慎太郎「ごめん」
めだか「え? なんで謝るの」
慎太郎「この皿」
床に割れた皿が散らばっている。
めだか「ああ、あれか」
慎太郎「大切にしてたのに」
めだか「口ではいくらでも言える」
めだか、慎太郎のもとに近づき、しゃがみ込む。
慎太郎「危ないよ」
めだか「大丈夫、幽霊だから」
めだか、皿の破片を見て、
めだか「あーあ、このお皿、高かったのにな」
慎太郎「なんで……なんでめだかは、大切に……大切にしなかったの? 自分 のことを」
めだか「え?」
慎太郎、首を横に振って、
慎太郎「ううん、なんでもない」
めだか「してたよ、でも……」
慎太郎「口ではいくらでも言える」
めだか、小さく笑う。
めだか「ねえ、早く食べよ」
めだか、慎太郎の手を握り、机の方へ引っ張っていく。
慎太郎と光莉、同じ席につく。
めだか「早く忘れちゃいなよ、私のことなんか」
慎太郎「いやだ」
めだか「消して」
慎太郎、勢いよく蝋燭を吹き消す。
真っ暗。
めだかの声「ねえ、私のこと見える?」
慎太郎「見えないよ。見えるわけないじゃん、だって、めだかは死んでるんだよ」
めだかの声「それでいい、それでいいんだよ」
おわり
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