そのとき私は、夜に向かって飛んでいた/映画「Past Lives」
仮眠のために降ろしていたブラインドを上げると、暗闇の中で水平線が明るくなり始めていた。赤いラインが広がり、漆黒がうっすら青に変わっている。飛行機の羽根に被って見えていたそれは、気がつくと背後に流されていった。
『Past Lives』という映画を観た。12歳の初恋から会わずに過ごした24年の時間を描いている。多くを語らず、登場人物の表情や空気が記憶の引き出しの深くに共鳴する作品だった。
連絡が来るだけで口角があがり、はやく話したくて走り出してしまう感じ。電話の余韻でひとり