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「彼女さん」と店員さんに呼ばれたときに

恋人でない人と二人で買い物に行くと、時折思わぬトラップに見舞われる。

「彼女さん」「彼氏さん」
そう店員さんから突然呼ばれることで、二人の関係性を意識付けられるのだ。

男性と買い物に行くことがさほど多くなかった私でもそうなのだから、異性の友人が多い人ならもっと感じたことがあるのではないか。それとも、慣れていたら何にも感じないことなのかもしれないけれど。


私だって、全ての関係性を意識しているわけではない。

全くの友人ならどうってことなく、お互い適当にやり過ごせる。でも、一方だけが好きな人とだと乗り切るのが難しいシュチュエーションだったりする。

「そうじゃないんですよ〜〜〜〜〜!ね?」(困ったように笑いかける)

こんなふうにごまかしておきながら関係性を進展させるなどという高等テクニックは持ち合わせていなかったので、そういう言葉に不意打ちで被弾した時、私の恋は終わってきた。

必要以上に冷たくしたり挙動不審になったり、はたまた不安になってしまったり。

周りからはそうやってみられているんだな。そう素直に喜べる気持ちが生まれることは、残念ながらほとんどない。

そんなこと以上に、繋がれない手とかそらされた目とか、その後のわくわくしない沈黙と愛想笑いとか、なかったことになった「余計」な瞬間のせいで、淡い期待はことごとくなくなった。

店員さんは悪くなくても、なんてひどいんだろうと八つ当たりのように思ったりした。いや、100%ただの八つ当たりだった。悲しかった。モテない自分を擁護する言葉を、もう自分は一つも持っていなかったから。


けれども恋人ができて、その質問の意味が大きく変化した。

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子供の頃つくっていた秘密基地の延長線上を、noteにひっそりつくります。満員電車に揺られるおとなの生…

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