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やらされるプレゼンを挑戦に変える:部下の背中を押す指導哲学

突然のプレゼン指導を任されて

ある日、部下たちにプレゼンをしてもらう必要が生じました。そして、私がその指導を担うことになったのです。正直、私はプレゼンが得意というわけではありませんし、技術的なスキルを教える専門性があるわけでもありません。

それでも、「部下たちが無事に成果を出すにはどうしたらいいか」を考え、指導を進める必要がありました。この経験を通じて気づいたのは、プレゼン指導の本質はスキルを教えることではないということです。


部下たちの心理:失敗を恐れ、無難を選ぶ

プレゼンを任された部下たちは、不安そうな表情をしていました。それもそのはず、「やりたい」というより「やらされている」と感じていたからです。

  • 失敗したくない

  • 恥をかきたくない

  • 無難に終わらせたい

こうした心理から、多くの人が選びがちなのが、「原稿を用意してそれを読む」という方法です。これは、内容が飛ぶリスクを避け、安全策を取る行動です。部下たちも同じ選択をしようとしていました。


スライド指導の重要ポイント

スライドはカンペではない

部下たちのスライドを見て気づいたのは、スライドに文字が詰め込まれ、「それを読む」という意図で作られているものが多いということでした。

そこで私はこう伝えました。

「スライドはカンペではないよ。話し手が読むためではなく、聞き手が見て理解しやすいものにするべきだ。」

スライドは補助ツールであり、聞き手に視覚的に内容を伝えるためのものです。話す内容は、あくまで話し手の言葉で伝えることが大切です。

1スライド1メッセージ

次に、スライド構成についてこうアドバイスしました。

「1つのスライドに盛り込むメッセージは1つに絞ろう。複数の要素を詰め込むと、聞き手も話し手も迷子になる。」

スライドを減らして1スライド1メッセージにすると、プレゼン全体の流れがスムーズになり、聞き手にも伝わりやすくなります。この指導を通じて、部下たちのスライドは大幅に改善されました。


原稿を外し、その場で話させる指導

原稿を取り上げ、挑戦を促す

指導の中で、私は部下たちに「原稿を見ずに、自分の言葉で話してみよう」と提案しました。その場で、部下の一人がこう言いました。

「練習してからやりたいです。日を改めて準備してきます。」

その気持ちも分かります。失敗したくない、準備不足で恥をかきたくないという思いがあったのでしょう。しかし、私はこう返しました。

「いや、今やってみようよ。」

実は、この決断に私自身も迷いがありました。
「今ここでやらせるのが正しいのだろうか?準備不足のまま挑戦させるのは厳しいかもしれない。」
それでも、挑戦する瞬間を逃してはいけないと思い、背中を押しました。

意外と話せる自分に気づく

戸惑いながらも、部下は自分の言葉で話し始めました。最初は言葉に詰まりながらも、次第に言いたいことが少しずつ形になっていきます。

その姿を見て、部下自身も「意外と話せるんだ」という感覚を得ているようでした。この瞬間が、挑戦する第一歩となりました。


手本を示す:私がスライドを使ってやってみせた

さらに、私は部下たちに手本を示すことを選びました。その場で部下が用意したスライドを使い、即興でプレゼンを実演したのです。

「自分で内容を聞いているから、たぶん僕でも話せると思う。こんな感じで伝えてみたらどうかな?」

即興ではありましたが、部下が伝えたいポイントを汲み取り、聞き手を意識した話し方を実演しました。これにより、部下たちは「自分のスライドでもこんなに話せるんだ」とイメージを持つことができたようです。


他のプレゼンターとの違いが際立つ成果

プレゼン当日、他のプレゼンターの多くは用意した原稿を読み上げていました。それが「無難で安全な方法」と考えられていたのでしょう。

一方で、私の部下たちは違いました。
原稿を見ず、自分の言葉で話す挑戦を選んだ結果、聞き手や他のプレゼンターから「圧倒的に良かった」という評価を得ました。

何より重要だったのは、部下たち自身が「やり切れた感覚」を得ていたことです。横からの評価以上に、自分の成長を実感できたことが、生きた自信となりました。


指導の本質:挑戦を支える力

今回の指導で私が意識したのは、スキルを教えることではなく、部下が挑戦する姿勢を引き出すことでした。

意識したポイント

  1. 心理的な壁を理解する。
    「失敗したくない」という心理を否定せず、その先に挑戦があることを示す。

  2. 挑戦を促す環境を作る。
    原稿を外し、その場で即興で話すことで、「やればできる」感覚を体感させる。

  3. スライドの使い方を見直す。
    スライドはカンペではなく、聞き手にとっての補助ツールであることを徹底する。

  4. 手本を示す。
    実演を通じて、プレゼンの理想形を視覚的に示す。

  5. 成功体験を与える。
    聞き手の評価だけでなく、自分自身が「やり切れた」と感じられる瞬間を作る。


結論:挑戦を促すリーダーシップの力

プレゼン指導の本質は、内容を教え込むことではありません。
リーダーとして本当に大切なのは、部下が挑戦し、自信を持つきっかけを作ることです。

準備不足の不安を抱える部下に、「いや、今やってみようよ」と背中を押し、さらに手本を示したことが、今回の指導の転機でした。
挑戦を通じて得られる「生きた自信」は、無難な選択では得られません。これからも私は、挑戦を支えるリーダーシップを大切にしていきたいと思います。


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