:感想: つくるをひらく
2021年
光嶋裕介 著
ドローイングを描き、発表している建築家である著者と、5名の表現者との対話。そして、その対話の前後での著者の思考が記録された本だ。
5つの対話は大きなテーマがひとつあり、それに対して副題をつけるようにそれぞれが繰り広げられる。同じテーマでも違った視点で話が盛り上がるし、回を重ねるにつれて発展もある。
読んでいて少しだけ気になったのは、(全員とは思わないが)みなさんが「人間至上主義」なのではないかということ。もっと直接的に言えば、コンピュータが嫌いなのだと思った。人とコンピュータを比べることはできないし、人とコンピュータの役割はまるで違うということは、私も完全に同意だ。人にしかできないことはたくさんあるだろう。逆に、コンピュータの得意なこともある。
しかし、そういったこととは別に「人間の優位性」みたいなことを感じているのではないか、と読み取れる場面が多々あった。人には感情があるとか、不完全な面白さは人間にしか出せないとか。
私は、正直コンピュータと人間との違いはよく分からない。人間もコンピュータも物理的な現象によって動いているのは変わらない。コンピュータが生きていないなら、人間も生きていないのではとさえ思う。
自分で考えたり、作ったりといったことをする私たちが、人間の感情は素晴らしいのだと考えるのは当然だ。しかし、それだけでいいのだろうか。コンピュータはできないだろうとか、人が考えなくなってしまったらとか考える次元にはもうない。調べ物はほとんど時間や労力をかけないでできるし、計算には計算機や表計算ソフトが欠かせない。もうコンピュータは私たちの一部だ。私たちは、私たちにしかできないことをやればいい。
コンピュータを自分の一部にして、一緒に生きていこう。いま私は、そう考えている。
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