
アダルトチルドレン③
私が中学2年の時だった。
英語の授業が始まる時に、英語教師のSが何を思ったか我々生徒に質問を投げかけた。
『今日、帽子を被って来てない者は手を挙げろ』
我が校は学生服に学生帽が、男子の服装と決められていた。
手を挙げたのは私一人だった。
『お前の家は帽子も買えないほど貧乏なのか』
Sは、この時代にまさか、本当に帽子を買えない程貧乏な家庭があるなどとは、微塵も思っていなかったのであろう。
思慮が足りない教師である。
皆の前でよくも恥をかかせてくれたものだ。
だが、悔しくて悔しくて、何も言えずにただただ黙ってSの顔を見ていた。
戦後の時代を生きて来たであろう一教師が、何を幸せボケしているものだろうか、甚だ疑問である。
帽子だけではない。姉は修学旅行も行かせて貰えなかった。
中学生から修学旅行を取って、一体何が残ると言うのだろうか。
話が前後してしまったが、姉は卒業後、父親の姉に連れられ名古屋に。
私は高校受験を控えていた。
案の定、毎晩毎晩飲んでは暴れ、一年中勉強をさせない傍若ぶりに、私はもう全てを諦めかけていた。
いよいよ願書を出すタイミングで、
『お前に高校は行かせない。俺の弟子になれ』
いやいや、お前の弟子になって何を教わるわけよ❓
酒飲んで暴れる技を受け継げってか❓
この家で実際に仕事をしているのは母であり私なのだ。
さも職人です、みたいなツラはやめてくれ。
ある日、進路指導の教師に呼ばれ職員室へ。
『お前が受かる高校は無いから、もう一年残って勉強しないか❓』
おいおい、そんなことになったら、あの気違い親父の思うつぼだべ。
てか、義務教育に留年なんてあるんかいな❓
丁重にお断りして、職業訓練所を受ける事に決めたのである。
今でこそ職業訓練校は高卒でなければ受験出来ないが、当時は中卒の為の最後の砦であった。
しかし、自分の人生なのだから、たかが気違い一匹の為に、己の一生を棒に振る様なことなど出来ない相談である。
職業訓練所は100%合格となっている為、あとは高校をどうするか、だけである。
願書だけは出してあったので、残り2週間に命をかけて勉強した。
その間も気違いの妨害は続いた。
自分の子どもを生涯の奴隷に仕立て上げる為に、血尿を出してまで毎晩飲み続ける気違い親父。
そのくらい必死に仕事すれば、一財産残せただろうに……
つづく