サンタクロースもいいな、なんて。
こんにちは、はじめまして、まゆです。
クリスマスまでにみんなで繋いでいく、百瀬七海さんのアドベントカレンダー企画に参加しています!小説や詩、短歌などみなさんの作品を見てどんなものを書いてみようか迷いましたが、私はエッセイにしました。
クリスマスまで一日一日が楽しみになる、そんな素敵な企画をありがとうございます。
そして今回の記事はある意味、大人向けなのかもしれません。
今でもサンタさんにプレゼントをもらっているという方がここまで読んでくださっていたら、そっと今日の私の記事は閉じてください。
名古屋で綺麗だったクリスマスツリーを貼っておくので、許してくださいね。
あとがきのような前書きにお付き合いいただきありがとうございます。
それでは、みなさん素敵な12月を。
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初めてサンタになったのは、大学生の時だったと思う。
見習い、あるいは業務委託。
共働きでやたらと早くに眠る両親に代わって、押し入れに隠してあった妹たちへのプレゼントをラッピングしてそっとクリスマスツリーの下に置いた。
昔から綺麗な包装紙をとっておくのが趣味だったから、それっぽく見えるひらひらの紙で箱を包んでいく。見つからないようにこそこそと、自分の部屋の隅で大きな紙をいじくった。
一番下は小学生とはいえ、彼女もとっくにサンタの存在には気づいていたと思う。それでも、見つからないうちにプレゼントを出現させることは尊い儀式のようで、自分でやり切るのだという使命感を私に与えていた。
どうみても南国風の背が高い観葉植物で代用されたツリーに、気持ちばかりのオーナメントが揺れている。
それが我が家のクリスマスツリーなのだけれど、プレゼントまで置けば青々と大きな葉っぱも心なしか季節を楽しんでいるみたいだ。
もうサンタクロースも来ない自分にとっては、何かクリスマスに関われている感覚はほくほくするものがあった。
当時は恋人もおらず、マライアキャリーの恋人たちのクリスマスを聞いては、私にもクリスマスに迎えにきてくれる人がいても良いんじゃないのとは思ったけれど、いないもんは仕方がない。
なんとなく意地でその夜のバイトを断っていた私は、バイト代の出ないこの仕事がとても重要なものに思えた。
昨年、私はどこかの知らない子のサンタクロースになれた。
書店やオンラインで本を買うと、家庭の事情クリスマスを祝えない、希望した家庭の子供たちに届けてくれるというのだ。
ブックサンタという活動らしい。
本を届けられる。そう聞いて、本を友達みたいに感じていた幼少期を背負った私は、自然と書店に足を運んでいた。
エルマーのぼうけんやマジックツリーハウスシリーズ。
十数年ぶりに児童書のコーナーに入って、そこのカラフルさに圧倒される。
おもちゃ箱のように好きだったものが詰まっていて、奥に進めば進むほど、なんだかマスクの下で口元が緩んでしまうのだった。
私には見えなくても、誰かがその本でわくわくしてくれたら嬉しいな。贈られた本が自分だけのものとして、その子のそばに寄り添ってくれたらいいな。
送る側の私の方が、きっとわくわくも懐かしさも感謝も、たくさんの感情をもらえたのだと思う。
クリスマスの朝だけは、早起きしてリビングへ駆け出して一喜一憂した子供だった。
20年近く前のことだけれど、父と母は覚えているのだろうか。
サンタさんから届いたおもちゃのパーツが一つ足りなかった朝、父が私より本気になってお店に言おうとして母に止められたこと。
欲しかったゲームじゃなくって、ローラースケートが届いた時の私と妹の反応。
サンタさんってパパとママなんだよ、と泣きそうになりながら私に訴えてきた妹の必死さ。
25歳独身OLの今では、クリスマスとはボーナスの使い道を考えながらチキンを食す日になってしまった。
でも、あのわくわくは貰う側だけじゃなくて贈る側にももしかしたらあるのかもな。それなら少しだけ未来に希望が持てる。
あ、でもナントカレンジャーとかシリーズのキャラクターはクリスマス商戦が危険って職場の先輩ママさんが言ってたっけな。
「子供にはまらせたら大変なの。」真剣なその人の大きな目が浮かぶ。
現実はそんなに甘くないんだろうなと、チキンの予約をしながら思う。
年末に実家に帰ったら、両親にクリスマスの思い出を聞いてみようかな。
私を見習いサンタにした年のこと、覚えてくれていたら嬉しいな。