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社会を怖がりながら歩き続けた日


 歩けど歩けどラブホが目に入る。先日渋谷にてラブホ女子会に参加し、ラブホがどんな外観をしどんな看板を立てているか学んだばかりだ。そのせいで、ついラブホが目に入る。 歩き出した駅前は喫茶店やレストランより圧倒的に居酒屋が多かった。そのほとんどが準備中で、遠慮なく表のメニューを読めた。営業中だと店員さんに話しかけられちまうからな。

 都会を無作為に歩く便利さとは、帰りたくなったらどこでも地下鉄に入って帰れるところ。どこかしらの駅前につけばカフェやマックがあっておやつ休憩ができるところ。現在地がわからなくても基本問題ないところにある。田舎でこれをやると遭難するから、大人になっても1人で都会に来れるようになってとても嬉しい。

 大通り沿いに進んでいると、何も遊具がないだだっ広い公園を見つけた。さらさらの砂がコンクリートの地面に薄くひかれているだけ。ベンチがあったので休憩する。久しぶりに自販機で飲み物を買った。
 
 ふたつ並んだ自販機。安い麦茶と特別安くない麦茶が並んでいたため安い方ににじり寄ったが、突如右から現れたチャリンコボーイに安い方の自販機をとられ、しぶしぶ特別安くない麦茶を買う。買った麦茶、うめー。

 公園にすみに、2メートルばかりのフェンスに囲まれた一角があった。中に種類の違うボールがふたつ転がっている。ボール遊びはこのフェンスの中でやりなさいということらしい。初めて見る形式の公園だ。大通りにボールが転がってそれを追いかけちゃったら危ないもんね。

 律儀にマスクをした男の子がひとりフェンスの中で、高く高くボールを蹴り上げてキャッチする遊びを繰り返していた。彼はフェンスに対して挑戦的で、何度もボールがフェンスを越えていた。ダメじゃん。

 私も小学生の時に、似たようなボール遊びを1人でしていた。ボール遊びを極めすぎて、体育の時間球技だけ活躍する変なやつになっていた。

 最近、子供の頃を思い出しても対して感傷的にならない。ただ、冷静になる。そうだな、もう子供じゃないんだよな私は。うんと年下のいとこも高校生になったし、飲み会でがっつりお酒飲むし。

 あーあー、大人になったんだなぁ。大人になったのに、いつまでも社会に出るのが怖いままだ。なぜあてもなく歩きたくなったのかって、就労支援事務所の見学終わりで心が悶々としているからなのだ。


 フェンスに挑戦する男の子をしり目に、少しイライラしながらまた歩き出す。就職の話、怖かったな。具体的に何が怖かったのかわからないことにイライラする。
 
 イライラしながら歩き続け、段々暗くなり寒くなっていくのを感じる。何が怖いの?まるでぐずる子供に問いただす親のようだ。自分に自分でイライラする。そしてこの苛立ちを正当化しようとする自分にもイライラする。

 イライラの円は広がっていき、こらえきれなくなって閉まりかけの喫茶店に入ってエビピラフを食べた。セットで、小さいケーキもついてきた。カフェオレが美味しかった。

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