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ふたり暮らしに、大きなお鍋でたっぷりのスープを

つい先日まで、ワンルームのマンションでひとり暮らしをしていました。こじんまりとした生活は、ひとり用の家具や道具に支えられます。キッチンには片手鍋ひとつ。まな板だけがようやく置ける作業スペースで、平日はほとんど毎日、自分のための食事を用意する日々。社会人になって実家を出たのが、その生活のきっかけでした。

私を迎えていたのは、日常のちいさな積み重ねです。たとえば、洗剤やシャンプーのような日用品の出費が思いのほか大きいこと。ゴミ袋を付け替えるのすら億劫な日があること。3年間で理想と現実の折り合いをつけながら、自分のペースを掴んでいったのかもしれません。私にはひとりの時間が心地よく、7畳半の部屋をいつも暖めて過ごしていました。

そんな居心地の良い空間に慣れきった今年、付き合っている人と同棲をはじめました。部屋も広くなり、そのぶん家具も増やします。引越しの時に使い古した片手鍋は捨てて、26センチのフライパンを買いました。片手鍋よりひとまわり大きく、少し深めのもの。

少し大きいフライパンといえども、野菜炒めも味噌汁も、今まで自分用に作っていた量だと1食で食べきってしまいます。前までは1回キッチンに立てばそれで1日分のおかずを用意できたのに。ひとりで過ごす間、私の食事は極めて質素でした。

でも彼がいると、私用の2食分などひとりであっという間に平らげます。さして上手なわけでもない私の名前のない料理を、黙々と食すひと。それを眺めていると私もいつもより箸が進み、おかずはすぐになくなってしまうのでした。

2つのお茶碗、2つのグラス、2膳のお箸。それらが食器棚で肩を並べているのは、くすぐったくなる光景です。でも私は特別料理が好きなわけでも、上手なわけでもなく、そしてこまめに家事をやるタイプでもありません。仕事をやりくりしながら毎食のためにいちいちキッチンに立つのは難しい。そういうわけで、もっと大きなお鍋を買うことにしました。

フライパンと同じく26センチで、深めのお鍋。ニトリで選んで、つい先日届いたばかりです。それはひとり暮らしの片手鍋よりふた回りほど大きく、ガラスのふたに黒い持ち手がいかにも鍋らしいフォルムをしています。

初めての料理はキムチ鍋。彼も私も大好きなポトフにしようかと思いましたが、冷蔵庫の整理を優先したレシピになりました。じゃんじゃか野菜を切り、ふたで圧縮するくらい沢山お鍋に放り込みます。スープの素と、冷蔵庫の酸味の増したキムチを両方加えたら、とても辛くなりました。

野菜を切っている間には気づきませんでしたが、どうやら多く作りすぎたみたい。夜ご飯をおかわりしてもなくならないそれは、私が在宅で朝昼と食べてもまだあります。うどんを入れるのにも飽きたので、最後はお米をどんと1合半とチーズを入れてリゾット風に。丸1日以上をそのキムチ鍋と過ごすことになりました。

「ふたりぶん」にはまだ慣れません。でも、少し大きなお鍋の底力は私の期待を超えていました。これなら、お腹いっぱい満足できるスープを作れます。次は、ポトフを。始まったばかりの私たちの生活を、見守ってくれる鍋になりそうです。

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mayu
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