【本紹介】これからのビジネスパーソンに必要なのはロジカル思考じゃなくて「感性思考」
「感性思考 デザインスクールで学ぶMBAより論理思考より大切なスキル」(佐々木康裕)
■アメリカのデザインスクールの授業の要点をピックアップしたビジネス書
デザインスクールというと日本でいう美大を思い浮かべがちですがそうではなく、なかには社会人5年目以上が対象などあくまでビジネスパーソン向けの学校があるようで、近年ではAirbnbやダイソン創業者などデザインスクール出身の経営者が増えているらしい。
【本の構成】
1. ビジネス×デザイン マインドセット
2. 強烈なアウトプットを生む思考法
3. 創造性を高めるインプット技法
4. 相手の右脳と左脳を動かす伝え方
5. “売れる”の確度を挙げる
最終章 ビジネス×デザイン人材こそ最強の生存戦略
■ロジカル思考だけじゃ足りない!
できるビジネスパーソンが持つべきスキルとして不動の人気は「ロジカル思考」だと思っていましたがアメリカではもう違うみたいです。
VUCAの時代では解決すべき課題もどんどん変わってくるし課題そのものが発見しづらくなっているため、ロジックだけで太刀打ちできなくなっていること。新たなビジネスを生み出す際に既存の枠組みを超えたものを発想する力はロジカルのような左脳ではなく右脳的な考えも必要ということが理由。
そこにアート的感覚×ビジネスを合わせ持つ「感性思考」が必要になるそうです。
感性思考を身につけるメリットは大きく2つ。
・企画設計→既存の枠組みを超えたアウトプットができる
・製品作成後→社内/顧客どちらにも採用されるサービスを提案できる
もちろんロジカル思考に長けていれば論理的、客観的な提案をして相手を納得させることはできるかもしれません。ただ社内プレゼンの場面では「本当に必要なのか?ニーズを示す根拠は?採算は?」と数字の議論ばかりが膨らみがち。
そこに写真やBGM、サンプルや使用イメージのストーリーを加えて、「自分だったら?自分の妻や子供がこのサービスを使ったら?」と体験・共感させることで、右脳・左脳どちらにも働きかける提案ができればより良いビジネスが生まれます。
■既存の枠組みを超えたアイデアの生み出し方
新たなサービスを生むのに必要な「強烈なアウトプット」のためのフレームワークがたくさん紹介されています。
試しやすいと思った一例は「サムワンシューズ」。直訳すると「誰かの靴」。
「もし●●(他業界)が△△を作ったら?」を沢山挙げてアイデアに繋げるワークのことで、例えばゲーム機のアイデアを考えるのに「もし資生堂がゲーム機を作ったら?」「もしサントリーがゲーム機を作ったら?」と全く異なるジャンルの企業や業界を当てはめて想像するもの。ゲーム形式で出来て型にはまらない考えが生まれそうです。
こういった個人/チームでできる思考法フレームが出てくるので従来のブレストとは違う観点でアイデアを生み出すことができます。
■右脳/左脳どちらの視点でもアプローチできる人材が無敵
感性思考のポイントは天性のセンスみたいなものは関係ないということ。
従来のロジカル思考だと客観的・定量的な事実を元にしたアプローチのため左脳的ですが、例えば認知心理学や行動経済学、文化人類学の観点でもアプローチすることで右脳/左脳の中間視点で多角的に物事を見ることができます。
左脳を納得させ、右脳で共感させる力を持つビジネスパーソンがこれからは必要とされ、極めて左脳的な日本人はこの右脳的な視点を持つ意識やトレーニングが大事になりそうです。
前に読んだ「センスは知識からはじまる」にも共通しているのが、日本のビジネスでは量重視のアンケート調査をマーケティングで重宝しがちでクライアントへの共感度が弱いことが敗因みたいな言及があります。この手の分野で活躍される方々にとっては日本の数字至上主義的なビジネスが面白さを失わせていると考えるのかもしれません。
あとは好例にiPhoneを使う点も似てますね。
■読んだ方が良い人
右脳/左脳どちらにもアプローチできる人材になるためのデザインスクール。その授業で教えられる考え方やフレームワーク紹介が盛りだくさんの本です。
表紙を見ると学術的な本に見えますが、新規事業に携わっている人や、柔軟な考え方を手に入れて新商品を考えたい人には最適の教本になりそうです。